【生物工学科】環境分析学実験で調査する福山大学周辺の水環境

【生物工学科】環境分析学実験で調査する福山大学周辺の水環境

身近な水環境はきれいなのか?そうではないのか?生物工学科では、そのような環境アセスメントのための調査方法を学ぶことができます。生物工学科 環境分析学実験の自由課題研究では、大学近隣の環境水の分析を行い、身近な地域の環境調査を行います。実習担当の一人である岩本教授から実習風景が届きましたので、実習の様子について紹介します(生物工学科佐藤)。

分析手法を学び、サンプリングして、分析して、結果を発表する

環境分析学実験は生物工学科3年生に配当されている実習科目で、環境分析学と車の両輪になっています。この実験ではまず、溶存酸素、浮遊物質量、硬度・金属分析、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、大腸菌群数分析など、基本的な水分析手法を学びます。次にグループに分かれて各自フィールドを設定し、修得した分析手法を用いて身近な環境水の分析・評価を行います。研究成果は最終日にプレゼンし、みんなでディスカッションします。

チームワークとリーダーシップ

今年はA~Eの5つのグループに分かれて自由課題研究を行いました。学生実験では短時間のうちにフィールドを設定して研究プランを立て、サンプルの採取・分析をして、さらに結果をまとめてプレゼンテーションしなければなりません。そこで、グループ内でのチームワークやリーダーシップが研究成功の大きなファクターになります。学生実験ではそういうところも学びます。

こんな成果が得られました

ここで各グループの研究テーマを紹介します。グループAは「福山大学に隣接する4つの池の水質の比較」、グループBは「羽原川の水質調査」、グループCは「本郷川と藤井川の水質調査」、グループDは「藤井川と本郷川の水質調査」、グループEは「芦田川流域の水質調査」と、いずれも興味深い内容です。以下に各グループの研究成果を簡単に紹介します。

グループAの「福山大学に隣接する4つの池の水質の比較」では、4つの池の水質調査を行いました。お互い近接した池ですが、水質は微妙に異なり、その中で青池(通称白鳥池)はリンが多く藻が繁茂し、水質が最も悪いという結果になりました。うーん、残念。

グループEの「芦田川流域の水質調査」は毎年必ず取りあげられる人気のテーマで、芦田川については豊富な分析データが公表されているので過去のデータとの比較が容易です。芦田川もだんだんきれいになっています。

一方、グループBの「羽原川の水質調査」は羽原川が初めて調査対象になりました。羽原川とは松永の東を流れる小さな川で、生物工学科太田教授がよく散歩するそうです。採水日は水が少なかったのですが、雨が降ると水かさが大幅に増し、太田教授はかなり上流でエイを見かけたことがあるそうです。

グループCとグループDは奇しくも全く同じテーマになりました。基本的に藤井川と本郷川の水質に顕著な違いは無いのですが、今回はCグループとDグループで藤井川下流の採水地点が数百m離れており、この数百mの間で水質や河川環境が顕著に悪化することがわかりました。といった研究結果が発表されました。

うまくいかない経験は人を成長させる

プレゼンでは、教員だけでなくクラスメイトからも容赦ない突っ込みが入ります。生物工学科の伝統です(ちなみに、卒研の様子はこちら)。役割分担が明確でなく、発表にムラがあったり意思疎通やリーダーシップが不足していて全体にばらばらな発表になっていたり、スライドがとても見にくく間違いが多かったり、研究の目的や考察が殆ど無かったり、質問されて一言も答えられなかったりと反省材料だらけな一方、「これはなかなか!」と思うような面白い結果や視点もありました。研究もプレゼンも思いどおりにはいかなかったかも知れませんが、うまくいかないことを学ぶというのもとても良い経験です。この経験を4年生の卒業研究や社会に出てからのプレゼンなどに活かしてほしいですね。

前期最後の学生実験、皆さんどうもご苦労様でした。生物工学科では、環境に関わるもう一つの実習として生物多様性実習もあります。これは生物学と化学を総動員した環境学習です。これからの時代に必須の知識と技術ですね。

 

学長から一言:持続可能な開発目標(SDGs)は今や時代のキャッチフレーズ、そのうちの重要な目標が環境劣化への対策でしょう。とりわけ、生命の維持に欠くことができな水資源について深く学び、水質検査・分析の手法を学ぶ本授業は、生命工学部、生物工学科の教育の中核に位置づくものと言っても過言でないように思います。加えて、グループワークの中でコミュニケーションやリーダーシップ、プレゼンテーションのスキルなど社会人力も自然に身について行きそうです。失敗から学ぶことも含めて、その成果に期待します。