【生物工学科】富士山の野ネズミの研究がニュースに!

【生物工学科】富士山の野ネズミの研究がニュースに!

福山大学は、地域と共に歩む大学であることに間違いはありません。しかし、本学は地域にとどまらず、日本全国、そして世界へと研究を発信し続けています。今回は、富士山で走り回る野ネズミたちの研究を紹介します。昨年、日本哺乳類学会英文誌Mammal Studyの10月号に掲載され、先日、メディアで報じられました(毎日新聞Yahooニュース琉球新報)。生物工学科佐藤がお伝えします。

日本一高い山、富士山。日本人なら誰でも知っている山。圧倒的な存在感。世界文化遺産。男声合唱に精通している人ならば、草野心平作詞、多田武彦作曲の富士山を思い浮かべるでしょう。豊かな自然を持つ一方で、多くの観光客が訪れる山でもあります。その北側の斜面には、5合目まで富士スバルラインという道路がありますが、今回の研究はこの道路が野ネズミたちの移動に影響があるかどうかを調査したものです。

こちらがスバルラインです。調査は2015年、2016年、2018年に行いました。ちなみに、私が参加したのは2016年と2018年です。道路の両脇に各50台程度のワナを仕掛けて、翌朝、捕獲されていたらサンプリングを行い、野ネズミは現場にリリースするという手順です。

捕獲できた野ネズミは、日本固有種であるアカネズミ、ヒメネズミ、スミスネズミです。皆さんにとってはどれも変わらないネズミに見えるかもしれませんが、ヒトとチンパンジーよりも遠い関係のネズミたちです。また、どの種も森林を住みかとしているネズミです。下の写真は、トラップからひょっこり顔を出すアカネズミです。かわいいでしょ。しかし、ブナ科の植物の種子を散布するなど森の維持にとっても大切な働きをしているのです。

次はヒメネズミです。アカネズミが地上性のネズミであるのとは異なり、ヒメネズミは半樹上性のネズミです。すばしっこくて良い写真が撮れませんでした。

そして、最後はスミスネズミです。平和ボケした顔をした(個人的感想)かわいいネズミです。このネズミは、アカネズミやヒメネズミとは違ってキヌゲネズミ科ということなるグループに所属します。

合計139頭のネズミを捕獲して、比較的サンプル数の多かった地点の道路の両脇のネズミの遺伝的なタイプの違いを調べたところ、半樹上性のヒメネズミとアカネズミにおいて違いが見られました。500-1000㎡も移動できるアカネズミやヒメネズミですが、たった5m程度の道路で移動が制限されているようです。人と自然が共生する社会を構築するためには、こうした人工物が野生生物に与える影響を知らなければなりません。福山大学が推進する「瀬戸内の里山・里海学」にも通じる成果であると考えています。

論文:Sato JJ, Aiba H, Ohtake K, Minato S (2020) Evolutionary and anthropogenic factors affecting the mitochondrial D-loop genetic diversity of Apodemus and Myodes rodents on the northern slope of Mt. Fuji. Mammal Study 45 (4): 315-325.

メディア:毎日新聞Yahooニュース琉球新報

 

学長から一言:500メートル四方ぐらいは十分移動するネズミさんが、わずか5メートルでも人工的な道路があるとあまり交わらない、という事でしょうか。。。舗装道路は平坦でも、異質な遮蔽物なんでしょうね。。。ウーン、考えさせられますね~!!!