【薬学部】教員・学生の研究成果が中国新聞と山陽新聞で紹介!

【薬学部】教員・学生の研究成果が中国新聞と山陽新聞で紹介!

薬学部の「病態生理・ゲノム機能学研究室」の教員・学生の研究グループの成果が、動脈硬化の新しい治療薬開発に期待されるとして、報道関係各社に紹介されました。発表論文の筆頭執筆者である薬学部・松岡講師からの報告です(学長室ブロガー:AI投稿)。

 

【研究成果が掲載された原書論文】

 2020年4月に科学誌 BMC Mol. Cell Biol. へ掲載された松岡浩史講師德永吏紀さん(学部生)、片山未由さん(学部生)、細田雄一郎さん(学部生)、宮薫子さん(学部生)角拳斗さん(学部生)、大石亜美さん(学部生)、上敷領淳准教授志摩亜季保さん(博士課程大学院生)道原明宏教授の共著論文『Retinoic acid receptor-related orphan receptor α reduces lipid droplets by upregulating neutral cholesterol ester hydrolase 1 in macrophages レチノイン酸関連オーファン受容体αはマクロファージにおける中性コレステロールエステル水解酵素の上方制御により脂肪滴を縮小させる)』 の研究成果が、報道関係各社に取り上げられました。【プレスリリース

また、2020年5月に科学誌Int. J. Mol. Sci.へ掲載された共著論文『Orphan Nuclear Receptor RORα Regulates Enzymatic Metabolism of Cerebral 24S-Hydroxycholesterol through CYP39A1 Intronic Response Element Activation RORα核内受容体はCYP39A1イントロン応答配列の活性化を通じて脳由来24S-ヒドロキシコレステロールの代謝を制御する)』の研究成果についても、同時に取り上げられました。【プレスリリース

Yahoo!ニュース(2020年6月23日):血管脂肪排出の仕組みを解明、動脈硬化創薬へ成果】

山陽新聞朝刊(2020年6月24日):血管脂肪排出の仕組み解明、動脈硬化創薬へ】

中国新聞朝刊(2020年7月6日):動脈硬化予防に道、「原因分解」促す物質解明】

この発表論文の研究は、以下のメンバーで行いました。

病態生理・ゲノム機能学研究室、2019年卒業式の集合写真

 

【研究成果のポイント】

・RORαタンパク質の機能を活性化すると、動脈硬化に関わるマクロファージのコレステロール蓄積が抑制されることを解明。

・現在、動脈硬化治療は高コレステロール血症治療薬が用いられ血中コレステロール値を下げる効果はあるが、すでに蓄積したコレステロールを除去する効果は十分でなく、新治療薬開発が待ち望まれている。

・RORα機能の活性化は蓄積したコレステロールを除去でき、動脈硬化に有効な新治療薬開発への道筋となる。

 

【研究成果の概要】

日本における死因の第2位と第4位は心疾患と脳血管疾患であり、それらの根本原因として動脈硬化があげられます。動脈硬化は、生活習慣の悪化、脂質異常症(血中コレステロールや中性脂肪の増加)、高血圧や糖尿病などにより血管に負担がかかると、血中の脂質であるLDLコレステロールが血管壁に取り込まれて酸化され、それをマクロファージが溜めこむことで脂肪滴として蓄積されます。この蓄積コレステロールはマクロファージを泡沫化させ、血管壁を押し上げることで血管内を狭くし、血管を詰まりやすくします(下図)。

図.動脈硬化の発症過程

福山大学薬学部の松岡浩史講師と道原明宏教授らの研究グループは、動脈硬化を抑制する分子であるRORα核内受容体が、組織中の蓄積コレステロールの排出に関わる中性コレステロールエステル水解酵素(NCEH1)を調節していることを見出しました。そこで、RORα核内受容体を活性化させたところ、白血球の一種であるマクロファージの細胞内に蓄積したコレステロールにより生じる脂肪滴を縮小させることに成功しました。今後、RORαの機能を活性化させる薬剤を創薬シーズとすることで、動脈硬化を効率的に退縮させる新たな治療薬への応用が期待されます。

 

【松岡講師から一言】

「この研究成果は、薬剤師国家試験勉強(6年生)、病院・薬局実務実習(5年生)、薬学共用試験(4年生)の合間にコツコツ研究に取り組んできた学生さんたちがいなければ達成することができませんでした。2019年に卒業した細田さんから2020年に卒業した德永さん、片山さん、宮さんに、そして2021年と2022年に卒業予定の角さんと大石さんへと、先輩から後輩へと実験サンプルやデータが受け継がれながら、最終的に科学誌への発表に堪えうるデータとしてまとめることができました。 研究スタッフとしては、大学院生の志摩さん、上敷領准教授、道原教授に技術的支援に加えて、研究計画等で多くのアドバイスをいただきました。 さらに、この研究資金の一部は福山大学からも助成を受けており、大学のおかげで本成果につなげることができました。皆さんに感謝し、ここまでの研究成果に甘んじることなく、次のステップに向けて取り組んで参ります。また、2020年12月に完成予定の「未来創造館(薬学部研究棟)」では、研究室間の垣根を超えたオープンラボスタイルで、研究プロジェクトをさらに加速させることができればと思っています。共に研究のワクワク感を味わいたい学生さん、3年生後期からの研究室配属でお待ちしています!」

未来創造館(薬学部研究棟)-2020年5月撮影(ドローン動画)

 

【研究成果の補足説明】

もう少し詳しく研究内容が知りたい方は、以下を読んでみてください。もしかすると、医療・生命系の学部で学修する専門知識が無いと、少し難しいかもしれません。この研究成果は、薬学部の「生命情報を担う遺伝子(1年次)」、「ゲノム情報と創薬(2年次)」、「バイオ・細胞医薬品(4年次)」等の授業で学修してきた内容を基に「課題研究(3年後期~6年次)」として行われました。

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RORαタンパク質の遺伝子を無くしたマウス(ノックアウトマウス)は、通常マウスに比べてアテローム性動脈硬化を発症しやすくなります。ということは、RORαタンパク質が動脈硬化に成り難くするのに働いていると推測できます。RORαタンパク質は、特定遺伝子のDNA配列(RORα応答配列。AT含量リッチに続くAGGTCAという共通性をもった塩基配列の並び)に結合することで、その特定遺伝子の転写過程を調節し、特定遺伝子から合成されるタンパク質の量(発現量)を調節するのに働いています。すなわち、RORαが転写調節因子として、動脈硬化の抑制に関わる遺伝子群を調節していることが考えられます。ヒトには遺伝子が2万~3万種類あり、この遺伝子のどれかがRORαにより発現量が調節されることで、動脈硬化に成り難くなっていると仮説を立てました。

そこで、RORαが調節している遺伝子群をヒトゲノムから探索し、動脈硬化抑制に働くメカニズムの解明に取り組みました。その戦略は、以下のようなステップで行いました。

【1】RORαタンパク質が結合するDNA配列(RORα応答配列)を持っている標的候補遺伝子について、コンピューターを用いてヒトゲノム上にある全遺伝子の中から検索しました(バイオインフォマティクス解析)!

【2】標的候補遺伝子のRORα応答配列へのRORαタンパク質の結合性を試験管内で調べました(EMSAおよびChIP-PCR解析)!

【3】標的候補遺伝子のRORα応答配列へのRORαタンパク質の応答性を培養細胞内に遺伝子導入して調べました(ルシフェラーゼレポーター解析)!

【4】RORαタンパク質を働かなくする実験によって、RORαの減少に伴って標的候補遺伝子の発現量が減少するかを調べました(siRNAによるノックダウン解析)!

【5】RORαタンパク質の遺伝子を細胞内に導入して過剰発現させ、標的候補遺伝子の発現量が増加するかと、蓄積コレステロールが除去されるかを調べました(過剰発現解析)!

【6】RORαを活性化させる薬剤を処理することで、RORα活性化を通じて標的候補遺伝子の発現量が増加するかを調べました(アゴニスト処理実験)!

このようにして、最終的に絞り込まれてきた遺伝子が、マクロファージ内の蓄積コレステロールの排出を促すことで動脈硬化抑制に働いている「中性コレステロールエステル水解酵素(NCEH1)」の遺伝子だということをつきとめました。

現在、RORαタンパク質と構造が似ている他のタンパク質では、PPARαタンパク質を標的とする脂質異常症薬(フィブラート系)、PPARγタンパク質を標的とする糖尿病薬(チアゾリジン系)、骨のエストロゲン受容体タンパク質を選択的に標的とする骨粗鬆症薬(SERM)、グルココルチコイド受容体タンパク質を標的とする自己免疫疾患薬(グルココルチコイド)などが、すでに治療薬として臨床現場で実用化されています。

今後、RORαタンパク質についても、RORαを選択的かつ効率的に活性化する薬剤が開発できれば、動脈硬化の新たな治療法となることが期待されます。

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これだけでは物足りず、もっと更に詳しく知りたい方は、「病態生理・ゲノム機能学研究室」を訪ねてみてください。お待ちしています。

 

福山大学薬学部ホームページ:https://www.fukuyama-u.ac.jp/pharm/

薬学部の教員達からのメッセージ:https://www.fukuyama-u.ac.jp/pharm-posts/19609/

薬学部のオープンキャンパス:https://www.fukuyama-u.ac.jp/weboc/oc-pharm/

 

学長から一言:高齢化社会で動脈硬化が一般的になる中で、その抑制に関する研究は、とても意義深いですねッ!学生達も何年にもわたる努力の積み重ねが大きな成果につながる体験ができて、これからの人生の励みになるでしょう!