【海洋生物科学科】新任教員の紹介~太田健吾教授~

【海洋生物科学科】新任教員の紹介~太田健吾教授~

海洋生物科学科に新たな教員が加わりました!! 「太田健吾」教授です。太田教授からメッセージが届きましたので、学科のブログ委員の阪本がお伝えします。

 

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太田健吾です!!

 令和3年4月から生命工学部海洋生物科学科に着任しました太田健吾です。専門分野は水産増養殖学、主な研究テーマは魚類の標識技術開発、放流技術開発です。 因島キャンパスの沿岸資源培養学研究室に所属しています。

 これからよろしくお願いいたします。

 

我が国の水産業

 皆さんご存知のとおり、我が国周辺の水産資源は依然として低水準で推移しており、加えて漁業就業者の減少と高齢化や魚価の低迷が漁業経営の大きな負担となっています。

 また、諸外国では食生活の主体が肉食から魚食へと変わりつつあり、国際市場では未曾有の輸入競争が起こり、国際価格が高騰するなど水産物消費大国である日本を取り巻く水産物の需給体制は大きく変貌しています。

 特に、東南アジア諸国では急速な経済成長に伴う消費拡大が起こるなど今後も世界的な水産物需要の増大が予想されるため、我が国の水産業も後れを取ることなく迅速に対応する必要があります。

 

つくり育てる漁業~栽培漁業~

 かつての日本の水産業は、沿岸漁業での高価格魚の漁獲と豊富な燃料油に支えられた遠洋漁業による漁獲が可能であったことから「とる漁業」が主体でしたが、近年は高価格魚の減少や燃油の高騰、200海里規制の国際的な定着により新たな生産体系の構築が望まれています。

 水産物の安定供給がより重要度を増している今、限られた水産資源を持続的に利用するための資源管理および有用魚介類を持続的にかつ安定的に漁獲する「つくり育てる漁業」の普及、いわゆる増殖技術の開発の一翼を担う重要な技術のひとつである「栽培漁業」の推進へ期待が高まっています。

 

食文化の実感

 栽培漁業は、沿岸の環境や水産資源を一般の方々にわかりやすく示すことができるツールであり、種苗の生産現場は対象とする魚介類の一生を見届けることが可能です。また、放流した種苗が漁獲されて市場に並び、地域の料理としてテーブルに上がることを体験すれば漁業の実態や沿岸環境の重要性、その地域の食文化を実感することもできます。

 私は前職で約20年間、瀬戸内海の各地で展開される栽培漁業に係る研究業務に携わってきました。その中でも、広島県尾道市から愛媛県今治市に至る「しまなみ海道」周辺の漁業者、県や市の水産課の方々とは、備後~燧灘海域の特産である根付き魚のオニオコゼやキジハタなどの放流技術開発をはじめ、水揚げされた漁獲物の付加価値の向上、販路の開発など沿岸漁業の底上げに努めてきました。

オニオコゼのお造り

キジハタ(地方名:アコウ)のお造り

福山大学が進める「瀬戸内の里山・里海学」への貢献

 因島をはじめ、近隣の尾道、大三島、また今治周辺には沿岸漁業の将来を見据え、現状を打破するための創意工夫に懸命に取り組んでいる漁業者や水産関係者の方々がいらっしゃいます。

 今後も、皆さんのモチベーションの維持向上と積極的な地域振興を図るためには、それを積極的に牽引する人材の育成が不可欠と考えます。そのためにも、これからは培った技術と知識を次世代の若者に引き継ぎ、栽培漁業を通じて備後地域の水産振興に貢献したいと考えております。

 さらに、今後はこのような取り組みを学生の皆さんと継続できれば福山大学が進める「瀬戸内の里山・里海学」にも貢献し、学生の皆さんにアクティブ・ラーニングの場を提供できると確信しています。

 

 

学長から一言:太田教授、福山大学へようこそ!四方を海に囲まれた島国日本にとって水産資源、食料としての魚類は無尽蔵のように思って来ました。しかし、素人目にも、気候変動や周辺海域での他国による乱獲、その他の要因の結果、その安定的確保が国にとって重大課題になっているようです。「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換が強く求められる時代を迎え、太田教授や海洋生物科学科の皆さんの働きにますます期待がかかります。どうか頑張ってください。こう書きながら、魚好きの私は、美味しそうな魚料理の写真に、思わずヨダレが出そうになりました。