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心理学科

向井 智哉(むかい ともや)

職 名 講師
学 位 博士(文学)、法務博士
専門分野 法と心理学、社会心理学
担当科目 心理学研究法、基礎ゼミ、認知心理学課題実習 など
メッセージ 私たちが生きる社会には、様々な差別や偏見が存在します。特に、犯罪をした人や外国人などは差別や偏見の対象とされてしまうことが多く、これらの人々の社会復帰や包摂をどのように進めていけばよいかは社会的にも学術的にも大きな課題です。このような研究テーマについて、主に心理学や法律の知識を基に研究を行っています。

刑罰を求める心理

テレビや新聞で「凶悪な」犯罪が報道される度に、「犯罪者に厳罰を」という声が広く聞かれるようになります。確かに犯罪が他人の権利や自由、さらには命さえをも侵害する行為である以上、犯罪をおかした人に適切な罰を与えることは必要不可欠なことです。しかし他方で、一度犯罪をした人であってもその多くは(死刑となるごく少数の人を除けば)いずれ社会に復帰します。このようなことを考えれば、ただ単に犯罪をした人に罰を下せばそれで事が済むと考えるのは一面的と言わざるを得ないように思います。それにもかかわらず、なぜ多くの人は犯罪者に対して厳しい刑罰を求めるのか。これが主な研究テーマの1つです。

差別・偏見の心理

差別・偏見は多くの社会に存在する現象です。極めて残念なことに、日本もその例外ではなく、様々な形の差別や偏見にさらされている人たちが存在します。上で述べた犯罪をした人だけではなく、異なる国の人々や異なる宗教を信じる人々など、様々な人々についての差別や偏見をどのように低減することができるのかというテーマについてもこれまで研究を行ってきました。

個別の立法の検討

2000年代の日本は「刑事立法の時代」と言われます。これは、これまで「犯罪」とされていなかった行為を処罰できるようにしたり、すでに「犯罪」とされていた行為をより厳しく罰することができるようにしたりする立法が多く行われるようになったという意味です。このような立法の例として、たとえば皆さんに関係が深いものとしては、有償著作物(漫画や音楽など)の無許可でのダウンロードが刑罰の対象とされるようになったことなどがあります。その他にも、強制性交等罪の不同意性交等罪への改正、少年法の改正など厳罰的な立法は枚挙に暇がありません。これらの立法が本当に人々の意識に合致したものとなっているのかについても心理学と法律の観点から研究を行っています。

国境を超えて

(本文) 「グローバル化」という言葉が広く知られるようになってから長い時間が経ちましたが、日本の犯罪・刑罰研究は十分に「グローバル化」してはいないようです。つまり、日本の犯罪・刑罰研究は主に日本のみに焦点を当てており、他の国・社会・文化との比較は十分に行われていません。しかし、社会がグローバル化する中で、他の国の制度を参照する必要性はますます強まっています。日本の国境を越え、他の国・社会・文化に属する人々と日本に住む人々の意識の相違を検討することも研究テーマの1つとしています。