薬学部

Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences

本学学生の研究成果が学術誌に掲載されました ~ 病態生理・ゲノム機能学研究室 ~

本学学生の研究成果が学術誌に掲載されました ~ 病態生理・ゲノム機能学研究室 ~

薬学部6年生の山岡愛主さんらが取り組んできた課題研究テーマが、7月の国際学術誌 「Biomedicines」に掲載されました!指導教員の道原明宏教授松岡浩史准教授からの報告です。

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薬学部生は、3年生後期から6年生までの期間にかけて、各研究室に配属され「課題研究」に取り組んでいます。研究室は、基礎薬学分野(化学系2研究室、生物系4研究室、物理系4研究室)、衛生薬学分野(2研究室)、医療薬学分野(5研究室)、薬学臨床分野(3研究室)の20研究室から構成されています。

薬学部の研究室一覧:https://www.fukuyama-u.ac.jp/pharm/pharmacy/labo-list/

山岡さんは、福山市にある福山暁の星女子高等学校を卒業後、薬学部に入学してきました。病態生理・ゲノム機能学研究室に配属され、3年生から行ってきた研究成果について5年生のときに学会発表し、2021年度日本薬学会中国四国支部学生発表奨励賞を受賞しました。また、福山大学近隣の尾道市内の小学校で、遺伝子と病気の関係性について子ども達の啓発のための教育活動を行い、その活動は中国新聞でも取り上げられました。大活躍の理系女子(リケジョ)です!

奨励賞受賞を学長へ報告。左から3番目が山岡さん。

2021年度の学生発表奨励賞受賞:https://www.fukuyama-u.ac.jp/pharm-posts/66378/

 

遺伝子の働きについて、小学生へ説明中の山岡さん。

遺伝子と病気の関係性についての啓発教育活動:https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/52798/

 

この度、これまでの課題研究の成果をまとめ、国際学術誌 「Biomedicines (Section:Molecular and Translational Medicine)」に発表することができました。

タイトル:EGF-Dependent Activation of ELK1 Contributes to the Induction of CLDND1 Expression Involved in Tight Junction Formation(EGF依存性のELK1活性化は密着結合形成に関与するCLDND1の発現誘導に寄与する)

論文リンク: https://doi.org/10.3390/biomedicines10081792

Biomedicines 2022, 10(8), 1792

厚生労働省2021年の調査報告によると、日本における死因の第1位は悪性新生物(腫瘍)38万人、第2位は心疾患21万人、第3位は老衰15万人、第4位は脳血管疾患10万人です。また、不慮の事故は4万人、新型コロナウイルス感染症は1万7千人となっています。

厚生労働省資料(2021年)-改変

この数値からも新型コロナウイルス感染症が脅威であることがわかりますが、悪性新生物や循環器疾患(心疾患と脳血管疾患)によっても毎年多くの方が亡くなられていることもわかります。

病態生理・ゲノム機能学研究室では、日本における死因上位を占める心疾患や脳血管疾患などの循環器疾患の発症メカニズムの理解を通じて、新たな治療標的分子を探索し、創薬への応用を目指して研究を進めています。

その一環として、脳血管疾患の重篤度に関わり、脳血管内皮細胞間の密着結合形成を司るクローディン(Claudin domain containing 1; CLDND1)に着目してきました。本研究では、血管内皮細胞におけるCLDND1の発現調節メカニズムの解明を通じて、細胞間の密着結合形成の制御について検討しました。

未来創造館5階研究室で実験中の山岡さん。

 

今回の実験で大活躍したリアルタイムPCR装置前にて(未来創造館1階共同利用センター)。

本研究により、CLDND1遺伝子の発現調節に関わるDNA配列を同定し、その配列へELK1転写因子が結合することを明らかにしました。さらに、このELK1活性化は上皮成長因子(Epidermal growth factor; EGF)を介したEGFRシグナル経路を通じて生じていることも明らかにしました。

また、近年の研究により、腫瘍細胞においてCLDND1の過度な発現減少は細胞死(アポトーシス)を誘導することが示されています。そこで、EGFRシグナル経路を抑制する抗癌剤ゲフィチニブ(Gefitinib)を処理したところ、ELK1不活性化を通じてCLDND1発現が抑制され、それによって腫瘍細胞アポトーシスが誘導されることが示唆されました。

EGFRシグナルを介したCLDND1の発現調節メカニズム

これらの知見によって、CLDND1が脳血管疾患治療の標的分子としての可能性に加えて、新たな抗がん剤を開発するための標的分子としての可能性も示されました。

未来創造館の中庭で休憩中。

 

☆ 山岡愛主さんからのコメントです ☆

私は、高校生のときの生物の授業から遺伝子について興味を持つようになり、福山大学に入学後は遺伝子に関わる講義や実習を通して、遺伝子と病気に関する研究をバリバリしたいと思っていました。 3年生後期(2019年9月)には、念願の病態生理・ゲノム機能学研究室へ配属され、約3年間にわたって実験に勤しんできました。この期間には、研究室配属後に間もなくして、新型コロナウイルスの影響による大学の休校に続き、オンライン授業、5か月間の薬局・病院実務実習、旧校舎から新校舎(未来創造館)への引っ越し、そして新型コロナウイルスの世界的パンデミックの影響によって実験試薬が全く届かないなど、なかなか思うように実験を進めることができないこともありました。また、実験の再開後は実験に没頭しすぎて、よく昼食を取らずに気がつけば夕方となることもあり、「ちゃんと食べないと身体を壊すよ!」っと私のことをお母さんのように心配してくれる友達からはよく怒られることもありました。ときには、かんばしい実験結果が得られず落ち込むこともありましたが、先生方のご指導と、研究室メンバーの支えがあり、諦めずに研究を続けることができました。この度、国際学術誌に掲載されることが決まり、自分の努力の成果が世界に発信される喜びと達成感でいっぱいです。そして、今後、益々、遺伝子と疾患の関係性についての研究が進み、私の課題研究が医療の発展の一助になってくれると嬉しいです。

未来創造館の薬学部研究エリア(4階から10階)がある内観。

高校生の皆さん、薬学部は薬剤師を目指すとともに、それに必要な資質の一つとして科学的な思考力も養うことができる学部です。国内だけでも年間約40万人もの方が亡くなられる腫瘍や、年間約30万人もの方が亡くなられる循環器疾患の患者さんを救うための薬学研究に一緒にチャレンジしてみませんか?

福山大学では、最新の研究設備も整っている未来創造館で研究ができ、学会発表や論文執筆など様々な経験ができます。 また、6年制薬学部を卒業後は、さらに薬学を極める薬学研究科博士課程(ドクターコース)の大学院生も募集しています!

 

本ブログの詳細は2022年8月9日の学長室ブログ『【薬学部】薬学研究に挑む理系女子!研究成果を国際学術誌へ発表!』をご覧ください。

 

薬学部SO

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