【薬学部】薬学生が近隣小学校でアルコール代謝と遺伝子に関する講義を実施!

【薬学部】薬学生が近隣小学校でアルコール代謝と遺伝子に関する講義を実施!

2月24日(金)、薬学部病態生理・ゲノム機能学研究室の学生2名(4年生の古川さん、3年生の井野さん)と教員2名(道原教授松岡准教授) が尾道市立西藤小学校に赴き、5・6時間目を使って、6年生22名と5年生33名を対象にアルコール代謝(お酒を分解できる体質)と両親から受け継がれた遺伝形質に関する教育啓発活動を行いました。道原教授と松岡准教授からの記事について、学長室ブログメンバーの薬学部・猿橋が報告します。

 


西藤小学校は福山大学から一番近くにある小学校ですが、以前には3年生たちが「西藤のたからもの探し」をテーマとした授業の一環で、小学校から大学まで徒歩で見学に来てくれました。その時のブログ記事:【大学】ようこそ!尾道市立西藤小学校3年生の皆さん!大学見学へ!

今回は西藤小学校との連携活動の第二弾です。当日の朝、実施メンバーで集まり、最終の打合せを行いました。

午後から小学校へ行きましたが、まず授業の最初は、アイスブレイクとして小学校と大学をFaceTime通話でつなぎ、ライブ中継を実施しました。

未来創造館から見る大学内の風景、研究室間の垣根を越える工夫がされた開放的なオープンラボ、実験室に設置してあるPCR装置、微生物培養機など、日ごろ目にすることができない風景に小学生は興味津々、そして大画面ディスプレイを食い入るように見ていました。

5年生の松本くんが、Polymerase Chain Reaction(PCR)法や微生物培養法について説明しました。また、同じく5年生の秋山くんが、iPhoneを用いて中継カメラマンの役を担当しました。

未来創造館からの中継は以上でした!

 

次に、今日の授業で理解してもらうアルコール代謝と遺伝子に関する選択肢問題を解いてもらいました(プレテスト:5分)。小学校では、Information and Communication Technology(ICT)を活用した授業が多く取り入れられており、パソコンやキーボードの扱いには慣れていると伺っていたため、今回は紙媒体ではなく、Microsoft FormsによるWebアンケートを実施しました。6年生担任の青木先生、5年生担任の岩本先生、そして校長の本藤先生もWebアンケートの様子を見守られていました。

プレテスト後は、学生たちがシナリオを考え、そのイラスト作成と音声吹替を4年生の石川さんが担当して完成させたオリジナル動画講義を10分程度、視聴してもらいました。

小学生たちは真剣なまなざしで動画を視聴です!

 

動画講義を視聴後に、もう一度、アルコール代謝と遺伝子に関する選択肢問題を解いてもらいました(ポストテスト:5分)。さらに、この動画講義の内容について、分かりやすいと思ったこと、難しいと思ったこと、自分でもっと調べてみたいと思ったことなどについても、Webアンケートにより記入してもらいました。

私たちが考案したテスト連動型動画講義の有効性については、子どもたちのプレ・ポストテストの結果にもとづき解析していきます。昨年、実施した小学生へのゲノム教育活動については、6年生の吉岡さんが課題研究としてまとめあげ、そして日本社会薬学会の学会誌「原著論文:小学生高学年を対象としたゲノム教育に関するテスト連動型イラスト動画講義の実践とその有効性の評価」 で報告しています。興味ある方はご覧ください。

次に「動画講義はどうでしたか?では、答え合わせをしておきましょうね!」と子どもたちに語りかけました。

古川さんが、スライドを使って答えを説明!

アルコール代謝のメイン経路は「アルコール(お酒の成分) ➡ アセトアルデヒド(頭痛、吐き気などの原因物質) ➡ 酢酸 ➡ 二酸化炭素と水」へと分解が進みますが、その主な分解を担うのがアルコール脱水素酵素(ALD)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)であり、その遺伝子タイプの違い(遺伝子多型)によって、お酒をよく分解できる人、あまり分解できない人がいることを学んでもらいました。日本人には遺伝的にお酒を分解できない人(アセトアルデヒドが分解されず貯まり易い人)の割合が多いため、無理に多くの酒を飲みすぎないようにする必要があります。

また、アルコール代謝のサブ経路には、長期的なアルコール摂取(飲酒習慣)によって増産されるCYP2E1などのシトクロムP450酵素によってもアルコールが分解できますが、そのサブ経路を働かせすぎると活性酸素を生み出して肝臓の病気になったり、薬が効きにくい体質になることについても学びました。

動画の一画面「僕たちのことを忘れないでね」!

 

お酒が飲める人と飲めない人の違いには遺伝子が関係していること、また飲酒習慣があると病気になりやすくなることなど、少し難しかったと思いますが、今日学んだことが分かってもらえると一生懸命に準備した甲斐があります。

最後に、学生たちが作成した限定5つのDNAストラップ争奪「ジャンケン大会」を行いました。欲しい!!欲しい!!っと、校長先生も含めて大声援が沸き上がりました。

井野さん指導のジャンケン大会でDNAストラップをゲット!

 

授業後は校長室に移り、本藤校長と意見を交わしました。「西藤小学校と福山大学はとても近いので、是非、今後も福山大学との関わりを大事にしていきたいです。」と仰っていただきました。

左上から道原教授、古川さん、井野さん

 

以下は、授業を行った学生たちのコメントです。

■ 古川さん(広島県立尾道東高等学校 出身):小学校の授業時間をお借りして動画講義を行うため、小学生の皆さんに内容を分かりやすく伝えなければいけないというプレッシャーから、緊張と不安でいっぱいでした。しかし、小学校に着いて教室に向かう途中、子供たちが凄く元気よく挨拶をしてくれ、不安だった気持ちが一気に楽しみへと変わりました。小学生にとってかなり難しい内容だったかもしれませんが、最後まで一生懸命に聴いてくれました。今回の講義を通して、アルコール代謝や遺伝子について少しでも知ってもらい興味を持ち、自分自身が大人になったときに、お酒とどう付き合っていくのかを考える機会になればと思います。

■ 井野さん(広島なぎさ高等学校 出身):少し難しい授業内容だったかもしれませんが、小学生の皆さんが一生懸命に講義を聴いて、鋭い質問をしてくれたことがとても印象に残りました。子どもたちは想像以上にしっかりとした考えを持っていて、小学生ならではの着眼点がとても興味深かったです。今回、研究室の先輩方が実際に行っている活動に関わることができて、先輩たちのように自分も頑張ろうと、たくさんの刺激をもらえた1日となりました。  

 

私たちが作成した動画を用いて小学生の年代から遺伝子を利用した未病対策に関する教育を行っていき、セルフメディケーションや生活習慣病予防等につなげたいと思います。今後も学生たちと試行錯誤しながら、遺伝子の教育に関する啓発活動を近隣住民、小・中・高校生に対して行っていきたいと考えています。

西藤小学校の皆さん、ありがとうございました!

 

 

学長から一言:薬学部の皆さんが近隣の西藤小学校と実施している連携活動で、今回はアルコール代謝と遺伝子との関係を子ども達に分かり易く伝えるという試み。将来の薬剤師さん達にとっては重要な訓練、一方の子ども達にとっては大きくなってからのために大切な知識の吸収と、ウィンウィンの関係が結べたようですね。