【☆学長短信☆】No.120「危機管理・リスク管理」

 長い梅雨が明け、本格的な夏になりました。
 昨年の夏は、猛暑、豪雨、台風、地震と、日本列島は自然災害に蹂躙されました。とりわけ西日本豪雨災害は、近隣に多くの被害を人的にも物的にも及ぼし、本学でもかなりの学生の通学手段を絶ちました。大学にも多くの問題が投げかけられ、危機管理の規程類と危機管理マニュアル類の見直しや整備が、ようやく昨年度末に一通り終わり、安否確認システムも、何度かの訓練を経て、実用に耐えうる状態になってきました。逆説的ですが、これらの実効力が試される機会のないことを祈ります。
 最近は大きな自然災害の頻度が高くなったように思われますが、それでも「のど元過ぎれば熱さ忘れる」のことわざは生き残るかもしれません。滅多に起こらないが深刻な被害を引き起こしかねない危機に直面したとき、私たちは6つの系統的な判断バイアスを示すという、心理学的な研究結果があります。すなわち、近視眼的思考癖、楽観癖、惰性癖(現状を維持しようとする)、単純化癖、同調癖(他の人の行動に同調)です。思い当たりますね。
 また、高頻度だが一回一回は比較的低被害のリスクも身辺には多くあります。例えば毎日摂取する食品のように、私たちの生命維持や健康に利益(ベネフィット)をもたらすはずのものも、時にはリスクになります。リスクとベネフィットを適切に評価することは結構難しく、評価対象に対する感情に左右されたりもしますし、先述の低頻度・高被害の危機における判断バイアスが、ここでも見られるように思います。リスク判断を的確に行うには、批判的思考(=物事を客観的に捉え、多角的・多面的に検討する思考)が必須でしょう。しかし、リスク情報を理解するには、批判的思考にも増して、ニューメラシー(=数学や確率の概念を理解し活用する能力)が重要であるとの心理学的研究もあります。確かに、リスク管理や危機管理に確率的な思考が不可欠なことは、気象情報に基づいて避難行動を起こすか起こさないか、というような事態を想定しても、納得がいきます。
 大学生における、危機管理・リスク管理の能力向上の訓練や教育も、多角的に考える必要がありそうです。

注. 危機とリスクはよく似た言葉ですが、「学校法人福山大学危機管理規程」に従ってここでは使い分けています。簡単に言えば、危機は、重大な被害が生じ、または生じる恐れのある緊急の事態や状態です。リスクは危機になる恐れのある事象の潜在的可能性です。
 上記規程の別表に危機管理の対象の一覧がありますが、未然に防ぐという観点から見れば、リスク管理の対象でもあります。

参考文献:
ロバート・マイヤー、ハワード・クンルーザー著 中谷内一也訳『ダチョウのパラドックス 災害リスクの心理学』丸善出版 2018年.

伊川美保・楠見
孝『食品リスク認知の感情ヒューリスティックに及ぼすニューメラシーの抑制効果』心理学研究,
2018年, 89巻, p.367-375.
    

学生のすばらしい活躍です。
(1)外務省所轄の独立行政法人国際交流基金は、世界の全地域において、総合的に国際文化交流事業を実施しているところですが、この度英国における「日本文化季間」の主要文化事業の一つとして石見神楽公演を実施することとなったそうで、人間文化学部人間文化学科4年生の増谷玲佑君も19名の公演参加者の1名として選ばれました。9月の公演の成功を祈念しています。

(2)文部科学省と独立行政法人日本学生支援機構、それに加えて民間企業との協働で生まれた海外留学支援制度である「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN」に、昨年度に続いて今年度も福山市より募集があり(事業名「トビタテ」学種!花開け学種!ふくやまグローカル人材育成事業)、厳しい審査を経て、本学からは次の5人の学生が選ばれました(全体で10人)。
経済学科    3年次生 森川貴博 君
国際経済学科  2年次生 宮本瑞樹 君
国際経済学科  3年次生 地代悠馬 君
人間文化学科  3年次生 柏原大空 君
海洋生物科学科 2年次生 中荒井李華 さん
 まもなく飛び立ちます。それぞれとても興味深いテーマです。しっかり学んできてください。詳細は学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/16524/

(3)第13回
広島県学生剣道大会の男子団体の部で、福山大学Aチームが優勝しました。メンバーは、先鋒 岩田 璃工夜(経済学科1年)、次鋒 伊藤 大晟(経済学科1年)、五将 田中 滉平(海洋生物科学科3年)、中堅 若林 大亜(経済学科2年)、三将 藤原 貫太郎(経済学科1年)、副将 鈴木 匠(経済学科1年)、大将 久保 克実(経済学科2年)の7名の皆さんです。おめでとうございます。

(4)8月に開催される「第67回全日本学生弓道選手権大会」の男女団体戦の部および個人戦の部に、地方個人予選を突破した藤村天羽さん(心理学科3年)、坂元真さん(生物工学科3年)、田﨑剣人さん(海洋生物科学科1年)、谷口さくらさん(生物工学科1年)、佐藤香奈恵さん(生命栄養科学科3年)、倉田菜々子さん(生物工学科3年)の計6名が出場します。がんばって!

教員もがんばっています。
(5)「富山国際会議場」で開催された国際会議“8th International Congress on
Advanced Applied Informatics”(先端応用情報学に関する第8回国際会議大会
http://www.iaiai.org/conference/aai2019/)において、情報工学科の山之上教授が発表した論文“Bot
Computing using the Power of Wiki Collaboration”が Honorable Mention
Award を受賞しました。おめでとうございます。
詳細は学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/16700/

前号の職員の活躍の続編です。
(5)本学職員でもある学友会サッカー部の的場千尋監督が、イタリアで開催の第30回ユニバシアードにサッカー男子日本代表コーチとして参加した件は、前回の学長短信でお知らせしましたが、なんと日本チームが優勝し、的場代表コーチも金メダルを持って帰国しました。おめでとうございます。
詳細は、学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/16458/