生命工学部

Faculty of Life Science and Biotechnology

【生物工学科】生物多様性とDNA分析を学ぶ実習

【生物工学科】生物多様性とDNA分析を学ぶ実習

生物工学科では、3年次に生物多様性実習があり、福山大学キャンパス内にある豊かな自然を利用することで、野ネズミや昆虫のDNA分析手法を学びます。今年も無事に終えましたので、実習を担当した生物工学科佐藤が報告します。

今、DNA分析が生物多様性を理解する上で重要な意味を持っています。環境サンプルから生物種を同定する環境DNA分析は特に注目されておりますし、絶滅リスクに関係する遺伝的多様性の分析も生物の保全や管理においてとても重要です。3年次、生物多様性実習では、野ネズミや昆虫等の野生動物を対象として、ミトコンドリアDNAの一部の塩基配列(遺伝情報を構成するA、C、G、Tの4つの文字の並び方)を解読する手法を学びます。

さすがは生物多様性が豊かな福山大学。アカネズミ10頭とたくさんの昆虫を捕獲し、DNAを分析するための組織を獲得することができました。アカネズミの捕獲については、生物工学科佐藤が広島県から許可を得ています。

まずは組織からDNAを抽出する必要があります。3年生にもなるとこれまでの実習でピペットマンの使い方も習得しているので、比較的スムースに実験が進みました。DNAの抽出には市販のDNA抽出キットを使います。以前に比べて簡単にDNAを抽出できるようにはなりましたが、学生の皆さんにとっては、その原理を理解することが重要です。ほぼすべてのサンプルについて十分の濃度と純度のDNAを得ることができました。

 

DNAを抽出した後は、ミトコンドリアDNAの一部の領域をPCRで増幅します。アカネズミを対象にDloop領域を、昆虫を対象にCOI遺伝子をターゲットにPCRを行いました。無事にDNAが増えたかどうかはアガロースゲル電気泳動で確かめます。大方増えていて良かったですね。

その後、エタノール沈殿法によりPCRで増幅したDNAを精製します。目で見えない沈殿を吸わないように、いらない上清を捨てるというとても細かい作業なので、不安感が一気に増します。無事に成功できていることを信じて先に進みます。

生物工学科の実習では班ごとに実験を進めることが多く、メンバーと不安なところを確認し合いながら、実験を行います。下の写真は濃度の希釈方法を確認し合っている様子です。多くの実験では、先人たちの経験により「なぜその濃度?」と思わず言ってしまうような適切な濃度が存在します。そういった濃度に希釈したり、濃縮したりする作業は多いのです。実習によって雰囲気は異なりますが、生物多様性実習は和気藹藹です。

最後の作業です。シークエンス反応、DNA精製の後、最後に、DNAシークエンサーという巨大な電気泳動装置で分析します。この装置によって、A、C、G、Tの4つの文字の並び方がわかります。グリーンサイエンス研究センターで活躍している装置の一つです。

さて、得られたDNA塩基配列の情報を分析するために、1号館のPC室にやってきました。進化遺伝学解析ソフトウェアMEGAを使って、必要な情報だけを抜き取り、最後に、国際DNAデータベースに検索をかけて、自分が捕獲した動物と検索結果が一致するかどうかを確かめました。形からその生物だとわかっていても一致すると嬉しいものです。では、もし形から生物種がわからない場合はどうでしょう。こういった手法は新しい生物や系統を発見するために使われており、DNAバーコーディング法と呼ばれています。研究の最先端に触れた実習でした。興味をもった高校生の皆さん、生物工学科で学びませんか?

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