【プレスリリース】カニの甲羅の成分を用い米ぬかからフィチン酸を迅速回収
カニの甲羅などから作られるキトサン*1という物質を微細繊維化したキトサンナノファイバーを、化学的に架橋することにより作製した新素材ゲルを用い、米ぬかから迅速にフィチン酸を回収する技術を開発しました。これにより、米ぬかから簡単な操作で純度の高いフィチン酸*2を効率的に回収することが可能になりました。なお、本研究成果は、2021年3月号の日本農芸化学会誌Biosci Biotech & Biochemに掲載されました。
福山大学グリーンサイエンス研究センター、生物工学科の新田祥子博士研究員と岩本博行教授は、カニなど甲殻類の甲羅の成分に由来するキトサンを微細繊維化したキトサンナノファイバーを化学的に架橋し、様々な機能を持つヒドロゲル*3を創製してその機能開発を行ってきました。このゲルはリンをよく吸着することから、米ぬかからフィチン酸を回収できないか試みたところ、有害な化学物質をあまり使わずに高収率で高純度のフィチン酸を回収できることがわかりました。フィチン酸はミネラルの吸収を阻害する一方、抗酸化やガン、結石などの予防効果も報告されており、サプリメントとしても市販されています。キトサンナノファイバーヒドロゲルは多孔質な内部構造を持ち、タンパク質の吸着や細胞足場への利用など様々な機能が注目されています。
*1 生体適合性、生分解性、低毒性などの性質を持ち、組織工学、再生医療などの用途に使われる。
*2 イノシトール6リン酸。植物の主要なリン貯蔵形体で、穀類や豆類に多く含まれる。
*3 水を多く含むゲルで、寒天やゼリーもこの一種。
キトサンナノファイバーヒドロゲルの電子顕微鏡写真
Nitta S and Iwamoto H(2021)Rapid recovery of phytic acid from rice brans using chitosan nanofiber-based porous hydrogels. Biosci Biotech Biochem 85(3): 481-487 https://doi.org/10.1093/bbb/zbaa087
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【担当者】岩本 博行(生物工学科、グリーンサイエンス研究センター)
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