【備後圏域経済・文化研究センター】備後の歴史的建造物―新市・府中を歩く

【備後圏域経済・文化研究センター】備後の歴史的建造物―新市・府中を歩く

備後の地には歴史的意義のある史跡や建築物などが数多く現存しています。こうした歴史的文化遺産を実際に訪れることの良さと言えば、現地において受け継がれてきた歴史を肌で感じられることでしょう。備後圏域経済・文化研究センター文化研究部門が実施する「地域文化研修」は、まさにこうした機会を学生たちと共有するものです。今年度も有意義な研修が実施されました。以下、備後圏域経済・文化研究センター長の青木美保教授からの報告です(投稿は学長室ブログメンバーの清水)。

 


≪文化研究部門 地域文化研修2022(第2回)≫

新市町信岡邸・府中市立歴史民俗資料館―備後の歴史的建造物見学

2021年度から始まったセンター主催地域文化研修は、今年度は「備後の歴史的建造物見学」ということで、近世の大庄屋として地域でリーダー的役割を勤めた信岡家の邸宅と、明治期の擬洋風建築の元郡役所、現府中市立歴史民俗資料館を訪れました。今年度は、人間文化学科に加えて建築学科の学生にも声をかけたところ、計10名が参加しました。引率は、青木美保(人間文化学科教授)、藤原美樹(建築学科教授)が行いました。

▲日程

1.日時 2月11日(土)9:20~15:30

2.場所 

  • 信岡邸(信岡フラットミュージアム) 〒729-3101 広島県福山市新市町戸手2166
  • 府中市立歴史民俗資料館 〒726-0021 府中市土生町882-2

3.日程 

9:20 松永駅スクールバス発着場集合

9:30 出発

10:00 信岡邸(信岡フラットミュージアム)到着。建物内見学と説明を受ける。

10:00~10:45

  • 江戸期の大庄屋の暮らしと建物、信岡家の歴史 古文書の読解と保存:講師 山名洋通氏 

10:45~11:15

  • 文化遺産の保存と活用(建築物について):講師 大角雄三氏   

11:45 信岡邸・出発

12:00  昼食 備後府中焼き・あわけん 一宮(〒726-0005 広島県府中市府中町559-2) 

13:00 出発

13:30 府中市立歴史民俗資料館(〒726-0021 府中市土生町882-2)にて建物見学、展示の説明を受ける。

14:30 出発

15:30  松永駅スクールバス発着場到着解散

 

▲研修の内容

1.信岡邸の建物と暮らし

講師 山名洋通氏(元新市町歴史民俗資料館館長、令和2年度ひろしま文化功労者表彰受賞)

山名先生のお話は、依頼した研修の主旨に沿って、建物の建て方、またその見方から始まり、一般的な建物の話から信岡家の特徴を説明するという流れでなされ、持続可能な地域社会を経営するために、何が必要であるかが理解でき、この研修の意義がよくわかるお話でした。

信岡邸で畳講の説明を受ける。

信岡邸のミュージアム改築に携わった大角雄三設計事務所の大隅所長から、母屋の梁と天井の構造について説明を受ける。

2.信岡邸から「信岡フラットミュージアム」への改築について

講師 大角雄三氏(大角雄三設計室 代表)

信岡邸は、登録有形文化財に指定されており、現在は、その「長屋門」が大角雄三設計室によって改築され、「外観を江戸時代のまま保存し、内部を芸術文化を発信できる複合施設(ミュージアム)として、充分に機能できる空間となりました」と、「信岡フラットミュージアム」の解説の言葉に記されています。現場では、実際の改築の過程について、スライドによる説明もありました。

3.府中市立歴史民俗資料館

府中歴史民俗資料館においては、学芸員の谷重豊季氏の情熱的な説明に、一同聞きほれました。

府中市に奈良時代の国府があったこと、そのために、普通は出てこないような発掘品が出ることなど、展示物についての説明がありました。

資料館の建物については、現在も全国に残っている郡役所の建物のうち、西にあるものは少なく、数件の内の一つが、この府中の郡役所であるとのことでした。この建物は、近い将来に元あった西国街道沿いの場所に移築されるとのことで、その調査が始まっているとのことです。

府中が古代社会において重要な場所であったことを知り、参加した学生は驚いていました。そして、奈良時代の役人たちの服装を試着し、「コスプレ」を楽しみました。

▲参加学生の感想(学生自身の言葉は、こちらからご覧ください)

・人間文化学科の学生

人間文化学科の学生は、文化遺産の社会的な意義に関心が集まり、登録制度など具体的な文化遺産保存のための社会体制について、身をもって知り、自らそれを活用することをイメージしたようです。

・建築学科の学生

建築学科の学生は、近世の古民家と明治初期の擬洋風建築という二つの建造物を見学し、それぞれの建物本来のあり方と、それを現代にどのように生かすかという建物のリノベーべションについて、改築を担当したご本人から直接話を聞くことで、刺激を受けていたようです。

意義の多い研修ができた一日でした。

府中市立歴史民俗資料館で、府中市の古代の歴史(古墳や副葬品等)、元郡役所の建物の歴史的意義についての説明を受けた後、学生2名が奈良時代の服装を着用する体験をした。その二人を囲んで記念撮影。

 

 

学長から一言:貴重な文化遺産が数多く残る土地柄を十分に活用した研修だったようですね。百聞は一見に如かず。備後圏域経済・文化研究センター主催の研修に参加した人間文化学科と建築学科の学生諸君は、この地域の歴史や文化の奥深さに目を見開かされたことでしょう。