【工学部】地域の課題解決にシステム工学で挑むPBL講義「地域と協働のまちづくりプロジェクト」

【工学部】地域の課題解決にシステム工学で挑むPBL講義「地域と協働のまちづくりプロジェクト」

工学部の学科横断型講義「みらい工学プロジェクト」として実施中のPBL講義「地域と協働のまちづくりプロジェクト」について、担当の関田准教授から最新活動状況報告が届きましたので、スマートシステム学科学長室ブログメンバーの伍賀が紹介します。

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スマートシステム学科は、組織や人の動きもシステムとしてとらえ、システム工学を適用することで地域の課題解決に取り組んでおり、その一環で「地域と協働のまちづくりプロジェクト」を実行しています。この講義では、組織や企業にある課題に岡山大学・塚本教授発案の「メカニカル発想法」を適用し、斬新な発想とその効果測定を実行してきました。これまで福山市立動物園㈱キャステムなどの課題に取り組みました。その一部は実用化され、昨年は農業法人はっとりほたるの里とのコラボによる発想が「ひろしまベンチャービジネス基金学生枠」でファイナリストに残りました。

㈱クラハシHPから

今年は、瀬戸内のみならず我が国全体の漁業・水産業の行く末を案じて、IoTを活用する大胆な改革で持続的発展を目指す株式会社クラハシと協働事業契約を締結して実施中です。講義2回目には、倉橋専務に漁業・水産業の現状と問題点、水産流通の中でのクラハシの位置づけ、クラハシが目指す将来の姿などを講演していただき、それを基に学生たちは取組みテーマを討議しました。今年の受講生は、工学部4学科の1年生から精鋭の9名が集まり、加えて、集中講義「社会貢献」を受講中のスマートシステム学科の3年生も合流した10名で3チームを構成しています。討議の結果、各チームの名称と発想テーマは以下となりました。

  • 人数有利チーム:天然魚を増やす
  • OASISチーム:魚屋の新しいビジネス
  • 情熱フィッシュチーム:魚文化の継承 

各チームはエンジニアリング思考に慣れないながらも情報を集めてメカニカル発想法を実践し、おもしろい発想案をパワーポイント資料としてまとめ、6月8日(水)の中間発表会を迎えました。中間発表会には、㈱クラハシから倉橋専務、情報システム担当の片山常務にもご出席をいただいて、定量評価とコメントを頂戴しています。「今までにない内容でおもしろい」というお褒めもあれば、「その程度なら考えている」という厳しいご意見もあり、学生は発想のやり直しや修正をかけています。しかし、現場の状況を見たこともない、働く方々の声を知らないままでは、発想の現実性に一抹の不安が残るため、改めて㈱クラハシにご協力いただき、現場見学を6月20日(月)の講義として実行しました。

鮮魚の流通についてクラハシのスタッフの説明を聞く学生たち

養殖魚の鮮度維持についてクラハシのスタッフの説明を聞く学生たち

現場見学は、市場が最も活況を呈する早朝ではなく夕方であったものの、翌日扱いの魚が入り始めていた時間帯に実施されました。丁寧な説明もあって学生たちは豊洲中央市場と地方市場の違い、漁港近くの魚市場との役割分担など流通の知識を得ました。また、発注・入荷・業者への売却システムについて、鮮魚、養殖魚、冷凍魚、そして瀬戸内近海からの当日水揚げ魚という種類の違いで事情が異なることと共に、ベテランの経験と知識がないとビジネスが成立しないことに驚きを隠せない様子でした。各チームの現場を見た感想を以下に示します。

  • 人数有利チームリーダ 水島夕貴(建築学科1年生):今回の見学で、普段見ることができない市場の 様子を見ることができ、とても有意義な体験ができました。天然の魚を増やすというテーマについて今回の見学を活かしたいと思います。
  • OASISチームリーダ 岡田郁香(情報工学科1年生):今回、実際にクラハシへ見学に行き、現在の魚市場の現状を確かめることの重要性を知りました。私たちのチームでは、魚屋の新たなビジネスについての案を発想していますが、今回の見学を通して、より良い発想が生まれるように改めて考えていきたいと思います。
  • 情熱フィッシュチームリーダ 荒木彰英(スマートシステム学科3年生):卸売市場を見学して、産地と仕入れ担当との信頼関係があることで、日本全国や世界各国から届けられた水産物がスーパーや量販店に届けられ、流通ネットワークが成り立っているということを知りました。私たちのチームは「魚文化の継承」をテーマに挙げ、技術と食生活にフォーカスして改善策を考えていますが、技術を通して、漁業の担い手や水産資源の需要を増やすだけでなく、水産物の流通ネットワークについて一般の人に知ってもらえるような提案をしたいと思います。

学生たちは、この現場見学会で何ものにも変えられない知見を得たことは確実です。各チームは、今回見たこと、感じたこと、考えたことを発想のブラシュアップへ反映させ、それが実現した場合の効果測定まで実行して「漁業・水産業を瀬戸内から盛り上げる発想」としてまとめます。7月25日(月)の第15回講義が最終発表会となりますが、㈱クラハシの社長、専務、常務に評価いただいて選ばれた優れた発想が、今年の「ひろしまベンチャービジネス基金学生枠」への応募案件となる予定であり、今年こそ学生に入賞を狙ってもらいます。

最後にご多忙の中、夕方の仕事を中断して現場見学会を開催いただき丁寧な説明と質疑まで対応いただいた㈱クラハシの皆様に感謝の意を表します。

㈱クラハシの皆様 「ありがとうございました」

 

 

学長から一言:魚の流通市場の現場を実際に経験することで、学生諸君は地に足の付いた知識を身につけたことでしょう。きっと新たな発想の展開に役立つことと思います。チーム名自体が興味深い仲間が力を合わせ、最終的に説得力のある「地域との協働」の仕方を提案してくれるものと期待が膨らみます。講義から現場見学の機会の提供まで、全面的なご協力を賜った株式会社クラハシの関係者の皆様に、私からも御礼を申し上げたいと思います。