【生物工学科】糖鎖!9月11日キャンパス見学会は生物工学科まで!

【生物工学科】糖鎖!9月11日キャンパス見学会は生物工学科まで!

DNA!聞いたことありますね。タンパク質!聞いたことありますね。脂質!なんかお腹周りが気になりますね。糖鎖!これ聞いたことありますか?DNA、タンパク質、脂質と並んで生き物が生きるのになくてはならない、とっても大切な役割を果たしている生体物質です。9月11日(土)は今年最後のキャンパス見学会です。生物工学科では、生命機能としての糖鎖をテーマにイベントを行います。担当の太田教授から早速紹介ブログが届きましたので、生物工学科の佐藤がお伝えします。

様々な社会問題に通じる糖鎖

糖鎖は単糖が鎖のようにつながった生体分子で、核酸、タンパク質、脂質と並ぶ四大高分子の1つになります。糖鎖には多糖と複合糖質が知られていて、生命機能における両輪として重要な役割を果たしています。

糖鎖そのものが単独で存在している多糖には、エネルギー源となる砂糖、エネルギーを貯蔵するデンプンやグリコーゲン、動植物や甲殻類の生体構成物質となっているセルロースやキチン・キトサンがよく知られています。これらは生き物によって合成されますので、自然界に普通に存在している物質です。これらを利用することで、食料、エネルギー、健康など様々な社会問題の解決に貢献することができます。

血液型を決める糖鎖

一方、糖タンパク質や糖脂質などの複合糖質は、さまざまな生命現象において重要な役割を担っています。代表的なものの一つが、ABO式の血液型の分類です。血液型には十数種類ありますが、難しく言うとタンパク質性血液型抗原と糖鎖血液型抗原に大きく分けることができます。その中で、ABO式は糖鎖血液型抗原になり、糖鎖の違いによって血液型が判別されているのです。それも糖鎖中のたった1つの糖が違うだけなんです。

がんやウイルス感染に関わる糖鎖

血液型を決める糖鎖もそうですが、複合糖質の糖鎖は糖タンパク質や糖脂質として細胞の表面に存在することで、細胞と細胞の間のコミュニケーションのシグナルとしても働き、がんの転移やウイルスの感染にも関わっています。

糖鎖の多様性

では、糖鎖は何故このような多様な機能を持つことができるのでしょうか?タンパク質はアミノ酸の、そして核酸はヌクレオチドの重合体ですが、その並び方は一種類しかありません。つまり、アミノ酸とアミノ酸の手のつなぎ方は一通りしかなく、ヌクレオチドとヌクレオチドの手のつなぎ方も一通りしかありません。しかし、糖鎖では同じ単糖が結合した二糖だけでも11種類の手のつなぎ方が可能です(下図)。3種類の単糖からなる糖鎖では理論上、10万種類以上の組合せが可能となります。これらの組合せの全てが実際に存在するわけではありませんが、タンパク質などに比べてはるかに大きな多様性を持つことができます。これが糖鎖が多様な機能を持つ理由なのです。

糖鎖の時代の幕が開け20年

2001年3月号のScience誌に糖鎖科学の特集号が掲載され、その中にCinderella’s Coach Is Readyという言葉が出ています。「シンデレラの馬車はすでに準備されている」という意味です。つまり、糖鎖科学の分野に関してやっと「王宮への馬車が用意」され、これからが糖鎖科学の時代であることが宣言されたのです。それから20年、糖鎖の生合成、機能、分析法、合成法からさまざまな生命現象における糖鎖の役割がわかってきています。キャンパス見学会の模擬講義では、一緒にカボチャの馬車に乗って糖鎖研究の発展の歴史を見ていきましょう。

模擬講義では、アレルギーの原因となっている糖鎖、植物(ステビア)に含まれる甘味成分の配糖体、植物種子(チアシード)に含まれる高吸水性多糖成分についての話に加えて、インフルエンザウイルスの感染と薬の話を紹介します。これらの糖鎖と生命機能との関係を学ぶことで、糖鎖のすごさを知っていただきたいと思っています。是非、9月11日(土)は生物工学科キャンパス見学会へ!

生物工学って何だろう?

生物工学科では、さまざまな教育・研究を行っています。生物工学科を理解するのに、以下のブログも参考になりますので、是非ご覧ください。

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生物工学科とSDGs

柔らかな生物工学

水質を調べよう!環境分析学実験

野生動物のDNAを調べよう!生物多様性実習

 

 

学長から一言:次回のキャンパス見学会で、生物工学科からの「出し物」は糖鎖ですか。「へえ~、甘い砂糖のくさりかァ」と思って、このブログを読み始めると、ドンドン面白い話に引き込まれますね。われわれの生命や生活に深く関わっている物質で、ウイルス感染や血液型にまで話題が拡がっていくとは。こんな分野に関心のない人でも、きっと模擬授業でもうちょっと詳しく聞いてみたくなるのではないでしょうか。