【☆学長短信☆】No.109カリキュラムのスリム化を考える

台風一過、秋晴れになりました!

さて、かつてはどこの大学でもカリキュラムはかなり属人的で、教員 が変わるとカリキュラムも変わるというような現象も珍しくありませんでした。本学では、牟田泰三前学長時代の2008年に「人間関係をつくりながら学ぶ目標設定型教育システム」をいち早く構築し、以来これを洗 練させながら、一つ一つの授業の意味・目標をはっきりさせ、全体の体 系の中で必ずしも必要ではない科目は削り(カリキュラムのスリム 化)、さらに残った科目については事前・事後学修にも力を入れるようにしてきました。
しかし、なかなか理屈通りには行かない難しい問題もありますね。今回は、そのあたりのところを大学教育センター長の大塚副学長からの メッセージとして、以下にお届けします。ご一考いただければ幸いです 。

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先日、ある打合せで、「学生に課題を出しても、以前に比べて提出しない者が多くなった」という話を耳にした。自分自身も感じるところがあったので、その後、何人かの同僚にも尋ねてみた。悉皆調査ではない ので、確かなことは言えないが、そういう傾向がなきにしもあらずのようである。では、何が原因なのか。大学入学までの教育において、宿題の提出がそれほど厳密に求められない環境で育ってきたのか。また、残 念なことだが、学生の基礎学力が落ちてきているのか(確かに、学力における高校生の中間層の学習時間が15年で約半分に減少したことが知られている)。これらに加えて、一人の学生に求められる課題提出の要求が多すぎて、過重な負担に対応しきれず、部分的に出さずじまいになってしまっているのではとの思いも頭をよぎった。
中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」の中で、学士課程教育の質的転換の方策のひとつとして、教育課程の体系化と授業科目の整理・統合(いわゆるカリキュラムのスリム化)が謳われたのは今から6年前の平成24(2012)年8月。そこでは、CAP制やナンバリング、アクティブ・ラーニングの必要性が論じられ、インターンシップ等を通じた地域との連携にも言及された。同答申の趣旨に応えるように、本学では同年秋から教務委員会でカリキュラムのスリム化が本格的に議論されるようになった。併せて、教員の週当たり授業担当コマ数の目安も、従前の8コマから6コマへと削減が図られた。
その後の高等教育政策を振り返れば、効果のさしたる検証もないまま、矢継ぎ早に新機軸が打ち出された。翻って本学を見れば、3ポリシーの制定、CAP制やナンバリング、シラバスチェックやGPAの活用も次第に進み、インターンシップも急速に発展してきている。平成29(2017)年度からは、アセスメントポリシーの策定と、学生個人・学科・全学レベルの学修のアセスメントを連動させ、結果を可視化することにも取り組んでいる。本学における「教育の質的転換」は着実に進んできているようにも思える。
ところで、上記の中教審答申は、カリキュラムのスリム化を求める一方、「質を伴った学修時間の実質的な増加・確保」を求め、「ただ授業時数を増加させたり、教員・科目間の連携や調整なく事前の課題を過大に課したりすることは、学修意欲を低下させることはあっても、学士課程教育の質的転換に資することにはならない。」と述べている。現実を見れば、授業の事前・事後の学修時間や内容までシラバスに明記することが要求される中で、教員がてんでに課題や宿題を課すことになった。
その結果、手に負えないほどの学修負担を学生が背負いこんでしまい、それが冒頭に述べた状況を生み出したとは考えられまいか。初等・中等教育と異なり、自ら掲げる教育理念・目的に基づき、自主的・自律的にカリキュラムを編成することを特色とする大学教育であれば、無数の選択科目を開設し、課題を課すことも可能である。だが、そうした多くの選択肢の中から、学生が卒業時の目標に合わせて自ら適切に選び、学修を組み立てることを求めるのは妥当であろうか。むしろ、各ディシプリンの体系を理解し、真に専門性を備えた教員が各分野のミニマムエッセンシャルズ+αからなる道筋を示すべきであり、カリキュ ラムのスリム化とはそういう意味であろう。具体的データで示すために、各学部開設の授業科目数(共通教育科目は全学でほぼ同様のため、専門教育科目のみの統計)の平成24年当時から平成30年の今日までの変化を見れば、経済学部514→286、人間文化学部283→210、工学部297→291、生命工学部258→219、薬学121→93である。かなり減少したことが見て取れる。
しかし、これで十全ということはない。開設科目を見ると、学科によっては「なぜこの科目が必要?」と思うことも未だにある。自治や自律が機能しないなら、当該部局以外に所属し、目利きを備えた者が口を出すことも許されよう。勿論、徒に削るだけでは片手落ちである。新しい取組みに伴う科目増には柔軟に対応すべきであるし、実際にも承認されてきている。例えば,国際経済学科のトップ10カリキュラム特定科目や心理学科の国家資格取得関係科目の新設などの例である。要は、不断にカリキュラムを精査し、組織レベル、教員個人レベルで、良い意味での相互干渉を行い、本学としての体系化をさらに一歩進めることである。
最後にもう一言つけ加えておきたい。授業科目のスリム化が完璧に行われたとする。それに基づき、各科目のシラバスが詳細に記載されたとしても、実際に教室で何がどう教えられるかは見えにくいし、往々にして不問に付される。大学が緩やかな組織構造で隙間や抜け道が残されているがゆえに、創意工夫に満ちた教育やパラダイム変換を迫るような研究も生まれる余地がある。しかし、そうした特性を怠惰や手抜きの隠れ蓑にすることは厳に戒めなければならない。
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学生の活躍です。
(1)今年度第1回日本語検定で、日本語検定委員会賞奨励賞を団体賞として受賞しました。これで、平  成27年から日本語検定に団体参加して4年連続の受賞となります。入学後すぐの必修授業「日本語表現法」の学修成果でもあります。学生の皆さん、おめでとうございます。今後ますますの研鑽を! 指導の教員の皆さん、お疲れさま。

教員の活躍です。
(2)情報処理学会情報教育シンポジウム SSS2018において、情報工学科の山之上卓教授がデモポスター賞を受賞です。おめでとうございます。
詳細は学長室ブログで。

【情報工学科】山之上教授がSSS2018にてデモ・ポスター賞を受賞!


学会と賞については、こちら。
https://ce.eplang.jp/index.php?SSS2018