【心理学科】4年生の筆頭著者論文が査読つき学術誌に掲載!

【心理学科】4年生の筆頭著者論文が査読つき学術誌に掲載!

心理学科の4年生が、心理学科開設後初の快挙を成し遂げました!本日は、1年生から努力を重ねてきた山本美優さんの活躍について、指導教員の宮崎由樹准教授からの報告です(投稿は学長室ブログ担当の大杉です)。

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心理学科の宮崎です。

日本人間工学会の学術誌『人間工学』の57巻5号に、心理学科4年生の山本美優さん(広島県立福山明王台高校出身)の筆頭著者論文「エタノールのニオイがウェットティッシュ製品の主観的な除菌力の評価に及ぼす影響」が掲載されました!この研究は、福山大学・北海道大学・ユニ・チャーム株式会社の共同研究として実施したものです。心理学科では、学部生の筆頭著者論文の掲載は2004年の学科開設以来はじめてのことです。

 

 

新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの生活様式は一変しました。衛生意識は非常に高まり、除菌製品に対するニーズが急増しました。例えば、ウェットティッシュ製品の市場規模は2019年に比べて、2020年には2倍以上に成長し、中でもエタノール配合ウェットティッシュ製品のニーズが高まっています。

 

<ユニ・チャーム株式会社 シルコット 99.99%除菌ウェットティッシュ>

このような除菌製品に対するニーズ増大の一方で、私たちがどのような手がかりに基づいて製品の除菌力を評価しているのかはよく分かっていませんでした。

私たちが製品の除菌力を判断する際には、物理的な除菌力だけではなく、主観的に感じる除菌力も、その評価の決め手となっている可能性があります。なぜなら、日本政府は、新型コロナウイルス感染症に対する具体的な除菌方法を発信していますが、現実社会では、除菌効果が科学的に確認されていない対処法を講じる人々・団体も見られます。このことは、製品の除菌力を評価する時に、物理的・客観的な除菌力だけではなく、主観的に感じる除菌力の高さも影響していることを示唆しています。

衣類の清潔さを判断する際に、そのニオイを嗅ぐといった日常行動からも分かるように、嗅覚と衛生概念は密接に関係します。この研究では、嗅覚情報に着目し、エタノールのニオイがウェットティッシュ製品の主観的な除菌力の評価に及ぼす影響を検証しました。

実験の参加者は、エタノール配合のウェットティッシュ製品及び無配合品を使って、以下のような机上清掃課題を行いました。

<実験の参加者には、除菌力を評価する課題であることを悟られないように「ケチャップ汚れの清掃課題」に取り組んでもらうと課題開始前に伝えています。>

清掃課題後に、実験の参加者は、それぞれのウェットティッシュ製品の主観的除菌力を7点満点で評価しました。その結果、エタノール配合のウェットティッシュ製品の方が、無配合品に比べて主観的除菌力が高く評価されました。また、清掃課題中にエタノールのニオイに気づくかどうかが、この評価向上に重要であることも分かりました。

菌やウイルスは肉眼では確認できないことから、手指や机上/物品除菌作業において、製品の除菌力を判断する際には視覚的な情報を用いることができません。本研究は、除菌力の判断に嗅覚情報であるエタノールのニオイが影響することを明らかにしました。

この結果は、エタノールのニオイを製品に付着させることで、実際には十分な除菌力がない製品であっても、消費者は主観的には除菌力を高く評価してしまう間違いが生じ得ることも示唆しています。上述のように、現実社会では除菌効果が十分に確認されていない方法を利用する人々もおり、除菌に関する知識には個人差があります。このような社会背景を踏まえると、今回の結果は、除菌製品に関する消費者保護・教育に応用できる可能性も考えられます。

最後に、山本さんのコメントを紹介します。

「自分が参加させていただいた共同研究が学術誌に掲載され大変嬉しいです。1年次より認知心理学研究室でアシスタントとして研究に携わらせていただきましたが、自分が実際に実験を行ったことはなかったので、本研究に参加させていただいたことでとても勉強になりました。このような貴重な機会をいただき、先生方への感謝でいっぱいです。ありがとうございました!

また、この研究に集中できたのは、2020年度に小松育英会の給付奨学生に認定いただいたことも大きいです。小松育英会の関係者の皆様にも、この場を借りて感謝申し上げます。」

 

 

山本さんは、認知心理学研究室のリサーチ・アシスタントとして、1年生の頃からこの共同研究プロジェクトに参加してくれていました。3年生からは、認知心理学研究室に所属し、この課題に取り組みました。コロナ流行下で人を対象とした対面実験の実施が難しいにも関わらず、精力的に研究に取り組んでくれました。

新型コロナウイルス感染症の発生は、医学・生命科学の研究を大きく変えました。このコロナ後の世界で、心理学の研究は、どう社会に貢献し、どのように社会とつながることができるでしょうか?

高校生の皆さん、心理学科で、この難しい課題に一緒に挑んでみませんか??

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学術誌への論文掲載は、院生や教員にとっても険しいと言える道のりですが、それを学部生で実現するとは素晴らしいの一言です。研究内容も時代に即したとても興味深い内容で、深く感心させられます。常日頃から授業形式学生へのサポート方法を工夫している宮崎准教授の活躍についても、また追って報告できたらと思います。

論文執筆もボランティアも、様々な経験ができる福山大学心理学科。今後の活動も、是非是非ご期待ください!

 

学長から一言:素晴らしい! 山本美優さん、本当に立派です、よくやりました! 学会の専門誌に論文を載せるのは、研究を本務にしている教員でも容易なことではありません。それを学部4年生でやってのけるとは、まさしく「後生畏るべし」。側で指導に当たった教員の力量はもちろん見逃せませんが、コツコツと地道な調査や実験を積み重ね仮説を検証していく面白さを知った人間は、もうその虜のはず。これからさらにどう成長していくか、大いに楽しみです。また、お世話になった小松育英会の奨学金への感謝を忘れないのも素晴らしい。この努力や実績が後輩にもつながって行っているようで、心理学科は上昇スパイラルに乗っている感がします。もっとガンバレー、心理学科!