【生物工学科(生物科学科への名称変更 認可申請中)】卒論の成果が学術論文に!

【生物工学科(生物科学科への名称変更 認可申請中)】卒論の成果が学術論文に!

DNA技術の進歩により、野生動物と人の生活との関わりが次第にわかってきています。最近、弘前大学との共同研究により、糞中の植物のDNAを分析することで、青森県のリンゴ園に被害をもたらすハタネズミの食性を明らかにしました。その成果が国際誌Mammal Studyオンライン版に掲載されましたので、生物工学科 佐藤が紹介したいと思います。

学術論文

論文の詳細は以下の通りです(太字は福山大学の著者)。下の写真がリンゴ園に生息するハタネズミで(弘前大 ムラノ知恵さん提供)、本種は本州と九州に生息する草食性の野ネズミです。

Murano C, Sato JJ, Wada T, Kasahara S, Azuma N (2023) Genetic analyses of Japanese field vole Alexandromys (Microtusmontebelli winter diet in apple orchards with deep snow cover. Mammal Study 48(4): 18 July 2023. https://doi.org/10.3106/ms2023-0015

論文の公開後に、弘前大学からプレスリリースがあり、その後、Web東奥でも取り上げられました。注目の論文です。

4年生の貢献

研究当時、生物工学科 動物学研究室の4年生であった和田崇君は、ハタネズミの糞から抽出したDNAを対象にPCRと次世代シークエンス技術を駆使して、ハタネズミがどのような植物を食べているのかを分析しました。この手法のことをDNAメタバーコーディング法と呼びます。生態系における動物の役割を明らかにするのに大変有用な手法として、世界中で注目されています。和田君の分析の結果、ハタネズミがリンゴの樹の一部を食べていること、そしてリンゴを食べていないハタネズミは、ギシギシという雑草を多く食べていることがわかりました。農地の雑草は通常、下草管理として刈り取られます。しかし、今回の結果は、雑草を刈り取り過ぎるとリンゴ園の被害が大きくなることを意味しています。下草管理の在り方を問う研究成果となりました。研究では妥協することをしない和田君は生物工学科 卒業研究発表会でも素晴らしいスライドを準備した上で発表し、最優秀発表賞を受賞しました。このような和田君の頑張りが、遠く離れた青森の地に届いたことを大変うれしく思います。

 

学長から一言:福山と弘前という遠く離れた場所にいる研究者が共通のテーマについて飽くなき追究を行った結果をまとめた論文が国際的な学会誌に掲載されたという嬉しいニュース。しかも、指導教員たる佐藤淳教授と福山での分析に精力的に取り組んで結果を出したのは学部生の和田崇君と聞いて、生物工学科の教育・研究の質の高さを改めて痛感しました。