【機械システム工学科】因島の藻場を空撮!

【機械システム工学科】因島の藻場を空撮!

海洋探査プロジェクトの学生チームは、これまで因島での空撮に失敗したり、福山大学構内での空撮トライを行ったりしてきましたが、9月3日(月)に因島での空撮に再挑戦しました。機械システム工学科の内田が報告します。

 

この空撮は、海中探査ロボットのための藻場マップの作製を目的として行っているものです。現在、機械システム工学科では、福山大学の私立大学ブランディング事業「瀬戸内の里山・里海学」の研究課題のひとつである「里海の藻場探査プロジェクト」に、スマートシステム学科情報工学科と共同で取り組んでいるところですが、その1テーマとして、藻場の中の海洋生物の生態を調べるための海中探査ロボットを開発中です。海中を自律的に探索するロボットの実現を目指していますが、ロボットにあらかじめ藻場の地図情報を与えておけば、より確実かつ効率的な藻場探査が可能となります。そこで、その藻場マップを気球による空撮で作成しようという考えです。

 

それでは、空撮の結果を紹介しましょう。下の写真は、福山大学の因島キャンパスである内海生物資源研究所(内海研)前の海岸から気球を約120mの高さまで上げ、藻場があるとみられる海岸の海域を空撮したものです。浅瀬の一部に藻場らしきものが見えるものの、全体に青緑色の海面が広がっていて、どこが藻場なのか判然としません。

 

 

そこで、画像の微妙な色の違いを強調する画像処理を施してみました。すると、藻場と海底の砂地の部分が異なる色となって現れ、藻場の存在が明瞭に判別できる画像になりました。画像中の線や文字は、藻類の専門家である海洋生物科学科の山岸准教授に記入してもらったものです。山岸准教授によると「画像処理により、海藻(草)が格段に明瞭になっている。アオサ藻体は不定形で、アマモは線状の葉を持つが、画像ではおおまかにそのような形状の違いも確認できる(下3枚目の拡大写真)。ヒジキなどの褐藻は、この時期まだ小さな芽の状態だが、生長した褐藻がどのように見えるのか興味深い。」とのことで、今後に期待の持てる成果が得られました。

 

 

今回の空撮では、赤外線カメラによる空撮も行いました。赤外線カメラは、普通の小型デジタルカメラを改造して自作したものです。下の写真は、1枚目の写真と同じ海岸部分を、その赤外線カメラで空撮したものです。

植物は赤外線を強く反射する性質があるので、赤外線カメラで海中の植物が見えることを期待していたのですが、写真の通り海面はほぼ黒一色で、藻場があるはずのところには何も見えません。これは、水中では水色や青緑色以外の光は吸収されやすく、赤外線は特に強く吸収されるので、光が海底まで届かないためです。赤外線カメラで藻場を撮影しようという考えは失敗でした。

 

 

しかし、海面を見ると白い筋のようなものが明瞭に写っています。これは、海底から抜けたアマモが一群となって海面を浮遊しているものです。下の写真は、通常のカメラと赤外線カメラで、同時刻・同位置・同アングルで海辺を撮影したものですが、通常の写真(左)ではわかりにくいアマモの浮遊物が、赤外線写真(右)でははっきりと写っています。これらのことから、海面を浮遊する植物であれば、水に邪魔されることなく赤外線カメラで見つけることができるということが確認できました。

 

 

藻場の研究では、岩場や海底に生えている海藻や海草だけでなく、それらが抜けて海面を浮遊する「流れ藻」も魚類などの海洋生物を育む場として重要な研究対象の一つです。赤外線カメラによる空撮は、この流れ藻の研究に情報提供するための手段として期待が持てそうです。

今後、さらに実験を重ねて藻場空撮の方法論を完成させ、海中探査ロボット用藻場マップの作製や海洋生物科学科における藻場研究への協力などに役立てていきたいと考えています。

 

学長から一言:じわ~と本丸に近づいていますねッ!でもまだまだ本丸は遠そうです。。。学生の皆さん、研究のめんどくささを乗り越えた先に、研究の醍醐味が顔を覗かせてくれますからねッ!!!