【薬学部】疾患モデル研究が評価されてラットオブジェの贈呈!

【薬学部】疾患モデル研究が評価されてラットオブジェの贈呈!

第一回未病栄養シンポジウムで『疾患モデルの発症関連遺伝子の解析、モデルの栄養改善や食育、体育など教育によって、未病を実現するためこれまで大きく研究の進展に貢献された研究者』の1人として、薬学部病態生理・ゲノム機能学研究室道原明宏教授が選ばれました。松岡浩史講師からの報告について、薬学部ブログメンバーの五郎丸が投稿します。
 
「第一回未病栄養シンポジウム」「未病対策として、疾患モデルを活用し、栄養効果の基礎研究を産学連携で実社会に役立てる検討をする」ことを目標とし、高血圧関連疾患モデル学会の理事長である家森幸男先生が企画されました。
 

第1回未病栄養シンポジウムのポスター

 
そのプログラムの中で『疾患モデルの発症関連遺伝子の解析、モデルの栄養改善や食育、体育など教育によって、未病を実現するためこれまで大きく研究の進展に貢献された研究者(5名)』の1人として、道原教授に「疾患モデル活用研究業績の顕彰」とともに「ラットのオブジェ贈呈」が行われる予定でした。
 
しかし、7月4日(土)に開催を予定していた本シンポジウムは、新型コロナウイルスの感染拡大により延期することが決定しました。この現状において、贈呈式を行うことは難しいとの判断から、主催者側より道原教授の元へ郵送にてラットのオブジェが届けられました。
 

『世界の健康・平和は、基礎研究で使用したラットにより支えられている』

 

建設中の未来創造館(薬学部研究棟)前にて、ラットオブジェと道原教授

 
2020年12月誕生、未来創造館(薬学部研究棟):https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/1116/
 
【道原教授からの一言】
今回、疾患モデル活用研究業績の顕彰として家森先生より「ラットのオブジェ」を贈呈していただき、大変うれしく思っています。いつもは、楽しめに書かせていただくブログですが、今回は少し真面目に私の研究について書かせていただきます。 
脳卒中は脳の血管に障害が起こる病気であり、急激な意識障害や神経症状を呈する疾患です。我が国における脳卒中の死亡率は、医療技術の進歩や食生活の欧米化に伴って低下してきました。しかし、現在も国内の死亡原因では、悪性新生物、心疾患、老衰に次いで第4位と上位を占めています。脳卒中の原因として第一義的に重要な疾病は高血圧です。 
近年、疫学的調査の結果から、コレステロール(Chol)不足が原因で脳卒中(中でも脳内出血)を引き起こすことが明らかにされてきました。Cholは細胞膜の主要構成成分の1つであり、血管内皮細胞中のChol含量の低下は、膜の脆弱を引き起こし形質膜の流動性の増加、細胞増殖の減少を引き起こします。ゆえに、血清Cholの低下は血液脳関門の崩壊を引き起こし、脳内出血を引き起こすことが考えられます。また、血清Chol低下は脳内出血だけでなく、総死亡率、うつ病、自殺に関与していることも報告されています。つまり、血清Chol低下機構を明らかにすることは、各種疾患の予防において重要であると言えます。 
重篤な高血圧を有し、100%脳卒中を自然発症する脳卒中易発症ラット(SHRSP)の病理学的所見はヒトと酷似していることから、ヒト脳卒中の研究に広く用いられています。SHRSPの血清Cholは、対照ラット(WKY)に比べて有意に低下していることが報告されています。我々の研究室では、WKYとSHRSPを比較することにより、SHRSPの低Chol血症発症機構、脳梗塞と出血の両方に影響を与える脳内酸化ストレス増加機構について明らかにしてきました。 
近年では、メタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪性肝炎モデルラットを使った共同研究も進めています。今後も、疾患モデルを活用し、疾病予防に役立つ基礎データを地道に築いていきたいと考えています。 
 
今回のシンポジウムの延期により、唯一心残りがあるとすれば、共に壇上で「ラットのオブジェ」を贈呈していただく予定だった東京大学医科学研究所実験動物研究施設の真下知士教授(ゲノム編集学会副会長)と一緒に写真が取れなかったことです。いつか学会で一緒になった時にお願いしてみましょう。日本におけるゲノム編集の第一人者である真下教授は、その技術を応用し、COVID-19迅速診断法(最短40分、試験紙による正確な診断が可能)に成功しました。かっこいい!

【国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3を用いたCOVID-19迅速診断法の開発】

リンク先: https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00009.html

 
なお、本シンポジウムを企画された家森先生(受賞歴多数)は、カスピ海ヨーグルトをヨーロッパの長寿地域から持ち帰り、日本に広められたことでも有名です。家森先生が日本循環器学会の一般公開セッションにて講演されていますので、少しだけ紹介させていただきます。これはどなたでも、2020年10月30日(金)正午まで、YouTubeにて視聴可能です。
【人生100年時代の健康長寿シリーズ/Vol.7健康長寿のための最良の食事とは?】

講演タイトル:「動脈硬化予防食としての日本食-地中海食との共通の長所と短所」

リンク先:https://www.youtube.com/watch?v=Lmd4Bj7qLY0&feature=youtu.be

 
今年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、様々な学会でWeb開催が決定しています。学生たちには、実際の会場へ行き、そこで議論のやりとりや熱気を直に味わってもらえないのがとても残念です。
 
 
学長から一言:薬学部の道原教授の「第一回未病栄養シンポジウム」での受賞、おめでとうございます!「未病」という言葉に接したのは初めてですが。。。確かにとても重要な概念ですねッ!オブジェのラットもかわい~い!!!