薬学部

Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences

衛生薬学研究室

衛生薬学研究室

「来たれ、若人! 卒業研究で世界を変える!!」
当研究室では、卒研生、大学院生を募集しています。
2021年度、他大学の卒業生が当研究室に大学院生として加わります!!

衛生薬学は「生を衛(まもる)薬学」と読み替えれば、その目的や任務がより明確になります。他の薬学領域の研究では、病態診断や化学療法の研究が行われており、これらは病人を対象とするサイエンスです。しかし、我々が専攻する衛生薬学は、「健康体を病態にしないためのサイエンス」であり、健康を障害する様々な要因について、その有害性の理由や程度、さらには消去方法の考案・構築を行うことを目指す研究領域です(予防薬学ともいえるでしょう)。以下に示すように、当研究室では、上述したミッションを達成するために、基礎・応用研究は勿論のこと、セルフメディケーション推進に向けた調査研究や在宅医療を担う介護担当者と薬剤師との連携に関する研究も行っています。
1) 生活している環境化学物質、食事に着目し、環境化学物質によるがん影響評価、毒物代謝のメカニズム解明に主軸を置き、数種類のがん細胞を培養し、試験管レベルで研究を行っています。
2) 世界で嗜好用大麻の合法化が進む中、「大麻成分は毒か薬か」の問いに答えるために、薬物型大麻草主成分テトラヒドロカンナビノール(9-THC)や繊維型大麻草主成分カンナビジオール(CBD)といった大麻成分薬理・毒性研究を進めています。
3) 普段我々が摂取する食品に着目し、食と薬の相互作用について、フラボノイド等の食品中に含まれる機能性成分による薬物トランスポーターへの影響に関する研究を行っています。さらに、瀬戸内の里山・里海資源の高付加価値化に関する研究に取り組んでいます。
4) 超高齢社会では、薬剤師による在宅医療やセルフメディケーションの支援等への貢献が期待されています。健康寿命の延伸やQOLへの貢献に繋がる地域薬局の機能や薬剤師の役割に関する調査研究を、実際の医療現場や地域と連携して進めています。

お知らせ

  • 2021.1.18 ホームページを更新しました。
 

研究内容

1.脂肪酸2位水酸化酵素(FA2H)を標的とした乳がん転移抑制薬の創生に向けた基礎研究

ポストゲノム時代の今日、正常細胞とがん細胞のエネルギー代謝経路の違いに焦点を当て、がん治療を試みる研究が展開されています。悪性化したがん細胞は脂質代謝系が亢進しており、脂肪酸シグナル伝達ネットワークを巧みに利用することで、高い遊走能や生存能を獲得しています。我々は、これまでに環境化学物質による乳がん悪性化機構の研究を行ってきました(Project 7)。この過程で、脂肪酸2位水酸化酵素(FA2H)が新規標的として浮上し、最近、FA2Hが乳がんの悪性化、特にエストロゲン受容体α(ERα)陰性の乳がん細胞を悪性化(遊走・浸潤の亢進)させることを発見しました。ERα陰性の乳がんはエストロゲン非依存的に増殖し、高転移性です。本研究では、独自に見出したFA2Hを標的としたERα陰性乳がんの転移抑制薬の創生に向けた基礎研究を行なっています(JTS,2013; Toxicology 2014,2019; BBRC 2020)。

2.瀬戸内の里山・里海資源の高付加価値化に関する研究~薬物トランスポーター活性に及ぼす海藻類の影響~

瀬戸内海は海藻の生育に適した環境であるため多種類の海藻資源に恵まれており、古くから天然採取や養殖が行われてきた地域です。本研究は、海藻が有する新たな生物活性機能として、薬物の吸収に関与する各種トランスポーターへの影響を、ヒト大腸がん由来のCaco-2細胞を用いて、スサビノリやアオサノリなどの海藻抽出物について検討しています。海藻類は日常的に摂取されていることから、食との相互作用の観点からも本研究は重要であり、また、海藻等の天然資源を治療効果の向上に利用することを想定し、研究に取り組んでいます。例えば、排泄型トランスポーターの発現誘導により薬剤耐性を獲得したがん細胞に対して、抗がん剤の治療効果の維持や回復が可能になるかもしれません。スルファメサラジンは、難治性の慢性大腸炎の治療薬で、高用量で服用する必要があるため、服用には大きな負担が生じます。消化管に発現している排泄トランスポーターを抑制できれば、少しでも患者の服用量が減らす事ができるかもしれません。
瀬戸内は海の幸、山の幸に恵まれた天然資源に恵まれています。海藻だけではなく、様々な天然資源に含まれているフラボノイド等について、薬物トランスポーターへの影響も検討しています。(関連業績:J. Pharm. Pharmacol., 2013, J. Food Sci., 2012, 2017)。

3.コレステロールトランスポーター(NPC1L1)の活性に及ぼすフラボノイド等の食品機能性成分に関する研究

NPC1L1は脂質異常症治療薬の開発過程でその存在が想定され、見出されたコレステロールトランスポーターです。NPC1L1ノックアウトマウスではコレステロールの約70%が抑制されることから、腸管におけるコレステロールの吸収におけるNPC1L1の寄与は大きいと報告されています。フラボノイド類は多岐に渡る種類が存在していますが、この中にNPC1L1活性に影響を及ぼすフラボノイドがあるとすれば、食を通した生活習慣病の予防対策に繋がると考え、研究を進めています。腸管においてNPC1L1を介したコレステロール吸収機構に及ぼすフラボノイドの作用機構について、クラスリン依存的エンドサイトーシスの過程やNPC1L1の発現調節に係るSREBP2やPPARαへの影響について研究を進めています。
(関連業績:BBRC, 2017)。

4.大麻は毒か薬か?:大麻成分の薬理・毒性に関する研究

我が国では、大麻は「大麻取締法」の厳しい法規制下にあり、「大麻=危ない」というイメージが一般的ではないでしょうか。しかし、近年では「医療用大麻」という言葉をよく耳にするようになり、諸外国では嗜好用も含めた大麻の合法化が進んでいます。大麻成分は毒か薬か。この問いに答えるために、薬物型大麻草主成分テトラヒドロカンナビノール(THC)や繊維型大麻草主成分カンナビジオール(CBD)といった大麻成分の薬理・毒性研究を進めています。

5.超高齢社会における地域薬局の新たな機能に関する研究

地域薬局(薬剤師)は地域住民の「かかりつけ」として1次予防も担うことが示され、「健康サポート薬局」の制度が導入されました。そこで、地域薬局による1次予防を含めた地域住民の健康支援に係わる環境の構築や在宅医療の推進を目指して、地域の薬剤師と共同で研究をすすめています。
在宅医療は超高齢社会となった現在、地域に浸透し、必要不可欠なものになりましたが、地域薬局の環境がまだ十分に整っていないことや、他職種との連携が課題になっています。本研究では、在宅医療におけるこれらの課題やその解決方法について研究を行っています。
地域住民に対して簡易測定機器を用いたセルフチェックを実施したところ、高血糖や高血圧などを放置したままでいる地域住民が少なからずいることが分かりました。また、ロコモティブシンドロームについても予防対策がとられず放置されていました。このように社会的背景ならびに現状を解析し、地域薬局における新たな機能について研究に取り組んでいます。(関連業績:Jpn. J. Pharm. Health Care Sci.,2014, 2016, 2019, Jpn. J. Soc. Pharm., 2018)

6.環境化学物質によるがん悪性化メカニズムの解析

我々の周りには化学物質が溢れており、その恩恵を受けている一方で、ヒトや環境への有害影響が懸念されています。環境中にある化学物質の中には、ホルモン作用に影響を与える(内分泌をかく乱する)ものもあります。ある種の環境化学物質は女性ホルモンに似た作用を示すため、乳がん細胞の増殖や浸潤を促進することで、より「厄介な」がん細胞にしてしまいます。我々は、環境化学物質が乳がん細胞に与える影響を分子レベルで明らかにし、予防法の確立に向けた研究を進めています(関連業績:Mol.Pharmacol.2019, Toxicol. Lett.2020)。

 

研究業績
(Researchmapの研究者情報)

 

スタッフ
(教員紹介)

写真をクリックすると、「教員紹介」ページが表示されます。
竹田修三教授
杉原成美教授
境 絃樹助手