【海洋生物科学科】沖縄の深海に住む“龍宮の御殿”を発見!

【海洋生物科学科】沖縄の深海に住む“龍宮の御殿”を発見!

海洋生物科学科泉貴人講師は、沖縄美ら海水族館で飼育されていたイソギンチャクが未記載種であることを突き止め、この4月に共同研究者とともに新種として発表しました。沖縄の深海に住む生態にちなんで、とっても面白い名称をつけたとのこと!今回は、泉講師から不思議な新種イソギンチャクについての紹介です(投稿は海洋生物科学科の山岸)。

 


刺胞動物に属するイソギンチャクは、水族館でもよく展示されるような有名な生物である一方、新種が続々と発見されるグループです。泉講師は日本のイソギンチャクの分類学研究において第一線で活躍する研究者であり、これまでいくつもの新種を発表し、昨年はヤドカリの殻を造る不思議な生態のイソギンチャク(学長室ブログで紹介)を発表しました。そんな泉講師が今回発表したのは、沖縄の深海に棲息する巨大なイソギンチャクでした!

 

水族館にいた“新種”

泉講師は沖縄美ら海水族館の東地拓生主任と共同で、沖縄美ら海水族館に飼育されていた大型のイソギンチャク(図1)を解析しました。このイソギンチャクは石垣島及び沖縄本島の水深200m周辺の深海域から記録されており、研究に使った標本は石垣島沖で2006年に採集されて以来、10年以上も飼育されている個体でした。泉講師が形態を観察した結果、この種はマミレイソギンチャク科イワホリイソギンチャク属の種であることが判明しました。しかし、世界中のイワホリイソギンチャク属の種は全てが浅場に住むうえに、このような大型の種は知られていませんでした。さらに、本種は先端が2つ、3つに分かれた多頭触手を持っていたり、その触手先端に巨大な刺胞(※)があったりするなど、独特の特徴を多数有していました。

※刺胞動物が持っているカプセル状の特有の細胞であり、外敵や獲物に触れると変形してその表面を貫通する。クラゲやイソギンチャクに“刺される”のはこれが理由。

 

図1.リュウグウノゴテンTelmatactis profundigigantica. 提供:国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館.

 

新種の名称は沖縄の伝統建築から!

泉講師らはこれらの特徴から、本種をイワホリイソギンチャク属の新種として発表しました。新種の学名はTelmatactis profundigigantica(学名の意味は、「深海の巨人」)と名付け、和名はリュウグウノゴテンとしました。本種の赤黒い色彩を、沖縄の伝統建築の赤瓦の屋根に例えたものです(図2)。リュウグウノゴテンは早速沖縄美ら海水族館の深海コーナーで展示され、人気を博しています。

図2.沖縄の赤瓦屋根建築(御菓子御殿;沖縄県恩納村).

このイソギンチャクは沖縄美ら海水族館における飼育や、ROV(無人潜水艇)調査により、現在も新しい生態が解明されつつあります。泉講師は「水族館の地道な調査活動が、この度の分類・生態学的研究において、欠かすことのできない大きなカギとなっています。正に、海洋生物科学科のアクアリウム科学コースの理念のど真ん中を行く研究活動でしょう。リュウグウノゴテンは今後、沖縄美ら海水族館の深海コーナーの水槽に展示されるので、ぜひ会いに行って頂きたいです!」と色めき立ちつつ話していました。

泉講師は自身のYouTubeチャンネルでも、興味深いこの新種について解説しています!

 

学長から一言:泉貴人講師、またもや新種のイソギンチャク発見、おめでとうございます! 沖縄方言で「美ら海」育ちの新種に名付けたのは、「深海の巨人」を意味するラテン語の学名と、やはり沖縄がらみで伝統建築の赤瓦に因んだ和名の「龍宮の御殿」とは、何とも粋。泉講師の姿が、新種の植物発見に狂奔する放送中のNHK朝ドラの主人公・牧野富太郎博士とダブります。