【プレスリリース】酵母を使って、「種とは何か?」を解明!

 単細胞生物である酵母にも性(雌雄)があります。具体的にはa型とα型という二つの細胞タイプが性フェロモンなどを介して互いにコミュニケーションをとっています。これにより細胞は接合して倍加します。ヒトなどを例にとれば、卵子と精子の間で生じる受精に相当します。このようにして、一つの生物種においては雌雄の間で遺伝子の交流を行いながら子孫を継続的に残していきます。ある種と別の種の間では生殖的な隔離が生じていますが、近縁の種の間においてはまれに種間のF1雑種が生じます。たとえば、ライオンの雌とヒョウの雄の間では、一代限りの種間雑種(レオポン)が生まれることがあります。

 生命工学部生物工学科の久冨泰資教授らのグループは、発酵食品製造に多用されるサッカロマイセス属酵母3種を使って、a型細胞とα型細胞の間における性的な相互作用を詳細に研究しました。その結果、これら3種の酵母間では種間のF1雑種が効率よく形成され、減数分裂を介した配偶子(胞子)も有意に認められました。しかしながら、形成した胞子は全く発芽増殖することができず、不稔性を示しました。こうして、F1以降の子孫継続は不可能であることを明らかにしました。また、久冨グループは、種間雑種における染色体の不安定性(不和合性)が、配偶子不稔を引き起こす要因となることを示唆しています。本研究の成果は研究界からの注目度が高く、その詳細はアメリカの権威ある科学雑誌Yeastの2021年5月号(38巻5号、326-335ページ)に掲載されました。

Postzygotic reproductive isolation among three Saccharomyces yeast species

Kousuke Toyomura, Taisuke Hisatomi

Yeast, Vol. 38, No. 5, pp. 326-335 (2021)

 

 


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