【生物科学科】ニホンザルの社会行動の論文を発表!
生物科学科の石塚真太郎講師がまたも新しい研究成果を学術論文として報告しました。瀬戸内海の島である小豆島におけるサルの群れの中の父親の役割に関する大変面白い知見です。石塚講師の説明をどうぞ(生物科学科 佐藤)。
みなさんこんにちは。生物科学科の石塚です。この度、ニホンザルのオスの育児に関する論文を発表しましたので、ご紹介いたします。
動物の世界の父親
父親と聞くと何をイメージするでしょう。核家族を形成する人間社会では、父親は母親とともに育児を担う存在です。しかし父親による育児は、哺乳類の世界では一般的ではありません。哺乳類は複数のオスとメスで群れを作る種や単独で暮らす種が多く、父親が自身の子を識別できないためだと考えられています。ニホンザルも例外ではなく、メスがさまざまなオスと交尾し、群れ外オスを含むさまざまなオスが群れのコドモの父親になります(詳細は昨年のブログ)。そんなニホンザルのオスの育児はどうなっているでしょう?
私は2021年に小豆島でオスを一頭ずつ追跡し、毛づくろいや非敵対的な密着などの親和行動を観察記録しました。分析の結果、乱婚型の交尾からはある意味予想通り、オスは自身の子に対して親和的に振る舞うわけではありませんでした。一方で興味深いことに、オスは母親を失った孤児のコドモに対して高い親和性を示すことがわかりました。孤児はもっとも重要な庇護者である母親の喪失を補填すべくオトナオスの周りに集まるため、親和行動を受ける機会が多くなると考えられます(下の写真)。

福山大学でサルの研究
サルなどの霊長類を研究する意義の一つは、ヒトとは何かを知ることです。今回はオスの育児を取り上げましたが、ニホンザルとヒトは全然違いますね。こういったヒトとの違いや類似点を一つ一つ明らかにしていくことで、生物の一種としての「ヒト」の理解が深まるのです。私が主宰している「動物生態学研究室」では、学生たちがさまざまな角度から瀬戸内地域のニホンザルの研究を進めています。サルの写真を食い入るように見つめる学生もいれば、行動実験用のヘビの模型の色塗りをする学生もいたり、多種多様です。若い読者の方も、福山大学生物科学科であなたならではの視点でお猿の研究をしてみませんか?


出版された論文情報は以下のとおりです。
Ishizuka S, Inoue E (2025) Male affiliation bias towards orphans in Japanese macaques (Macaca fuscata) on Shodoshima Island. Behaviour https://doi.org/10.1163/1568539X-bja10308
学長から一言:サルの生態研究に取り組む生物科学科の石塚真太郎講師が執筆の雄ザルの子育てに関する新しい論文が学術誌Behaviourに掲載されたという朗報。おめでとうございます! 文明化したはずの人間様の子育てが近頃どうも危なっかしくなっていると思わせる話が少なくない中で、母親を失った子猿を誰彼の別なく大切に庇護する雄ザルの博愛主義の様子が観察されるとは・・・。「爪の垢でも煎じて飲むべき」は、いったいどちらでしょう。




