【生物工学科】森の息吹を感じる

【生物工学科】森の息吹を感じる

 春になり、生き物たちの活動が活発になってきました。生物工学科では今年も例年通り、因島の森の動物たちが生態系の中でどのような役割を果たしているのかを研究しています(2019年度の研究はこちら)。新年度を迎え、大学院生並びに4年生とともにフィールド調査を再開しましたので、その様子を学科のブログ委員でもある佐藤がお伝えします。

野ネズミはどこに?

 まずは、大学院生が野ネズミの生息場所を探すために因島における新規のフィールドを探索しました。その中で、小さな沢のある場所を見つけ、その周辺に野ネズミが生息していることを突き止めました。3枚目の写真はアカネズミです。これで準備完了。今年はここを拠点とすることにしました。森の栄養分がこの沢に流れて海まで流れ込むことになります。

卒業研究のはじまりはじまり

 フィールドが決まったので、卒業研究の始まった4年生が調査をすることになりました。トラップを準備し、設置場所の近くの木に目印のテープをくくり付けてと、3年生の時の実習を思い出しながら作業を進めます。野ネズミの出てきそうな場所を探しながらトラップを仕掛けていきます。

森の息吹を感じる

 途中、アカガエルやシーボルトミミズなど様々な生き物に触れることができました。森の奥に向かうと、そこには「ぬた場」が!「ぬた場」というのは、イノシシなどが体の汚れや寄生虫を落とすために泥をこすりつける場所です。警戒心の強いイノシシに出会うことはありませんでしたが、森の中にはイノシシの骨がありました(大学院生が拾ってきました)。

サンプリング

 下準備をしてくれた大学院生のおかげで、最初からしっかりとアカネズミのサンプリングができました。また、今後の遺伝子の分析のために、耳の組織の一部と糞をサンプリングしました。島の間でネズミの遺伝子がどのように違うのか、あるいはネズミはここで何を食べているのかなどが分かってくる予定です。サンプリング後、アカネズミは無事に森に帰っていきました。さらに、近くの沢から水を採取して、その水の中に含まれる生き物をDNAで調べるためのサンプリングも行いました。環境DNAという技術です。水の中からどんな生き物が検出されるでしょうか?今、4年生が実験中です。卒業研究発表会までには面白いデータが出ているはず!

時代を拓くバイオテクノロジー

 現代社会は、様々な面で地球や生命と折り合いがついていないことが多々あります。生物多様性の損失もそのような病であると言えるでしょう。それは、私たちが生態系というとても複雑な言語体系を理解していないから生じているのです。生態系における多くの言語(生物)と文法(生物同士の関係性や環境との関係性)を読み解くことが、この病の理解には必要です。その理解のために、私たちはバイオテクノロジーを活用しています。頑張れ!修論生、卒研生。

 生物工学科は、生物の仕組みを明らかにし、社会に活用することをモットーとしており、動物、植物、微生物を対象に、進化生物学や生態学から細胞生物学、分子生物学、生化学まで、幅広い教育を行っています。興味のわいた皆さん、以下のホームページを見てみてください。

 生き物が好きなあなたへ:生物工学科のホームページ

 哺乳類の進化や生態が好きなあなたへ:佐藤のホームページ

 

 

学長から一言:佐藤教授の指導の下、みんなで因島の森に分け入って野外調査。こういう地道で骨の折れる探索が、生物の進化の謎を解き明かす大きな発見に繋がるのでしょう。DNAレベルでの解析という最先端のバイオ技術を活かすことができる研究も、おびただしい数のサンプルなしには絵に描いた餅。研究の出発点でもあり、結局のところ不可欠な点は人の粘り強い収集努力。カンバレー!っと声援を送りたいです。それにしても、フィトンチッドの溢れる森の中でも、仕方のないこととはいえマスク着用とは・・・、にっくきコロナめ。