【海洋生物科学科】瀬戸内の里山・里海学

【海洋生物科学科】瀬戸内の里山・里海学

第66回海洋教育フォーラムで、福山大学ブランディング研究「瀬戸内の里山・里海学」の一端を発表しました。

皆さんこんにちは。海洋生物科学科学長室ブログ委員の阪本です。

今回は、12月6日(日)に学校法人福山大学社会連携推進センターで開催された第66回海洋教育フォーラム「広島県東部から見た造船業と瀬戸内海」の模様をお知らせします。

海洋教育フォーラムとは

一般の方に海洋への関心を持っていただくために、日本各地で毎年行われているイベントです。

今回のフォーラムは、広島開催フォーラムとして初めて県東部の福山市で開催されました(新型コロナウィルスの影響でWeb開催となりました)。

会場は、JR福山駅前に在る学校法人福山大学社会連携推進センターでした。

今回のフォーラムでは、最先端の造船技術や瀬戸内海の環境について、今まであまり語られなかった広島県東部からの視点で次の4題の発表がありました。

フォーラムのプログラム

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開会挨拶:小林正典(日本船舶海洋工学会 海洋教育推進委員会委員長)

【講 演】

①国際環境条約と瀬戸内海船舶修繕業 (寺西秀太,株式会社三和ドック代表取締役社長)

②瀬戸内海発環境にやさしい船作り (施 建剛,常石造船株式会社設計本部設計管理部長,広島大学大学院先進理工系科学研究科客員教授)

瀬戸内海の成り立ちと魚類の遺伝的集団構造 (阪本憲司 准教授,福山大学生命工学部海洋生物科学科)

瀬戸内海の藻場観測技術の開発 (仲嶋一 教授,福山大学工学部スマートシステム学科, 安全安心防災教育研究センター長)

閉会挨拶 :作野裕司(第66回海洋教育フォーラム実行委員会委員長)

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上記のように、今回の演題の内、福山大学からは本学のブランディング研究「瀬戸内の里山・里海学」について、工学部スマートシステム学科仲嶋教授生命工学部海洋生物科学科の私が発表しました。

 

瀬戸内の里山・里海学

福山大学の所在する備後圏域は、全国でも有数の里山地域です。

また、豊穣の里海 “瀬戸内” の中心に位置し、島嶼の集中した「しまなみ」の入り口でもあります。

さらに、備後圏域は歴史的に「ものづくり産業」で栄えた地域であり、機械金属工業をはじめ、繊維・木工・食品など特色ある地場産業が集積した地方都市群を内包し、人と自然の関わりの深い地域でもあります。

昨今、地球規模での環境の悪化・生物多様性の消失の危機が叫ばれる中、人との関わりの中で生物多様性を育む里山・里海を研究し、自然共生社会への道を模索すると共に、それを維持しつつ資源を利用し、ものづくりを含む経済活動や文化活動を活性化することが次の世代に対する我々のなすべき義務と考えています。

備後圏域は、このような取り組みに最適の環境であり、里山・里海に根ざす未来のまちのあり方を提示する「瀬戸内モデル」の構築に全学を挙げて取り組み、これを福山大学のブランドとして確立することを目指しています。

 

この「瀬戸内の里山・里海学」から、今回発表した私の研究内容について触れさせていただきます。

今回、「瀬戸内海の成り立ちと魚類の遺伝的集団構造」と題して発表しました。

取りあげた魚類は…トビハゼです。

         研究室で飼育しているトビハゼたち

トビハゼは干潟に生息するハゼの仲間です。

魚であるにもかかわらず、皮膚呼吸ができるため水中から出て餌を探したり、求愛ダンスを踊ったりします。

福山大学の近くに広がる松永湾の河口干潟でも、泥面をピョンピョン跳ねたり、ヨッコラヨッコラと胸ビレなどを使って歩く姿をみることができます。

ただし、冬季は巣穴の奥で冬眠中です…zzz…

           砂を掘っているトビハゼの雄♂

このトビハゼですが、実は環境省のレッドデータで準絶滅危惧種に指定されています。

干潟は遠浅で波浪の影響が小さいため、高度経済成長期には工場立地などの埋め立てなどにより激減しました。

また、水質悪化などの影響もあって、トビハゼたちの生息場所が狭まっているのです。

このような危機的な状況に在るトビハゼたちの保全を検討するためには、本種の遺伝的多様性や遺伝的集団構造を明らかにする必要があります。

そこで私は、広島県の泥干潟にも生息している里海の生物としてこのトビハゼに着目し、これまで研究室の学生たちと調査やDNA分析を進めてきました。

その甲斐あって、成果が、本年10月に「Aquatic Animals 水生動物」というオンラインジャーナルに学術論文として掲載されました。

この論文の共著者である徳永隆史君・中野優作君・池田恵里花さん・高尾清人君は、彼らが4年生のときに私が卒業研究を指導した学生たちです。

彼らとの研究成果を学術論文としてカタチにできたことを、大変うれしく思っています。

また、共同研究者に加わっていただいた方々と本研究を支援していただいた福山大学の皆さまに、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

これからも福山大学の学生たちとともに、「瀬戸内の里山・里海学」の発展に励んでいきたいと思います。

 

学長から一言:愛嬌たっぷりのトビハゼも、準絶滅危惧種なのですね~。。。大学のブランディング事業として「瀬戸内の里山・里海学」を推進している福山大学としては、瀬戸内の環境保全に向けての研究にもしっかりがんばらなくっちゃ!学生の皆さんも協力をよろしく!!!