【生命栄養科学科】地域の漁業と魚介加工を学び、食育を考える

【生命栄養科学科】地域の漁業と魚介加工を学び、食育を考える

栄養教諭を目指す生命栄養科学科の4年生が、魚加工の体験を通じて、福山市の漁業と魚介加工について学びました。このことについて、体験学習の様子と学生の感想を紹介します(報告:助手Y)。

 

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地産地消と聞くと野菜や果物を思い浮かべがちですが、瀬戸内海を臨む福山市では、魚介類も地域の産物として豊富です。新鮮な魚介類はそのままでも十分おいしいですが、特徴的なのが、これらをふんだんに使用した水産加工品の数々です。

今回は、栄養教諭を目指す生命栄養科学科の4年生が、魚介加工の体験実習に参加しました。魚介加工方法や地域特有の加工品について理解を深め、児童への食に関する指導に活かそうというねらいです。

JR福山駅からバスで30分ほど移動し、鞆の浦へ。

鞆の浦は、福山市南部に位置する港町です。瀬戸内海に浮かぶ島々、160年の歴史を誇る「常夜燈」など、美しい景色と街並みが特徴であり、2015年には文化庁の日本遺産に認定されています。移動中にも、魅力的な風景が広がります。

有名な常夜燈の前で1枚。

 

道中には、薬味酒「保命酒」のお店がありました。保命酒も福山市の特産品の1つです。

 

鞆の浦の歴史を感じつつ、歩くこと15分ほど。今回の魚介加工の体験実習では、鞆の浦にある「株式会社阿藻珍味 鞆の浦鯛匠の郷」のお世話になりました。同社は瀬戸内の新鮮な小魚を丸ごと活かした、練り物や珍味で有名な福山の企業です。

上の写真が今回の「ちくわ手握り」「ふりかけ作り」「手焼きせんべい作り」の3つを体験した実習場所です。

 

まずは「ちくわ手握り体験」

職人さんのアドバイスを聞きながら、魚のすり身を竹串に付けます。作業自体は簡単に見えますが、やり方が雑だと引っ付けた部分がはがれてしまったり、厚みが不均一だと焼いている途中に落ちてしまったり・・・、気が抜けませんでした。

職人さんの声かけは分かりやすく、またどうして丁寧に仕上げないといけないかも説明して下さいました。「具体的にどうするか」「どうしてそうしなければいけないのか」を分かり易く話すこと。これは、将来児童に指導する際の話し方のポイントでもありますね。

私たちが手握りしたちくわは、その場で焼いていただきました。

 

続いて、「ふりかけ作り体験」

ベースとなるふりかけ材料に、たまご、かつお、ちりめんなど11種類の具材を好みに合わせて調合します。こちらもお好みで混ぜ合わせるだけの簡単な実習に見えますが、「児童に教える」場面を想像すると、ふりかけを作るだけでも様々な工夫が必要だなあと感じました。

例えば、分量は容器に分かりやすく目印が書かれており、「スプーン10杯くらい入れられます」と掲示してありました。また、ベースのふりかけにさまざまな具材を足していく際、味を整えることはもちろんとはいえ、かなり配合の自由度の高い作業です。少し工夫することで、児童でも分かりやすく楽しめる調理実習ができそうですね。

瓶に移し、オリジナルのラベルシールを貼って完成です。

 

そして、「手焼きせんべい」作りの体験。こちらは少し難しいです。

生のせんべいを網で焼いていきます。絶え間なくひっくり返しながら両面を焼いていくと、どんどん膨らんでいきます。放っておくと丸まってくるので、ピンセットでしっかり押さえながら形を整えます。

鞆の浦には「鯛網漁」という伝統漁法があり、鯛が有名です。このせんべいも「鯛だし」で味付けされており、鯛の形をしています。

時間との勝負なので、みんな真剣です。

この体験は火を使って行うことから、手早い作業が求められます。職人さんはコツを説明しながら実演して下さいましたが、もし自分たちが児童に教えるとしたら、どうでしょう。児童の学年によっては火の扱いの注意が必要でしょうし、難しい作業をどう説明して、どう補助したらいいか?・・・・・あれこれ想像しながら5枚のせんべいを焼き上げました。

3つの体験実習を終え、最後は試食会です。自分で作り、喫食する。体験実習をしたとき、児童はどのように感じるのか。児童の気持ちを想像しながら、焼きたてのちくわとせんべいを美味しくいただきました。

最後に、今回の体験実習について学生の感想です(一部抜粋)。

Aさん「ちくわ手握り体験では、職人さんが分かりやすく楽しく教えてくださったので、子どもでも楽しみながら簡単に作ることができると思いました。子どもへの教え方の参考になりました。地域の特産物を自分たちの手で作ることで、より身近に感じることができると思いました。」

Bさん「(中略)もし、食育の教材として今日の体験実習を活用するなら、製法の伝統や、なぜそのように発展したのか?その背景や作り手の気持ちや誇りも併せて伝えたいと思いました。」

Cさん「食に関することだけではなく、地域の歴史など自分たちが住んでいる町についても知ることができ、良い体験ができました。児童にも福山という地域のことを好きになってもらえるような授業づくりができるよう、頑張ります。」

 

短い時間ではありましたが、食育の観点から様々なことを考えることができました。学生の皆さんは今回の活動を活かして、今後もより良い食育を目指して頑張ってください!

最後になりましたが、株式会社阿藻珍味 鞆の浦鯛匠の郷の皆様、ありがとうございました!

 

 

学長から一言:栄養教諭となって、子ども達に食育や調理実習を教えることを目指す学生の皆さんの体験実習。ちょっぴり観光気分も味わえる鞆の浦へ繰り出して、地元の有名な会社で、瀬戸内海でとれた海産物を食材にした食品加工の本格的な実習ができて良かったですね。生命栄養科学科の学びで羨ましいのは、調理実習の後で試食ができること。自分で手作りした作品の味はさぞかし美味しかったことでしょう。実習の場を提供して下さった「阿藻珍味 鞆の浦鯛匠の郷」の皆様に私からも感謝したいと思います。お世話になり、有り難うございました。