【プレスリリース】米粒の大きさの糞からネズミの食性を解明

同じ森に住む2種類のネズミを対象に、糞の中の植物の種類(つまり食べた植物種)をDNA分析により調査することで、2種類のネズミが森の資源をうまく分けて競争を避けている様子を明らかにしました。新型DNAシークエンサーでネズミの食性を解明した日本初の研究になります。本研究成果は2018年6月14日にアメリカ哺乳類学会誌Journal of Mammalogy(オンライン版)に掲載されました。

日本固有の2種類のネズミ(アカネズミとヒメネズミ)の糞を対象に、新型DNAシークエンサーである次世代シークエンサーを使った分析を行い、2種類のネズミの食性の違いを明らかにしました。アカネズミとヒメネズミは日本全土の森で古くから共存しているネズミですが、森の中の限られた資源をどのように分けて競争を避けているのかについては謎に包まれていました。従来、ネズミの食性は、糞に含まれる食べ物の残骸を顕微鏡観察する手法がとられてきましたが、糞の大きさは米粒大という非常に小さなものですので、この手法には限界がありました。そこで、糞の中に含まれる植物が持つDNAを分析することで、2種類のネズミが食べた植物を明らかにすることを試みました。その結果、アカネズミはドングリが実るブナ科の植物を集中的に食べる一方で、ヒメネズミは、ブナ科以外の高木種の植物も多く食べていることが明らかとなりました。このことは、地上活動の多いアカネズミと木登りを得意とするヒメネズミの行動パターンと一致します。本研究で確立した手法は、夜行性であることが理由で“食べる”という行動を直接観察することの難しい哺乳類全ての種に応用することのできる点が画期的です。また、本研究の知見は、森の生物多様性がどのように保たれているのかを解明するうえで重要な手がかりになります。

Sato JJ, Shimada T, Kyogoku D, Komura T, Uemura S, Saitoh T, and Isagi Y (2018) Dietary niche partitioning between sympatric wood mouse species (Muridae: Apodemus) revealed by DNA meta-barcoding analysis. Journal of Mammalogy https://doi.org/10.1093/jmammal/gyy063 福山大学、森林総合研究所、京都大学、北海道大学との共同研究


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【担当者】佐藤淳(生物工学科、グリーンサイエンス研究センター)
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【E-mail】jsato@fukuyama-u.ac.jp(海外留学中のため2018年8月までメールのみ受け付け可)