【人間文化学科】2020年度卒論発表会―対話を通して考える1週間

【人間文化学科】2020年度卒論発表会―対話を通して考える1週間

今年度の卒論発表会では、考えを深め、それを自らの言葉で表現する、ということの難しさと大切さを改めて感じました。

学長室ブログメンバー、人間文化学科の清水です。こんにちは。今回は、例年とは異なる形式で実施した「人間文化学科卒論発表会」についてお伝えします。

【実施方法について】

例年、人間文化学科では2~3つの分科会に分かれて卒論発表会を実施していました。しかし、今年度は新型コロナウイルスの影響を踏まえ、オンラインでの実施となりました。

「オンライン」とはいえ、形式はさまざまです。人間文化学科ではZoom等を利用したリアルタイム方式ではなく、学内ポータルの「セレッソ」を利用したオンデマンド式の発表を行うこととしました。インターネット環境や操作の面から、Zoomでの利用に不安を感じる学生もいたためです。

まず、ゼミ毎の発表会場ページなるものを作成し、そこに4年生の発表コンテンツを置きます。質疑応答期間(2月19日~2月26日の1週間)の間、教員含めた200名ほどの参加者が自由に発表を閲覧し、コメント欄にて質疑応答を行うことになりました。

 

各ゼミの発表会場一覧

【実施期間中の様子】

論文題目もさまざまです。「どのようなことでも研究対象にできる」という人間文化学科らしく、文学や歴史をテーマとする発表はもちろん、海外の元旦における伝統や漫画表現から見る音のイメージ、人間関係におけるSNSの役割、明治維新期における日本、特撮から見る社会情勢などなど……さまざまなテーマでの発表が揃いました。

では、質疑応答期間中はどのような状況になっていたのかと言えば……下の画像のとおり、活発な質疑応答が行われました。

こうした形式では、発表者と閲覧者が積極的に関わろうとする気持ち+アクションが求められます。例年であれば、割り当てられた時間内に発表者が登壇すれば、発表から質疑応答へと自然に進行していきました。しかし、今回はそうした流れがないため、参加者たちで流れを作っていく必要がありました。

特に、4年生にとっては大仕事です。質問に対して誠意のある姿勢で対応できた発表者であれば、大きな達成感を得られたかと思います。一方で、残念ながら投げかけられた質問に対応しきれない状況も見られました(対面での発表であれば、沈黙のまま時間オーバーとなるでしょうか)。

また、積極的な参加を呼びかけた3年生からも多くの質問が投稿され、CiNii(論文検索サイト)での具体的な検索のコツなどを尋ねる場面も見られました。ちょっとした疑問や知りたいこと、また感想なども含め、さまざまなやりとりが交わされ、公開期間中の総アクセス数は8,614となりました。

【本発表会の成果と課題】

まず、今回の卒論発表会の成果はどういった点にあるでしょうか。以下、小原学科長の総評から抜粋して紹介します。
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 第1は、初めて全員の卒論内容に触れることができたということです。従来は、2~3分科会に分かれての開催でしたので、どうしても全員の発表に触れることができませんでした。その点では、オンラインではありましたが、全員の汗の結晶に触れることができました。
 第2は、下級生、特に来年度発表する3年生からの書き込みが積極的に行われたということです。1週間という期間が設定されたこともあり、発表者にとってもたくさんの反響があり、やりがいがあったのではないでしょうか。従来は限られた時間内での発表と質疑でしたので、多くの場合は教員からのコメントで終わっていたように思います。研究内容に関する学生間での対話が生まれていたように思いました。対話はオンラインでも成立するのです。
 そして第3は、対話を通して深く学ぶという、人間文化学科の新たな文化や価値の創造が芽生えたのではないかということです。従来の卒論は「一人でコツコツと」でしたが、これからは「仲間と共に」です。普段の授業もそうありたいですね。発表会も、口頭での質疑ではなく、セレッソ上での活字を使っての質疑なので「考える」という活動が不可欠となります。意見や考えの異なる他者と考え合う中から、未来の文化を創造する力は引き出されと考えます。
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自身が執筆した卒論について、再度立ち止まり、対話を通して深く考える機会が生まれたことは大きな収穫であったと思います。これは、従来の発表会ではできなかったことです。
一方で課題も残りました。それは「伝える」ということにどう向き合うかです。伝えられるもの(卒論)はあるのに、その内容を十分に発信できたのかどうか……。
 
今回の発表会にあたり、4年生は卒論抄録の他にも発表コンテンツを準備しました。例年であれば、レジメや読み上げ原稿を用意すれば良いのですが、今回は各自が選択した発表方式によって、音声ファイルや動画ファイルを準備する必要があったのです。
こうした作業がどれほどできるかには個人差があります(今回は、各教員がゼミ生をサポートすることにしました)。苦手な学生もいれば、なんなくこなす学生もいます。教員の指導がなくともZoomを使ってパワーポイントのプレゼンテーションを録画する学生もいる一方、慣れていない学生にとっては気持ちの負担も大きかったのではないかと思います。
しかし、アンケートでの意見(「パワーポイントによる発表が特にわかりやすかった」)や今後は「オンライン」という方式が1つのスタンダートになる可能性は否定できないことからも、「自身の考えをさまざまなツールを活用して視覚化し、なおかつ自身の言葉で相手に伝えること」「そのためのスキルを持ち、経験を積むこと」の必要性が高まるように思います。これから社会で活躍する学生たちは、こうしたことも意識していく必要があるのかもしれません。今回の発表会は、上記の点についても新たな問題意識を提示したように思います。最後に、試行錯誤を重ねながらも動いてくれた4年生たちに、深く感謝したいと思います。

 

参加者の皆さん、お疲れ様でした。

 

学長から一言:withコロナ時代の、なかなか意欲的な試みは、いろいろ新しい成果を生み出したようですねッ!afterコロナ時代になっても、活かせる部分が大いにありそうですねッ!学生の皆さん、教員の皆さん、お疲れさま!