【生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)】伊平屋島での生態系調査

【生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)】伊平屋島での生態系調査

なんて素敵な自然が残されているのだろう。縁があって沖縄県伊平屋島を調査することになりました。ぜひ学生にもこの素晴らしい自然を体験してほしいと思い、研究室の学生に調査をしようと声をかけたところ、ぜひ行きたいと声が上がりました。9月20日から9月22日まで、環境DNA分析のためのサンプル採取を目的として、生物工学科 動物学研究室の学生3名とわたくし佐藤とで伊平屋島まで行ってきましたので、調査風景を紹介したいと思います。

いざ、伊平屋島へ

朝早く飛行機で那覇空港まで行き、レンタカーで今帰仁村にあるフェリー発着場「運天港」までたどり着きました。伊平屋島行きと伊是名島行きがそれぞれ1日2便ずつ運航しており、15:00発のフェリーに乗り込みました。天気が良かったので船からの景色も素晴らしく、フェリーでの1時間20分の間、海風を浴びながらとっても良い気持ちのまま伊平屋島に到着しました。

美しい風景とともに調査

さて、今回の目的は環境DNA分析のためのサンプル採取です。環境DNA技術というのは、水などの環境試料に残された生物の痕跡からDNAを分析する技術で、生物を捕まえずして、どのような生物が存在するのかがわかる方法です。今年3月に伊平屋島で採取したサンプルを対象に、4年生が卒業研究として分析し、50種程度の魚類と、ジネズミなどの珍しい哺乳類を検出することができました。今回は、異なる季節のサンプル、そして新しい地点のサンプルを分析するために調査に来たことになります。実際の作業はシリンジに環境水を50 ml吸い取り、ろ紙に濾すという作業を10回繰り返します。なかなかの力技の作業です。それを1サンプルとして、今回は8地点24サンプルを採取することができました。30℃を超す暑さでしたが、美しい風景とともに調査するのは大変気持ちの良いものでした。

水産養殖施設の見学と食事

今回も今年3月の調査と同様に、株式会社クラハシ様と漁協の皆様に、フィールド調査や現地での行動のあらゆる面でご協力・ご支援をいただきました。また、シロギスやヤエトハタの養殖施設を見学させていただき、学生ともども大変貴重な体験をさせていただきました。2日間共に職員の皆様とは食事もご一緒させていただき、若い職員の皆さんと島の自然のこと、養殖についてなどなど、色々なお話をすることができ、学生たちも刺激になったことと思います。それとともに刺身やモズクの天ぷらなど伊平屋島の海の幸をおいしくいただきました。あらためて株式会社クラハシ様の職員の皆様には感謝申し上げます。ありがとうございました。

環境DNAと言えば美ら海水族館

実は、環境DNA技術の中で、魚類を対象とした効率的な分析手法が日本で開発され、その手法は世界中の多くの研究者に使われています。わたしたちもその手法を使って、伊平屋島周辺の魚類相を明らかにしようとしています。その開発に大きな役割を果たしたのが美ら海水族館なのです。ジンベイザメが飼育されている大水槽の中の200種類弱の魚類の9割程度を環境DNAで検出できたという画期的な手法です。環境DNAを研究する者として、この水槽を見ずに帰るわけにはいきません。美ら海水族館は運天港から車で30分もかからず、伊平屋島に行く際にはとても都合の良い場所にあります。素晴らしい水族館でした。

また行きたい

伊平屋島は誰しもがそう思える島です。さて、これから実験です。どのような生き物たちが検出されるのか楽しみです。そして島の生態系を少しでも解きほぐすことができればよいですね。世界は2050年に向けて「自然と共生する世界の実現」というビジョンを掲げました。そのためには、生物多様性の理解が欠かせません。生物工学科は令和6年4月より学科名称を「生物科学科」に変更します。生き物とは何か、生物多様性とは何かを理解するための舞台として、伊平屋島は素晴らしい場所なのです。島からやる気をもらったことですので、研究を頑張りましょうか。また行きたいなぁ。

 

学長から一言:生物工学科(令和6年4月より生物科学科)の佐藤教授と学生諸君による沖縄北部に位置する伊平屋島での環境DNA分析のためのサンプル採取の旅は大きな成果が上がったようです。美しい海や景色を体験し、本学の内海生物資源研究所とシロギス「備後の姫」の完全養殖を通じて深い繋がりのある福山市の水産会社クラハシの伊平屋島現地スタッフとの交流や、旅の途中での美ら海水族館の見学など内容も盛り沢山。きっとまた何度でも行きたい場所になったのではないでしょうか。