【海洋生物科学科】南カリフォルニアでトビタテ水族館研修

【海洋生物科学科】南カリフォルニアでトビタテ水族館研修

「トビタテ!留学JAPAN」に採択され、現在、南カリフォルニアで水族館研修をしている中荒井李華さん(海洋生物科学科2年生)から近況が届きましたので紹介します。日米の水族館展示に対する考え方の違いに驚く様子がひしひしと伝わってきます。


 

皆さんこんにちは。海洋生物科学科2年生の中荒井李華です。私は今、トビタテ!留学JAPANのプログラムでアメリカの南カリフォルニアに来ています。カリフォルニア大学サンマルコス校で英語を勉強しながらサンディエゴの水族館などで研修をしています。その様子を紹介します。

訪問学習では、これまでに4箇所の施設を訪問しました。こちらの水族館展示は、日本の水族館のように「きれいさ」で魅せるのではなく、現在の海洋環境を再現していたり環境問題を取り上げた展示をしていたりするところがとても多いです。水槽の中にショッピングカートのレプリカがあったのには、本当に驚きました。また、多くの学校が環境教育プログラムに参加しています。

朽ち果てたショッピングカートが沈んでいるジャイアントケルプの水槽

 

カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋研究所バーチ水族館

最初にバーチ水族館を訪れ、サンディエゴの海洋環境やUC San Diego の研究内容を学びました。水族館はスクリップス研究所に付属しており、館内には博物館もあります。

バーチ水族館は、入って左が博物館、右手が水族館、海に面している中央には人工的に作られたタッチングタイドプールがあります。また、水族館の入口には、毒や発光など魚が持つ能力ごとに展示された標本があり、先に進むと大きな2つの水槽があります。左手前がHealthy Coral、右奥がBleached Reefという2つの対照的な水槽です。これは文字通り、健康なサンゴと白く死んでしまったサンゴの水槽です。健康な珊瑚礁には多種多様な生態系が形成され、白化した珊瑚礁の生態系は豊かではないことがすぐに理解できます。ラホヤはBleached Reefの割合が多く、メキシコにはHealthy Coralの割合が多いことから、身近にある対照的なエリアを用いてHealthy Coralの重要性をとても分かりやすく展示しています。日本の水族館は、学ぶよりも観光客に「見せる」ことがメインになっている所が多いです。

Healthy Coral、右奥がBleached Reefという2つの対照的な水槽

 

下の写真は、COが増加するとともにpHが低下して酸性になり、サンゴに悪影響をもたらす様子を示している展示パネルです。現在、スクリップス研究所では、試験的にパナマ海へ3種類のサンゴを植えて育てる研究をしているそうです。

 

水族館は、巨大なケルプのある水槽がメインになっています。巨大なケルプはサンディエゴの海の豊かさを象徴するものです。また、スクリップス研究所が育成に取り組んでいるサンゴやタツノオトシゴの展示も豊富でした。これは、研究所が運営しているからこそ、最新の技術を使用した展示が行えるのだと思いました。

ジャイアントケルプの水槽

 

下の写真は、大学が所有する5隻の調査船の航路を示したものです。色が集中している場所は、地球上の潮の流れが最終的に集まる場所で、多くのプラスチックごみやマイクロプラスチックが溜まっています。いったんアメリカ付近から出たゴミは、長い間海を漂い、最終的にこうした場所にたどり着く頃にはマイクロプラスチックとなっています。一方、日本から出たゴミは、漂う時間がアメリカよりも短いためにゴミが集まる場所では様々な大きさのプラスチックが見られます。一番大きな調査船は、調査日数が52日間、21人のCrewと37人のScientistsで水質やゴミの調査を行っているそうです。

 

バーチ水族館が位置するラホヤは、主にLeopard Sharks の保護区域となっているため、ビーチでの釣りが禁止されています。サメは日中浅瀬に集まり、夜に分散してエサを探す習性があります。ビーチ付近の海はすぐに水深が深くなっており、ラホヤキャニオンとスクリップスキャニオンにサメが移動します。この付近の海はHealthy Coralではないものの、ジャイアントケルプが繁茂するため生態系が豊かです。サメにとっては温暖で穏やかな水域で生活ができるため、ラホヤの雌個体はほとんどが妊娠中だそうです。これらのサメは、成長後に産卵場所に戻ってくる習性があることが多くの研究結果から分かっています。

ラホヤ海岸のサメの動きを展示するパネル

 

個人的には水族館内のいたるところに貼られているStickerに目が留まりました。ビニール袋のシルエットの中には「1個のペットボトルをリサイクルすると6時間、60ワットのエネルギーを節約することができる。ペットボトルを持ち歩くことで、1日8杯の水を飲むときに必要なコスト1400ドルを水道代だけの0.49ドルにすることができる。」と書いてありました。カリフォルニアは水の値段が高いということもありますが、マイボトルを持つことがペットボトルの量を減らすことにつながっていると思いました。他にもプラスチックごみがどのように魚たちに影響するか?など多くのことが書いてあり、このようなStickerは日本ではあまり見たことがありません。立ち止まってじっくり読むような長文ではないので、非常に読みやすく、これもまた訪れる人々に環境を意識させるきっかけになっていると感じました。

水族館の至る所に貼られているSticker

 

留学生活について

最後に、私の留学生活についてご紹介します。ホームステイ先のホストファミリーは、デザイナーと看護師の仕事を掛け持ちしている女性です。彼女はファーストフードがあまり好みではないそうで、基本的には全てオーガニックです。朝昼晩、とてもバランスの良い食事を作ってくれます。また、同じ時期にオーストリアからの留学生が来たので、家の中には3人と犬が1匹います。最初の頃はネイティブな英語が聞き取れませんでしたが、少しずつ慣れて3人でご飯を食べたり、3人の出身が違うので各国の文化についてリビングで話をしたりすることもあります。とても楽しいです。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のキャンパス

学校は週に4日、SpeakingやListening、Conversationのクラスがあります。授業初日にクラス分けのテストがあり、Speaking以外は初心者クラスに振り分けられました。どのクラスも英語に特化した大学から来ている日本人だったり何度も留学している人がいたり、かなり自分のレベルの低さを痛感しました。現在は、授業や日常の英会話を録音して家で勉強したり、極力外に出て英語を話すようにしたり、今いる環境を最大限に活かせるように努力しています。

毎日お昼か遅くとも3時頃には学校が終わるので、1人で海沿いの街まで出ることもあります。距離に関係なく1DAYパスが使えるので、最初に降りた人と同じところで私も降りて、そこを探検したりしています。また、休日は友達がいろいろなところに連れて行ってくれたり、勉強するだけの日もあったりと様々です。さらに、個人的な活動でモザイクアートを作ることにも取り組み始めています。今週はインターナショナルの集まりで、モザイクアートに使うバラのイラストをみんなで描いています。

だんだん帰国の日が迫ってきて名残惜しい気もしますが、残り少ない日々をさらに充実させたいと思います。

 

学長から一言:中荒井李華さん、素晴らしい経験を積んでいますねッ!水族館の在り方の違いもとても興味深く読みました。。。楽しむ場より学びの場ですね。。。勉強になりました。。。帰国したら、内海生物資源研究所の水族館にこの留学で学んだことがさっそく生かせそうですねッ!期待しています!