薬学部

Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences

【研究】食事による腸内細菌叢の変化は漢方薬の効果を左右することを解明

【プレスリリース】

食事による腸内細菌叢の変化は漢方薬の効果を左右することを解明

- 大黄甘草湯は便秘症の腸内細菌叢の状態下で下剤効果を発揮する -

 

<研究成果の概要>

大黄甘草湯※1は、便秘症に対する効果が広く認められている漢方薬です。医薬品には、効果を示す人(レスポンダー)と効果を示さない人(ノンレスポンダー)の存在がよく知られています。漢方医学ではこのような個人差を証※2と定義し、漢方薬の治療ガイドラインとして最も重要視します。我々は、大黄甘草湯における下剤効果の個人差は、食生活、特に食事による腸内細菌叢※3の違いが影響を及ぼすと考え、下剤効果と腸内細菌叢の変化についてマウスを用いて検討しました。その結果、便秘症患者と腸内細菌叢が類似している高炭水化物(右図)および高脂肪飼料摂取下の腸内細菌叢において、大黄甘草湯の下剤効果は促進され、その効果に大黄成分のrhein 8-Oβ-D-glucopyranoside(RG)が関与することを明らかにしました。また、大黄甘草湯は腸内細菌叢を大きく変化させることで下剤効果を高めていることを解明しました。一方で、高食物繊維飼料摂取下の腸内細菌叢において、大黄甘草湯の下剤効果は反対に抑制されました。一般的に食物繊維の摂取により腸内環境は整えられ便通は改善することから、そのような状態にある患者さんには大黄甘草湯が適応しない、すなわち大黄甘草湯の証ではないと考えられます。本研究によって、食事による腸内細菌叢の違いが漢方薬のレスポンダーとノンレスポンダーを生み出す一因になっていることが明らかとなり、証と腸内細菌叢が深く関わっていることを証明しました。

本研究は、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究、日本私立学校振興・共済事業団(若手・女性研究者奨励金)、福山大学学内研究助成金の助成を受けて実施しました。

 

<補足解説>

※1. 大黄甘草湯は大黄と甘草からなる漢方薬で、大黄の主成分であるセンノシドAが腸内細菌によって代謝されレインアンスロンとなることで下剤効果を示す。センノシドA自体は西洋医薬品として用いられる。

※2. 証は患者個々の病態を見極め、レスポンダーとノンレスポンダーを区別するための治療ガイドラインである。

※3. 腸内細菌叢は腸内に棲息する細菌群で、ヒトの大腸には100兆個、1000種類以上存在する。このバランスの乱れは免疫疾患や内分泌疾患、精神神経疾患など様々な疾病の発症に関与することが報告されている。

 

<原論文情報>

研究論文名:Daiokanzoto (Da-Huang-Gan-Cao-Tang) is an effective laxative in gut microbiota associated with constipation(大黄甘草湯は便秘症の腸内細菌叢の状態下で下剤効果を発揮する)

公表雑誌:Scientific Reports(英国科学誌)

公表日:英国時間 2019年3月7日(木曜日)(オンライン公開)

 

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☆本件に関するお問い合わせ先☆

【担当者】薬学部 助教 髙山健人(たかやま けんと)

【電話】084-936-2112(5164)  【Fax】084-936-2024

【E-mail】takayama@fukuyama-u.ac.jp

【HP】http://web.fukuyama-u.ac.jp/pharm/htmls/Labo/labs/KAMPO/index.html

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