【海洋生物科学科】「食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」身近なSDGsの実践 その①~この夏、シロギス飼育・放流の体験をいかが?

【海洋生物科学科】「食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」身近なSDGsの実践 その①~この夏、シロギス飼育・放流の体験をいかが?

福山大学因島キャンパスの内海生物資源研究所ではこの夏、4回にわたって子供たちをキャンパスに招待してシロギスのお魚教室を開催しました。教室を担当した海洋生物科学科の有瀧教授からレポートが届きましたので、学長室ブログメンバーの阪本(海洋生物科学科)がお知らせします。

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お魚教室

豊饒の海と言われてきた瀬戸内海の水産業は、昨今、漁場環境の悪化や資源の減少で危機的な状況になっています。2016年から福山大学と“廻鮮寿司しまなみ”では地域の水産業を盛り上げようと、シロギスをターゲットに養殖技術の開発と商品開発、評価を展開してきました。そして今回、2022年の企画として「食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」をスタートさせました。その第一弾として、消費する側から水産資源を持続的に維持管理することを体験し、みんなで「獲るだけの漁業」から「守り育てていく漁業」への転換を考え、行動してもらいます。具体的には、応募していただいたご家族にシロギスを卵から育てて、十分育った稚魚を瀬戸内海に放流しもらいます。今回は、8月6日(土)から28日(日)にかけて4回行った「お魚教室」の様子を報告します。

【1回目(8月7日):シロギスはどうやってシロギスになるのかな?卵からふ化】

魚が卵からふ化して大きくなっていくことは何んとなくわかっていても、皆さん詳しくはご存知ないと思います。そこで、シロギスが生まれてからどのようにシロギスになっていくのか体験してもらうことにしました。まず、先生役の海洋生物科学科の学生から色々な魚の卵についてレクチャーがありました。

先生(学生)によるレクチャー

浮く卵、沈む卵、散らばったり、くっついたり、どうやって生き残りを高めているのか、生き物の不思議が詰まっています。そのあとは・・・実際に見てもらいます。どんなところでシロギスを飼育して、どうやって卵を得ているのか、その上で、シロギスの卵を顕微鏡で観察しました。

シロギスの受精卵

宝石のようにキラキラ輝く卵にみんな歓声をあげています。そして誕生!孵化した仔魚の可愛いこと。

卵の観察

【2回目(8月14日):シロギスは何を食べて大きくなるんだろう?仔魚と餌】

今回も、最初は学生のレクチャーからスタートです。わずか数ミリの魚の赤ちゃん(仔魚)は人間の用意した環境で一体何を食べて大きくなるのか?・・・それは「ワムシ」という動物プランクトンです。餌を食べるようになると仔魚はどんどん大きくなり、体を発達させていきます。最初に出来上がっていくのは、食べる器官と泳ぐ器官。口や鰭を作り上げ、魚類特有の鰾(うきぶくろ)を持つようになります。天然の海ではなかなか餌に巡り会えず、死んでしまう仔魚も多いんだって。世間は甘くない!!

仔魚と鰾(うきぶくろ)

【3回目(8月20日):シロギスの身体はどのように変わっていくんだろう?仔魚から稚魚へ(変態について)】

オタマジャクシはカエルに、イモムシはチョウチョに変わります。これらの生物は、子供から大人になると住むところや食べるものが激変するため、身体を作り替え、生き様も大きく変化します・・・これが「変態」。魚も多くのものが仔魚から稚魚(人間で言うと幼稚園児?)への移行期に変態して、生活様式をモデルチェンジしていきます。有名なのがカレイやヒラメの変態。うなぎの変態はドラマチック。シロギスも沖合の表層で暮らしていた仔魚は育って稚魚になると、波打ち際の浅い場所に住処を変えます。その頃になるとヒレやウロコもできて、すっかりミニチュアサイズのシロギスとなります。このように、シロギスも変態します。参加した皆さんに、その様子を観察してもらいました。

シロギスの稚魚

【4回目(8月28日):なぜ放流をするのですか?いつまでもお魚が食べられるようにするには?】

今、日本の水産業は大きく疲弊しています。みんなが魚を食べなくなった上に漁師さんの数が激減し、高齢化が進んでいます。その上、沿岸の環境が悪化してそもそも魚がいなくなってしまいました。皆さんが、将来にわたって魚をちゃんと食べられるようにするには、一体どうしたいいんでしょうか。現状を理解して、問題を確認し、どうするべきかを考えてもらいました。その一端としてみんなが育て、観察して来たシロギスの稚魚を彼らの幼稚園である波打ち際に放流してもらいました。天然の魚と区別するための名札(標識)もしっかりつけてもらっています。来年の今頃には大きくなって戻ってきてね。

シロギスの放流会

ご紹介した4つの企画は、因島キャンパスの学生2名が計画・実施してきました。彼らは、研究室の仲間たちにも応援してもらい、6月の親集めから始まり(遺伝的多様性に配慮するため天然魚32尾を釣りで確保)、親魚からの採卵、60日以上にわたる仔稚魚飼育、8月に入っては4回のお魚教室の資料づくり、参加者へのレクチャー、放流会の開催など大変だったと思います。でも、毎回皆さんに喜んでもらい、最終回の放流会が終わったあとは子供たちからも拍手喝采をもらっていました。ここまで来るまでには “しまなみ寿司”をはじめ、多くの方々に支えていただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。また、4回の企画に参加していただいた延べ27家族64名の方々、お暑い中、ありがとうございました。これを機会に水産業や海に少しでも関心を持っていただければ、汗をかいた学生たちも報われると思います。「食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」はこの後も企画が目白押しです。お楽しみに!!

 

 

学長から一言:海洋生物科学科と内海生物資源研究所の教員と学生の皆さんが、「豊饒の海」のはずの瀬戸内海を取り戻し、地域の水産業を守り立てるために、地域の子ども達も巻き込んで展開する「お魚教室」の活動は実に意義深い。地元の“廻鮮寿司しまなみ”の皆様にもご協力を頂いている活動ということで、有り難いことです。活動を通じて大きく育った美味しいシロギスが食卓に上る日が待ち遠しい!