【☆学長短信☆】No.141 君たちがコロナ後の社会を創る!

 3月20日、今日は、卒業式でした。コロナ禍のため、かなり変則的な卒業式にならざるを得ませんでしたので、式辞に先立ち次のように述べました。

 

 卒業生、修了生の皆さん、こんにちは。

 式辞に入ります前に、一言、本日の卒業式、正式には学位記授与式について説明したいと思います。

 学位記授与式をどのように挙行するかにつきましては、新型コロナウイルス感染症が終息しない中、現下の状況に鑑み慎重に検討させていただきました。

 本来ならば、卒業生と修了生、保証人、来賓の方々などが、ここに一堂に会して、皆さんの卒業、修了をお祝いします。今年度もぜひそうしたいと思っていました。しかし、現在、感染防止の観点から三密を避ける事が強く求められており、大変残念ながら、卒業生と修了生、保証人、来賓の方々が、一堂に会する形は無理と判断しました。さらに、学部により午前の部と午後の部に分けて二部制とし、密を避けることとしました。

 学長の私としても大変残念な決断でしたが、まずもってこのことをご理解いただきたいと思います。

 それでは、式辞に入ります。

 

 皆さん、ご卒業・修了おめでとうございます。新型コロナウイルス感染症に翻弄された大学生活最後の1年を経て、今皆さんは、無事に、卒業生・修了生として、社会へ巣立つこととなりました。本当におめでとうございます。

 在学中にはたくさんのことを学び、経験し、多くの人間関係を築かれたことと思います。とりわけ最後の1年は、臨時休校もあり、遠隔授業もあり、卒業研究も就職活動も思うに任せず、不安やいらだちに駆られることも多かったのではないかと思いますが、それらを一つ一つ乗り越え、時にはプラスにして、本日の卒業を迎えました。それらの経験は、皆さんを一層強く賢くしたに違いありません。これらの成果を糧として、社会に出た皆さんが大きく花開かれることを、こころから期待しています。そして保証人の皆様、ここに出席はかないませんでしたが、本日は誠におめでとうございます。ご家族の皆様の長きにわたる物心両面でのご支援、とりわけ最後の1年における物心両面での細やかなご支援とご協力に、教職員一同、こころから感謝申し上げます。そして、今こうして若さと知力にあふれる若者約850人を、無事新たに世に送り出すことができますことを、皆様と共に、こころから喜び誇りに思います。

 卒業生・修了生の皆さんは、在学中には勉学を続け、本日卒業式を迎えることが出来たわけですが、それを誇りに思うと同時に、今日までの皆さんの勉学や生活を支えてくださった家族や仲間、そして社会の人々に感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。そしてこれからは、皆さんが社会に出て社会を支える側になることをしっかり自覚しましょう。1975年に開学した福山大学は、皆さんを含めてこれまでに、約38,000人の卒業生を送り出してきました。卒業生は、備後地域を中心に全国の様々な地域で、リーダーや中核となって社会を担っており、また様々な形で母校の発展に貢献しており、そこに皆さんも仲間入りするのです。卒業生は本学の宝であると同時に、社会は皆さんに大きな大きな期待を寄せています。

 さて、その社会は、現在、なかなか難しい問題をたくさん抱えています。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、社会は混乱し経済は疲弊し、その中で世界は助け合おうとするよりもむしろ分断されがちであり、民主主義の根底にあるべき寛容の精神はどこに行ってしまったのかと危惧されます。コロナ禍のみならず、地球温暖化や生物多様性の激減のような、人類に等しく降りかかっている難問は多く、それにもかかわらず世界が一致して対応する状況にはなかなかなりません。また、幾何級数的に進歩するコンピュータ技術も、遠隔授業やテレワークといった形で、今回のコロナ禍の中でも端的に示されたように、人々に多様で多大な恩恵をもたらす一方で、将来の人間の仕事のありようへの不安も生み出し、さらにコンピュータウイルスやサイバーテロといった新たなそして強大な脅威を、人工的にもたらしてもいます。このグローバル社会においては、これらの諸問題と無関係に日本の国が成り立つことも、私たち一人ひとりが社会人として生活することも不可能です。

 そして、さらに我が国は、少子超高齢化、人口減少の下でどのような持続可能な社会をどのように形作っていくのかという、これまで経験したことのない、外国にも解決のモデルのない、新しいタイプの難問に、先進諸国の中でもっとも早く直面しています。これから10年の間にも、新型コロナウイルス感染症による経済への深刻なダメージとそこからの脱却、生産年齢人口の急減と人工知能AIの発達等により、働く環境や働き方、そしてそれらにまつわる解決すべき諸問題は増大かつ激変することでしょう。

 皆さんがこれから支え創っていく社会は、このようになかなか先の見通しのつきにくいものであり、また困難の予想されるものではありますが、それだけに皆さんが大学時代に学んで身につけた知識、技能、態度、それらを総合して発揮する人間力への期待も大きいのです。さらに、このような大学での学びを土台として生涯学び続ける覚悟も必要です。コロナ禍とその後遺症に負けることなく、前を向いて知恵を絞り、人々とつながって協力し、誠実に最善を尽くして、新しい時代を創ってください。後から振り返れば、皆さんは歴史の大きな転換期を、「歴史を創りながら生き抜いた」と言えるようであってほしいと思います。

 以上、広く大学教育の成果として、今皆さんが身につけている様々な能力と態度に支えられた自信と希望を心の糧として、社会に出てもそれぞれの場所で核となる人材となり、向かってくる困難に打ち勝って、その地域を支え、そこから世界に発信し、ローカルにもグローバルにも、活躍されることを願って、もう一度、「ご卒業おめでとうございます」と述べ、式辞を終わりとします。

 

令和3年3月20日

福山大学 学長 松田文子