生命工学部

Faculty of Life Science and Biotechnology

【生物科学科】枯草菌を使って安全で効率的なタンパク質生産を!新しいバイオ技術が学術雑誌に掲載!

2023年度に本学大学院(工学研究科 生命工学専攻)を修了した桑原佑奈さんが、広岡和丈教授の指導のもとで行った研究成果が、国際的な学術雑誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」に掲載されることになりました(論文タイトル:T7 expression system in Bacillus subtilis utilizing the rhiL promoter responsive to pectin and glucose)。

今回の研究では、「枯草菌(Bacillus subtilis)」という安全な微生物を使って、ペクチン(リンゴなどの果物に含まれる天然成分)を加えることで目的のタンパク質を効率よく作れる「T7発現系」と呼ばれる仕組みを開発しました。この方法では、グルコース(糖)を加えることでタンパク質の生産をストップできるため、「いつ」「どれくらい」作るかを細かくコントロールできます。

ペクチンやグルコースはどちらも毒性がなく、安価で水にもよく溶けるため、この発現系は医薬品や酵素などの有用なタンパク質を、安全かつ効率的に作る手法として、今後の産業利用も期待されています。

この成果は、2023年に発表された「フラボノイド誘導型T7発現系」に続くもので、生物科学科の学生たちが最先端のバイオ技術に挑戦して成果を出していることを示しています。今回の研究には、学部4年生の学生も研究室の一員として参加しており、実践的な研究に取り組めるのが生物科学科の魅力の一つです。

本研究で開発したタンパク質発現システムの仕組み

この図は、ペクチンを加えるとタンパク質を作り始め、グルコースを加えると作るのを止める、スイッチのような働きをする新しい「タンパク質発現システム」のしくみを示しています。

 

今回の研究では、ペクチンでON、グルコースでOFFになる遺伝子の制御領域(1a)や、その改良型(1b)を「T7 RNAポリメラーゼ」という酵素の遺伝子と組み合わせて、枯草菌の染色体に組み込みました。さらに、蛍光タンパク質(EGFP)の遺伝子を、T7プロモーターというスイッチの下に配置したプラスミドを細胞に入れ、発現の変化を調べました。

右下の図は、SDS-PAGEという実験方法で、実際にペクチンを加えると蛍光タンパク質が作られ、グルコースを加えると作られなくなることを確認した結果です。

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