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薬学科

岡村 信幸(おかむら のぶゆき)

職 名 教授
学 位 薬学博士
専門分野 漢方医薬学、生薬学
担当科目 漢方薬物治療、漢方医学概説、薬になる動植鉱物、薬学入門、コミュニュケーション交流学習など
メッセージ 漢方薬は数千年の歳月にも及ぶ臨床実績をもとに確立された医薬品で、カゼから認知症まで様々な疾患の治療に使われています。しかしながら、漢方薬の科学的なメカニズムはほとんど分かっておらず、我々はこのブラックボックスの解明のために、漢方薬とマイクロバイオームとのクロストークに関する研究に取り組んでいます。

漢方薬の作用には様々な成分が関わっている

漢方薬は複数の生薬を組合せることによって、有効で副作用のない処方を追究した医薬品です。大黄甘草湯は大黄と甘草からなり、大黄のセンノシドA(SA)が腸内細菌の産生する酵素によってレインアンスロンに代謝され下剤作用を示します。甘草のリクイリチン(LQ)はSAを加水分解する酵素の活性を亢進し、大黄のレイン 8-O-β-D-グルコピラノシド(RG)は腸内細菌の酵素産生を促進します。このように強い下剤作用のあるSAが少量で効果を示すように大黄甘草湯は処方設計されているのです。

大黄甘草湯の下剤作用に寄与する成分

漢方薬を食間に服用する意味と糞便微生物叢移植

甘草は70%以上の漢方薬に配合され、主成分のグリチルリチン(GL)は腸内細菌によってグリチルレチン酸に代謝され体内に吸収されます。ラットの糞便を用いた代謝実験で、GLを代謝するレスポンダーと代謝しないノンレスポンダーが存在しました。GLの連用によりノンレスポンダーの一部はレスポンダー化しましたが、空腹時のGL摂取やレスポンダーの糞便移植が最も効果的でした。正常な腸内細菌叢を生着させることは、腸内細菌叢の乱れによって起こる様々な疾患に効果が期待でき、糞便微生物叢移植として注目されています。

腸内代謝ノンレスポンダーのレスポンダー化

漢方薬の多成分同時分析

漢方薬の最大の特徴は、複数の生薬を組み合わせた多成分のカクテルです。そのため、単一の物質からなる西洋薬に比べ、漢方薬は多彩な作用をもち、様々な症状に対応できます。漢方薬を対象とした製剤学や薬物動態学的な研究のためには、漢方薬中の様々な成分を同時分析する必要があります。また、漢方薬は天然由来の材料からなるため、同じ漢方薬でも成分含量や成分パターンに違いが生じます。多成分同時分析による漢方薬のfinger-print(指紋)は、漢方薬の品質や同等性などを識別することができます。

大黄甘草湯の3次元HPLC