備後圏域経済・文化研究センター

Bingo Region Center for Economic and Culture Research

備後圏域経済・文化研究センター

備後圏域経済・文化研究センター(文化研究部門)

お知らせ

  • お知らせ 2021.04.01 今後、文化研究部門に関するお知らせはこちらに掲載します。

文化研究部門概要

本研究センターの文化部門における研究対象は、地域の言語・文学、思想、歴史(社会制度を含む)、文化(美術、音楽・芸能、建築・服飾等生活文化全般)など広範に及ぶものとする。本研究センターの基軸学科は、人間文化学科とメディア・映像学科である。

備後地域の文化についての研究は、これまで部分的に、また単発的には研究成果が見られるが、それらの先行研究の成果を備後地域全体として集約する研究はこれからと言ってよい。「備後圏域」という名称自体が、まさしくそういう文化のくくりを仮定するものであり、本研究センターの目指すところは、その仮説の立証である。

そのためには、文化の地域的な成立と伝播等を多角的に研究することが必要とされるのであり、その研究は、備後地域の研究にとどまらず、国内外の類似する地域との比較研究をも必要とする。 

人間文化学科は、これらの多角的研究を可能にする多様な人材を擁している。これまでの地域の文化の研究業績としては、近世の文化人、菅茶山の福祉思想についての研究、近世の社会文化の研究として神辺本陣の研究、これら近世の文化につながる近代の作家、井伏鱒二の地域を舞台とする文学「在所もの」の研究がある。今後は、これに加えて、欧米の文学・思想・歴史、東アジアの歴史・文化の研究者を含めて、「備後圏域」文化の独自性を明らかにすることを目指す。

メディア・映像学科は、映像及び、現代メディアの専門家を擁し、写真、3DCG画像など、現代メディアを通して、伝統的文化の記録、及びそれをもとにした多角的な継承活動を展開するとともに、地域文化に関する研究成果の、現代社会における活用を企画・実施し、持続可能な地域のあり方に貢献することを目指す。これまでの地域の文化の研究業績としては、「鞆の浦学」がある。

研究スタッフ

文化研究部門1

氏 名 所 属 専 門
青木美保 人間文化学科 日本近代文学
小原友行 人間文化学科 社会認識教育学、NIE、博物館活用教育学
原千史 人間文化学科 ドイツ思想
重迫隆司 人間文化学科 アメリカ文学
清水洋子 人間文化学科 中国文学、思想
脇忠幸 人間文化学科 語用論、コミュニケーション論
柳川真由美 人間文化学科 日本文化史
古内絵里子 人間文化学科 日本古代史

文化研究部門2

氏 名 所 属 専 門
田中始男 メディア・映像学科 計算化学、情報工学
中嶋健明 メディア・映像学科 3DCG復元、3DCG制作、映像制作
筒本和広 メディア・映像学科 科学教育、教育工学
安田暁 メディア・映像学科 現代美術、写真、デザイン
渡辺浩司 メディア・映像学科 オートマトン論、画像処理
内垣戸貴之 メディア・映像学科 教育工学
丸山友美 メディア・映像学科 メディア社会学

研究プロジェクト

文化研究部門研究プロジェクト2021年度~2023年度

「備後圏域文化トレードの様相-菅茶山・井伏鱒二を軸に 」
研究代表者 青木美保(本学教授、センター長)
研究チーム 清水洋子(本学准教授)、柳川真由美(本学准教授)
      前田貞昭(兵庫教育大学名誉教授)
      竹村信治(広島大学名誉教授)

研究概要 山陽道と瀬戸内海の交通の要衝であった備後における情報と人的交流の伝統と新たな文化創造の関係を「同学コミュニティ」という観点から解明し、「備後圏域」の文化の特徴を明らかにすることを目指す。井伏鱒二未公開書簡の研究(科研費2017~2019)によって、井伏鱒二の文学形成と、福山中学における仲間との関係について基礎的な研究を進めたが、その成果として、彼らの父祖が江戸後期の漢学塾ネットワーク内にあったことが見えてきた。本研究では、それを踏まえて、伝統の継承について研究範囲を広げ、隣接分野の研究者を加えて「備後圏域」の文化伝統を明らかにすることを目指す。

研究資料  門田 朴斎旧蔵書300冊等

朴斎蔵書
朴斎蔵書

「備後文化の記憶を再生する―井伏鱒二の文学「在所もの」から見る 」
人間文化学科 青木美保

井伏鱒二の小説の主軸に「在所もの」と称される、備後を舞台とするものがある。これらの小説には、備後文化の記憶の断片がそれとなく埋め込まれている。その断片を追求していくと、地域の歴史の底を流れる水脈につながる。

小説「鐘供養の日」から展開する3つの水脈

小説「鐘供養の日」から展開する3つの水脈

日本近現代文学研究室ゼミでは、井伏鱒二「在所もの」を取り上げてフィールドワークを続けてきた。その中で突破口となったのは、第二次世界大戦中における地域の寺の梵鐘供出のドラマを描いた小説「鐘供養の日」であった。ここには、井伏の福山中学時代の同級生・高田類三をモデルとする、檀家総代の「高田さん」が登場する。

写真1 寺のモデル西教寺の鐘
写真1 寺のモデル西教寺の鐘

1、日本近代文学史と備後

・高田類三宛井伏鱒二未公開書簡に見る「在所もの」の始点

高田家所蔵の「高田類三宛井伏鱒二未公開書簡には、井伏が上京するまでの地域の文学活動のルーツが伺える。日本近代文学史を地方の視点から見ることができる貴重な資料である。本書簡については、科学研究費17K02482(2017年度~2019年度)で研究した。その成果は、論文「井伏鱒二未公開書簡の資料的意義―宛名人・高田類三の文学活動解明を通して」(『日本近代文学』100集2019)で発表。

2,中国地方の金属文化と井伏鱒二「在所もの」

・備後の金属文化の伝統

高田類三は近世末期から続く鋳造所を経営する実業家でもあり、地域で金属文化に携わり、経済と文化の結節点にあって、井伏の「在所もの」における世界観の中核に位置する人物でもあった。

写真2 高田鋳造所の鐘製品
写真2 高田鋳造所の鐘製品

写真3 高田鋳造所の鋳造作業
写真3 高田鋳造所の鋳造作業

・中国地方の金属文化と歴史観 金属文化を視点として、地方の視点から歴史を眺めるのが井伏の歴史小説の一つのあり方で、それは晩年の小説「鞆ノ津茶会記」(一九八三年)まで続いている。

写真4 石見銀山のフィールドワーク写真
写真4 石見銀山のフィールドワーク写真

写真5 石見銀山世界センター
写真5 石見銀山世界センター

写真6 出雲製鉄のフィールドワーク写真
写真6 出雲製鉄のフィールドワーク写真

3,井伏鱒二の文学と備後の漢学の伝統―近世近代移行期の備後の文化へ―

・井伏の「同学コミュニティ」―福山中学時代の絵画サークル―(科学研究費による研究)

高田は、近年の科学研究費の調査によって、井伏の福山中学時代からの文学の同志であったことが判明し、その高田が井伏の文学創作に深く関わる存在であることが見えてきた。その活動の始まりは、中学入学以前から始まっていたことが分かっており、そこには、井伏の兄文夫の、地域に向けての文化活動があった。

写真7 福山中学卒業生の写真
写真7 福山中学卒業生の写真

・近世近代移行期の備後文化と備後圏域の交流―福山大学研究プロジェクト「備後圏域文化トレードの様相-菅茶山・井伏鱒二を軸に」(2021~2023)

井伏、高田の父は、いずれも江戸末期に興譲館で漢学を学ぶ同学の士であった。

また、井伏・高田は、福山中学時代の国漢文の教育から伝統的文化を継承していると推測される。国漢文の教師、門田杉東の父・朴斎は、一時、菅茶山の養子になり、廉塾の都講を勤めた人物であった。

近年、広島大学名誉教授・竹村信治氏のご教示により、門田朴斎・杉東旧蔵の図書300冊余の存在との出会いがあった。その蔵書の特徴から、近世近代移行期の備後文化の状況を明らかにする研究、福山大学研究プロジェクト研究「備後圏域文化トレードの様相-菅茶山・井伏鱒二を軸に」がスタートする。そこに、讃岐、九州の文化人との交流も見えてくる。

写真8 門田朴斎関連資料の写真 後日
写真8 門田朴斎関連資料の写真 後日

「備後地域における歴史的建造物・文化の復元及び記録を行う」

鞆の浦には寺社仏閣や商家を含む多くの歴史的建築物が残っている。本研究プロジェクトでは、建造物に関する研究者や、足利義昭の鞆幕府の地でもある鞆の浦に在住する歴史研究家等と連携し、歴史的建造物の3DCG化による文化資産の復元および記録を推進する。
   

「神辺本陣の研究」
人間文化学科:柳川真由美

広島県の重要文化財に指定されている神辺本陣の建築調査に参加し、11代目当主菅波序平(信道)の自叙伝『菅波信道一代記』や天保3年作成の「神辺西本陣図」といった資料を通じて、近世後期における神辺本陣の建築とその普請、敷地内建造物の変化に関する研究を行った。また、現在も神辺本陣資料の整理や調査を継続して行っており、本陣の機能や経営、神辺宿をはじめとする周辺地域や本陣に止宿した筑前黒田家との関係などを中心に研究を進める予定である。

「社会・教育活動における菅茶山の福祉精神とその構造 」
人間文化学科:清水洋子

本研究プロジェクトでは、福山ゆかりの漢詩人として知られる菅茶山の異なる側面として、儒学に根ざした学問的基盤について考察する。その上で、(1)茶山の随筆等から、学問的関心に根ざした日常的な思考形態に迫り、(2)学問と日常生活の中で醸成された茶山の福祉精神がどのような経緯で社会・教育活動へと実を結んだのかを明らかにする。

研究報告書

準備中