【生物科学科】ラオス海外研修2025を実施しました!
例年実施している生物科学科のラオス海外研修ですが、今年は過去最大の学生16名と引率教員2名の大所帯となりました。6泊8日で盛りだくさんの内容でしたが、この時の様子を厳選して生物科学科の吉崎が報告します。
福山大学ラオス醸造研修所
ラオス人民民主共和国の首都ヴィエンチャンには、福山市出身の井上育三会長が設立したラム酒製造メーカーLAODIがあります。井上さんは本学生物科学科の非常勤講師も務めており、LAODI社には「福山大学ラオス醸造研修所」の看板が掲げられています。
LAODI社の敷地内には広大な自社農場があり、そこでラム酒用のサトウキビを生産しています。東南アジア一帯は現在のサトウキビの基になった原種が生えていた地域で、井上会長はこの地で育てたサトウキビでラム酒造りをすることに価値を見出しています。このストーリーを体験するため、我々も収穫のお手伝いさせてもらいました。
ラオスの12月はハイシーズンでとても過ごしやすいですが、日中は30℃を超えます。体験と言いながら、かなりの重労働で、日本から持参したスポーツ飲料の粉末がとても役に立ちました。続いて行ったのはサトウキビの搾汁作業です。サトウキビには砂糖のブドウ糖や果糖が含まれており、これらが酵母の力でラム酒へと変わります。
肉体労働を終えた後は、製造設備を見学させてもらいました。井上さんは52歳でラオスでのラム酒造りに挑戦し、20年が経過したそうです。ラオスはサトウキビ生産が盛んだったわけでもなく、異国の地で初めてのラム酒造り、ラム酒メーカーはLAODIただ1社で、想像を絶するご苦労をされたようです。醸造設備の1つ1つに熱い想いがあり、ラム酒造りの哲学を学ばせてもらいました。
続いてLAODI社の全ラインナップを試飲する機会をいただきました。発売前の新製品もあり、学生たちも興味津々でした。日本へのお土産に珍しいラム酒をいろいろ購入させてもらいました(日本でも買えますが、ここで買えば安い!)。
LAODI社でラム酒造りについて色々学びましたが、ラオスにはKhao Niaoというインディカ米のモチ米で造った伝統的な蒸留酒Lao-Laoがあります。こちらはLAODI社から1時間半ほど離れた場所にあるLao-Laoメーカーさんを訪れ、見学させてもらった様子です。現地の酒造メーカーの工場はなかなか見ることができないですから、大変貴重な機会となりました。
次の写真は首都ビエンチャンにあるLAODI Barからの眺めです。LAODI社での研修を終えた後、現地のお酒をいただきながらメコン川に沈む夕日を見るのは格別の時間で、学生たちの心に深く刻まれたことでしょう。
ラオス国立大学訪問
研修期間中は首都ヴィエンチャンにあるラオス国立大学を訪問しました。まずは昨年度本学と教育・研究協定(MOA)を締結した自然科学部です。本学科の松崎教授とすでに共同研究を始めているToulaphone Keokene教授より進捗状況についてセミナーをしてもらいました。現地の野生酵母から高発酵性の酵母を分離して、現地での酒造りに応用する計画です。
私(吉崎)からも、日本の焼酎と現地の蒸留酒Lao-Laoとの違いについて、ショートセミナーをさせてもらいました。
続いて本学の学生から、日本の文化や福山大学について、英語でプレゼンテーションを行いました。現地の学生さんも日本のアニメや寿司など興味があるようで、その後の交流の時間では翻訳ソフトを駆使しながらとても盛り上がっていました。
その後、同じキャンパス内の文学部日本語学科へ移動し、日本語を学ぶ学生さんたちとの交流を図りました。ここでは先ほどの発表スライドを日本語にして、同様に日本の紹介を行いました。日本語がかなりできる学生さんが多く、熱心に聞いてくれていました。
ここでは日本人学生2名とラオス人学生3名ずつ小グループに分かれ、交流の時間を持ちました。日本語学科の学生さんといえど、やさしい日本語で話す必要があります。このように人に分かりやすく伝えることは、学生にとっても得がたい経験だったに違いありません。
今回交流した自然科学部と日本語学科の学生さんとは思いのほか仲良くなり、最終日に半日ほどあった自由時間に合流してヴィエンチャンの街を案内してもらったそうです。小さなことですが、これこそ真の国際交流の形の1つですね。
世界遺産の古都ルアンパバーン
首都ヴィエンチャンから電車で約2時間、世界遺産の古都ルアンパバーンに移動して、文化施設を訪問しました。こちらはワット・シェントーンで、最も格式が高い寺院のひとつです。1560年建立とのこと、歴史を感じさせます。
次に訪れたのは、蒸留酒Lao-Laoの工場です。ヴィエンチャンで訪れた工場と違い、伝統的な製法で小規模醸造が行われています。Lao-Laoは製造所や地域によってバリエーションがあり、きちんと調べた文献等がほとんどないため、こうして直に見学しないと詳しく知ることができません。

ヘビやサソリが漬け込まれたLao-Laoが売っていました。お土産に買いたかったですが、税関で没収されるとのことで止めておきました。Lao-Laoは言うなればモチ米の焼酎ですので、日本の米焼酎に近い味わいです。

生物多様性の学習ということで、クマ保護施設にも行きました。ここでは密猟や違法取引から救出されたツキノワグマが自然に近い環境で飼育されています。日本では増えすぎて困っているツキノワグマですが、ラオスでは絶滅危惧にあるのですね。

クマ保護施設の近くには有名なクアンシーの滝があります。素晴らしい景観と水音で旅の疲れを癒やしてきました。

今年度もラオス海外研修を無事に終えることができました。現地で研修を受け入れてくださったLAODI社の井上会長、シハッタ社長、ラオス国立大の皆様、大変お世話になりました。またこの研修の実施に当たっては本学後援会、同窓会、そして福山大学よりそれぞれ奨学金が支給されています。次の写真のように、研修への出発前には奨学金の授与式も行いました。ご支援をいただきました関係者の皆様に感謝申し上げます。
2022年度:①LAODI、②大学間交流、③小学校訪問、④番外編
2024年度:①奨学金授与、②ラオス国立大(MOA締結)、③ラオス国立大(国際交流)、④ラム酒造りと文化体験
学長から一言:もうすっかり定着した感のある生物科学科のラオス研修で、今回も予想以上の成果が上がったようです。ラム酒の原料となるサトウキビの収穫体験から製造過程の理解まで、本学の醸造研究所も置かれているLAODI社の全面協力の賜物で学んだ内容は広範です。さらにラオス国立大学での研究交流や学生同士の交流、さらに地元の別の蒸留酒造会社の訪問など、盛り沢山の経験を積みました。現地でお世話になった関係者の皆様に深く感謝したいと思います。


















