【人間科学研究科】心理学科附属こころの健康相談センター研修会を開催しました!

【人間科学研究科】心理学科附属こころの健康相談センター研修会を開催しました!

コロナ禍で中断していたこころの健康相談センター研修会が返ってきました!

本日は今年度6年ぶりに対面で開催されたセンター研修会について、人間科学研究科心理学科)の中野美奈准教授からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。

 


心理学科の中野です。

2月17日(土)に心理学科附属こころの健康相談センターの2023年度研修会が開催されました。

当相談センターは、地域に開かれた相談センターとして地域の方々のニーズに沿った事業展開を目指し、隔年で研修会・講演会を開催しています。2019年度に予定されていた対面での研修会が新型コロナウイルス感染症のためにキャンセルとなって以来、今年度はまさに6年ぶりの対面開催でした!

今年度は「多様性に寄り添い、個別最適な支援を行うためのワーキングメモリ理論」というテーマで、広島大学の湯澤正通教授を講師にお迎えし、学校法人福山大学社会連携推進センターで開催されました。

湯澤先生は特別支援教育士スーパーバイザーであり、S.E.N.Sの会(特別支援教育士有資格者の会)広島支部会会長でもあります。子どものワーキングメモリと学習に着目した、数々の研究プロジェクトに携わっておられます。

講演では、ワーキングメモリ理論の難しい内容をとても分かりやすく説明してくださり、参加者は皆熱心に聴き入っていました。

<講演の様子>

こころの健康相談センターは、公認心理師を目指す大学院実習生の学内実習施設でもあります。学校での学習に困難を抱えている児童・生徒の学習支援にも携わることがあり、ワーキングメモリ理論について学べることは、実習生にとっても非常にありがたいことです。

実習生は講演を聴講するだけでなく、事前のチラシ発送作業や当日の受付や会場案内など、スタッフ業務も行いました。柏原由貴乃助手がとりまとめ役になり、準備段階から皆テキパキと手際よく仕事を進めたおかげでトラブルなくスムーズに研修会を開催できました。

<受付業務をする大学院実習生の様子>

2時間の研修会でしたが、わかりやすいイラストと説明で内容に引き込まれ、あっという間に時間が過ぎていきました。

<心理学科の学生も積極的に質問していました!>

以下、研修会に参加した実習生の感想を紹介します。

研修会に参加し、ワーキングメモリについてより詳しく学ぶことができました。また、ワーキングメモリを理解した上での学習支援方法を学ぶことができました。ワーキングメモリ理論については、特に言語的短期記憶、言語性ワーキングメモリ、視空間的短期記憶、視空間性ワーキングメモリの4つの側面から測定できることが印象的でした。また、実行機能や発達特性、環境と情動が学習へ参加できない要因になり得ることを学ぶことは、「学習の成績などの低下はやる気などの気力の問題ではないかもしれない」という別角度による視点に繋がるため、学びの重要性を改めて認識することができました。ワーキングメモリ理論に基づいた学習支援方略では、情報に意味付けを行うという情報の記憶方略を使用することの促しなど、誰もが実践できる支援方法を学ぶことができました。学校における学習に限らず、様々な場面における支援で活用したいと思いました。

脳の作業場とも呼ばれるワーキングメモリは、情報を覚えながら考える働きを担っており、学習した知識を長期記憶へ蓄える入り口であるが、その入り口には個人差があると学びました。特に、ワーキングメモリをボトルネックに喩え、入り口の大きさについて、「入り口が小さいにも関わらず、勢いよく大量の水(情報)を入れようとしたら、当然大方は漏れてしまう」と分かりやすく説明してくださったことが印象に残っています。また、ワーキングメモリ理論に基づいた支援によって、実行機能や言語的・視覚的短期記憶の困難さを軽減できるというお話も興味深かったです。具体的には、集団場面では言葉とイラストの両方で伝えることで子どもの受け取りやすい方で情報が伝わったり、学習の流れの明示や授業内容の復唱による理解度のモニタリングを行って注意を向けやすくしたりできると学びました。今回の学びを今後の支援場面等で大いに用いたいです。

湯澤先生のご講演で、多様性を考慮した支援のためのワーキングメモリ理論について学びました。ワーキングメモリの基礎的な知識から、ワーキングメモリのアセスメントに基づく支援策まで大変勉強になる内容でした。特に、ワーキングメモリは実行機能の一つであり、実行機能の働きの乏しさによって授業に参加できず、結果として学業に遅れが出ているという説明が印象に残りました。今まで、ワーキングメモリは覚えたことを処理する能力であると理解をしてきましたが、ワーキングメモリの容量の少なさがそもそもの授業の参加を阻害する要因であったことを本研修で学習することができました。一つの能力を単一の方向から捉えるのではなく、様々な角度から捉えることで、子どもたちのより良い支援に繋げることができると気づくことができました。今後も知能に関する多くの情報を取り入れ、学習を深めていきたいと思いました。

学内実習施設の研修会にスタッフとして参加し、ワーキングメモリの最先端について聴講したことは、実習生にとっても実りある貴重な体験になったことと思います。貴重なご講演をしてくださった湯澤正通先生に、改めて御礼申し上げます。


認知心理学の文脈で学ぶことの多いワーキングメモリ理論ですが、実際に支援の現場で大いに活かされていることに驚いた学生も多かったようです。心理学は思っているよりずっと日常生活に活かされているのだと改めて気付き、学びのモチベーションも上がった様子です。素敵なご講演をしてくださった湯澤先生、本当にありがとうございました。

今後もこころの健康相談センターでは、地域に開かれた、魅力ある研修会を企画していきます。お楽しみに!

 

学長から一言:心理学科附属こころの健康相談センターの研修会はコロナ禍で中断し、対面では6年ぶりの開催。広島大学の湯澤正通教授を講師にお迎えして、参加した大学院生の感想に見られるように、たいへん充実した研修になったようです。公認心理師を目指す院生諸君にとっては裏方としての会の運営も実習の一環。講師をお務め下さった湯澤先生に私からも御礼を申し上げます。