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薬物動態学研究室

薬物動態学研究室

薬物動態学研究室(Laboratory of Pharmacokinetics and Biopharmaceutics)では、生体高分子や合成高分子を用いた薬物送達系(DDS: Drug Delivery System)の開発を行っています。薬物動態学研究室ではDDSのなかでも、薬物標的臓器指向化と難溶性薬物の可溶化を中心に研究を展開しています。具体的には、受容体介在性エンドサイトーシス機構等を利用した標的指向性高分子プロドラッグの合成と評価と、高分子を利用した難溶性医薬品のナノミセル製剤の調製と評価に関する研究です。ターゲッティングにより薬物の副作用軽減が期待されます。また、ナノミセル製剤化により新規投与形態の製剤開発が可能となり、薬物の治療係数を改善することが期待できます。研究マインドを有する薬剤師の育成に寄与するべく、学部3年生から6年生の課題研究を通じて、学生とともに日々研鑽しています。

 

研究内容

1.生体高分子を利用した制癌薬の標的指向化

制癌剤の腫瘍細胞へ標的化により、副作用の軽減と治療効果の向上が期待されます。生体で鉄イオンの輸送に関わっているトランスフェリンは細胞表面上の受容体を介して、細胞内へ取り込まれ鉄イオンを供給しています。この受容体は腫瘍細胞表面上に高頻度で発現していることから、このリガンドであるトランスフェリンは腫瘍細胞への送達系として有用と考えられます。そこで、トランスフェリンの機能を薬物送達に利用するため、トランスフェリンと制癌薬の結合体化(プロドラッグ化)を行っています。

薬物動態学研究室

2.生体脂質を用いた標的化および無機材料による薬物負荷能の増強

低分子の薬物自体には元来選択性がないため、副作用の発現などが課題となっています。このことから標的とされる組織および細胞への標的化と薬物送達が重要です。低密度リポタンパク質(LDL)は血液中のコレステロール輸送に関与する生体脂質ですが、多くの癌細胞ではLDL受容体が過剰発現していることが知られています。そこでLDLを修飾させることで標的化を行うと共に、非晶質シリカナノ粒子による薬物負荷の増強を試みたところ、下図のようにLDL修飾により蛍光物質の癌細胞内への移行が認められました。

3.難溶性医薬品のナノミセル製剤化

医薬品のなかには難水溶性のものも多く存在します。これらの医薬品は溶解性が律速となり、体内への吸収が不十分となります。そのため、溶解性を改善することは、医薬品を開発する上で重要なテーマとなります。当研究室では、脂溶性化した高分子に着目し、難水溶性医薬のナノミセル化を検討しています。これにより、従前は直接体内へ投与することが困難であった医薬品を注射剤とすることが可能となり、薬物治療の選択肢を広げることが期待されます。

 

研究業績
(Researchmapの研究者情報)

 

スタッフ
(教員紹介)

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田中哲郎教授
中村徹也講師