【建築学科】福山市出身の環境建築家

【建築学科】福山市出身の環境建築家

1年で最も暑い大暑(7/22~8/6)の時期に因んで、福山市出身の偉大な環境建築家「藤井厚二」を学長室ブログ担当の伊澤が紹介します。

 

藤井は、日本の気候風土に適した住宅を生涯追い求め、夏季や冬季に快適に過ごせる「自然冷暖房」の仕掛けを持つ建築をつくりました。「建築環境工学」の教科書にも登場する人です。藤井に関しては、建築学科宮地功教授が長年研究されてきました。

 

藤井は、研究のなかで実験住宅を5棟建てました。最後の5棟目が集大成の作品で、京都の大山崎に建てられた「聴竹居(ちょうちくきょ)」です。「聴竹居」と同様の工夫が見られる建物が、福山の鞆の浦にもあります。それは「後山山荘(うしろやまさんそう)」です。「聴竹居」と「後山山荘」には、共通して日本の夏や冬を快適に過ごすための工夫がなされています。

後山山荘(福山・鞆の浦)

 

特徴的な仕掛けは、縁側(サンルーム)にあります。3年生の授業である「ゼミナール演習」で、伊澤ゼミ学生が作成した図を使って説明します。

後山山荘の縁側(サンルーム)

 

太陽高度が高くなる夏季には、深い軒の出によって直射日光がすべてカットされるようにデザインされています。室内の天井にスリットがあって、そこから室内の熱気が流出します。それと引き換えに、裏山でつくられた冷気が換気用の地窓から流入します。いわゆる自然冷房(パッシブクーリング)です。

夏季は涼しい風が通る「縁側」として機能する。

 

太陽高度が低くなる冬季では、直射日光が室内の奥まで入ります。自然暖房(パッシブヒーティング)が行なわれ、名称どおりサンルームになります。

冬季は日光の暖かさを保つ「サンルーム」として機能する。

 

上記は電気を使わない「ローテク」ですが、だからこそ、ライフラインが途絶した時でも機能する技術です。近年の異常気象にともなって多発している自然災害等に備えて、「ローテク」をおさえた上での「ハイテク」が大切だと考えます。

佐藤圭一教授の授業「建築史」学外見学時の記念写真

(後山山荘にて数年前に撮影)

 

「聴竹居」は 、1928年の作品で約90年前の話です。地球環境に配慮した建築が求められる現代になって、環境建築の先駆者として藤井は再注目されています。福山から偉大な建築家が輩出されていることは、福山の誇りになるのではないでしょうか。

 

暑さ・寒さに対応するとき、冷暖房(エアコン)を使うという方法の他に「建築的工夫」によって対処するという、もう1つの方法も頭の片隅に置いていただけたら幸いです。

 

学長から一言:福山市出身の偉大な環境建築家 藤井厚二氏 についての、素敵なミニ講義でした!!!後山山荘は、見るからに涼やかですねッ!