【人間科学研究科】公認心理師ってどんな資格?

【人間科学研究科】公認心理師ってどんな資格?

今、注目されている資格「公認心理師」。本学では、公認心理師の受験が可能なカリキュラムを整備しています。しかし、そもそもこれはどのような資格なのでしょう? その実像を探るため、公認心理師の資格取得を目指している人間科学研究科の院生と一緒に、ブログ担当の野寺(心理学科)が谷口敏淳准教授にインタビューしてみました。

谷口先生ってどんな先生?

谷口敏淳准教授は、2016年9月に本学に着任するまで、鳥取生協病院で心理士として勤務していました。豊富な臨床経験をもとに、心理学が医療現場でどう役立つのかについて、授業を通じて学生に熱く語っています。人間科学研究科では、公認心理師になる上で欠かせない心理実践実習の統括役を務めています。

大学以外の場においては、今年度から、「公認心理師養成大学連絡協議会」の現場実習検討ワーキンググループのメンバーとして活動しています。

公認心理師ってどんな資格?

他の心理系の資格(例えば、臨床心理士)と何が違うの?

大きな違いは、公認心理師は「国家資格だ」ということです。心理系の資格の中では代表格である臨床心理士は、民間資格なんです。今後の心理職の募集は、「公認心理師であること」という条件をつけたものが増えるだろうと思います。

公認心理師は国家資格なんですね。この資格を取ると、どういうところで活躍できそうですか?

みんなが思っている以上に活躍の場はあると思います。活躍できる領域は、大まかに5領域に分けられます。

これまでも実践が重ねられてきた医療現場では、国家資格になることで、雇用がより広がる可能性があります。臨床心理士などの今までの心理職は、民間資格なので、たとえ専門的な仕事をしても、病院の収入に繋がる業務として認められることが、ほとんどなかったんです。これには法律上の問題もあって、その説明ははぶくけれど…あまり収入につながらないという状況は、病院側が心理職を雇用する際の大きな障害になりえます。しかし、これが国家資格になると、病院の収入につながる(診療報酬に算定できる)業務が増える可能性があり、新たに雇用が広がると期待されています。

産業領域でも動きがあります。2015年から、50名以上の労働者を雇用している事業場において、ストレスチェックの実施が義務付けられました。このストレスチェックを実施できるのは、産業医や保健師、精神保健福祉士といった国家資格保有者のみでした。ここに公認心理師を加える案が出されています。ここ数年、僕が精神障害者の就労支援を専門に取り組んでいるのでわかりますが、産業領域ではメンタルヘルスへの対策は喫緊の課題になっているんです。

また、教育領域で活躍する人材として、みんなが思い浮かべる「スクールカウンセラー」は、これまで、臨床心理士であることが採用の主な条件でした。しかし、すでに公認心理師も条件に加わってきています。

ただ…どの領域の場合も、ひとつの組織に何十人も必要な職種ではないので、各機関での採用人数は少ないかもしれません。

心理専門職への就職状況について教えてください。

少しずつ増えてきているとはいえ、心理職は就職先が少ないことが課題です。特に常勤職は少なくて、多くの人が非常勤の身分で働いています。

将来のことはまだはっきりはわかりませんが…すでに求人情報の中に「公認心理師」の文言が見られています。今後、社会にたくさんの雇用が生まれるよう、僕らや、みんなの世代が「公認心理師は役立つ存在だ」ということを、社会に示していかないといけないんですね。

私は将来、院で学んだことを活かして現場で働きたいと思っています。心理専門職の人が現場で求められるものって、何かありますか?

説明力」かな。これはとても重要な資質です。公認心理師は、他職種と連携して仕事をしていくことが求められています。そうすると、他職種の人から「心理職って、そもそも何をやっているの?」、「あなた、何が出来るの?」と思われるはずです。そんな状況なので、「私は~が出来ます」、「専門は~で、こんな役割をこなせます」と伝えられなければ、相手と協力して仕事にあたれません。もっというと、まだまだ僕達は、職場で「自分の役割を作る」というところから始めなくてはならない状況にあるのだと思います。そういう意味で、心理職の役割を伝える「説明力」は、ほんと大事なんです。

研究力」も大切ですね。みんなが現場で出会う人の多くは、「研究」を知りません。でも、例えば療法の効果があるかどうかって、きちんとした評価や検討がなされるべきでしょう。そう思いませんか? みんなが大学院で取り組む研究は、効果的かつ効率的な「問題解決の方法」だとも言えます。臨床現場で生じる、こうした効果の評価などを行う上でも、とても役立つと思います。また、実際に研究を実施することで得た「論理的な思考法」は、現場で働く上での「強み」になるはずです。臨床の現場で効果検証をすることは、とても難しいんです。同じタイミングで複数の要因が関わってくるから、どの要因が患者さんの状態に影響を与えるのかの評価が難しい。でも、多変量解析に関する知識があれば、そういう性質を捉えられることもあるでしょう。熱い思いだけじゃなくて、ドライな視点で現象を眺める姿勢も、現場で働く人には必要だと思います。

公認心理師を受験するには、どんな勉強をしたらいいの?

公認心理師のカリキュラムを整えた大学で、4年間の間に所定の単位を取得します。その後、同様にカリキュラムを整えた大学院で実習や講義の単位を修めることで、受験資格が得られます。大学卒業後に、臨床現場で経験を積むことで受験資格が得られるルートもありますよ。

受験対策については…詳しいことは誰も分かっていないと思います。というのも、まだ一度も試験が実施されていないからです。

公認心理師を目指す私たちが、うちの研究科に所属することのウリってなんですか?

この研究科の特徴は2つあります。1つは、基礎研究を学びながら公認心理師のカリキュラムも履修できるということです。スタッフである教員には、臨床家から基礎研究者までがバランスよくそろっています。例えば、国内でも有名な犯罪心理学研究室に所属して基礎研究に取り組みながら、公認心理師の資格取得をする、ということも、うちの大学でなら可能です。

もう1つは、実習施設が豊富だ、ということです。特に医療機関の実習施設はバラエティに富んでいると思います。現場の心理職の人から、「羨ましい!」と言われました。

インタビューを終えて

インタビュアー役をかってでた院生達は、犯罪心理学研究室や発達心理学研究室に所属しており、いずれも公認心理師の資格取得を目指して勉強中です。彼女達は修士1年生なので、受験自体は少し先の話ですが、興味津々の様子で次々と質問していました。私も今回お話を聞いていて、そして学生同様に多くの質問もして、大変勉強になりました(特に「現場で必要とされる資質」について)。ぜひ、本学の卒業・修了生の多くに、心理臨床の現場で活躍する人材になって欲しいと思います。

 

学長から一言:念願の心理学の臨床に関する国家資格が出来ました!!!今年度のカリキュラムから、全国的に見ればかなりの数の大学で始まりましたよ!!!移行期間中の特別措置もあるようです。。。早く福山大学の心理学科から、公認心理師の第1号を出したいですねッ!院生、学生の皆さん、がんばって!