人間文化学部

Faculty of Human Culture and Sciences

【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

心理学科向井です。本日は、福山大学心理学科の学生を中心として行われた「暴力防止授業」の様子を赤澤淳子教授からご紹介いただきます。

 


2025年7月16日(水)の5限、6限に、心理学科の発達心理学研究室所属の3年生7名が、「暴力防止授業-アクティブ・バイスタンダーを目指そう」を福山市立福山高等学校の6年生193名を対象として実施しました。この授業も今年で7年目になります。

発達心理学研究室所属の3年生は、2019年度から、福山市立福山高等学校等の高校生を対象として、「デートDV予防授業」や「暴力防止授業」を実施してきました。2025年度は「暴力防止授業」を実施し、「アクティブ・バイスタンダー(active bystander)」について取り上げています。アクティブ・バイスタンダーとは、暴力を防止するために、暴力に介入していく「介入者」という意味です。自身が被害者・加害者にならないだけでなく、被害者を援助し、加害者の暴力を止めることができるようなアプローチについて、授業では説明しました。

授業は大きく3部構成となっており、第1部の「暴力の境界(バウンダリー)」について、補助資料への穴埋めなどを指示しながら、中元結愛さん(発達心理学研究室3年;広島県立大門高等学校出身)が、暴力の境界と種類について説明しました。暴力の種類では、多種多様で暴力とは認識しづらい精神的暴力や、最近増加しているSNSを用いた暴力の種類をいくつか取り上げ伝えました。第2部の「暴力を防ぐために-他者視点」は、石井史香さん(発達心理学研究室3年;広島県立福山商業高等学校出身)が、暴力の境界を考えるワークを行いました。「暴力かどうか判断するのは自分ではなく、その行為を相手がどう感じるか」というような「他者視点(共感性の認知的側面)」を持つことが、暴力の予防において重要であると説明しました。最後の第3部「暴力を防ぐために-アクティブ・バイスタンダー(介入者)を目指そう」では、暴力の被害者や加害者から実際に相談を受けた時の対応法について杉原健太さん(発達心理学研究室3年;広島県立福山明王台高等学校出身)が説明し、高校生と大学生で被害者と相談者役のロールプレイを行いました。

 

<授業を行っている様子>

 

以下は授業を行った3名の感想です。

石井 史香さん

「私は、スライドの「他者視点」についての説明を担当しました。高校でこのような授業を行うのは初めてだったので、最初はとても緊張しました。しかし、高校生が暴力について真剣に考え、自分の意見を文章にしたり、発表したりする姿勢が見られて、非常に嬉しく感じました。私自身もこの授業を通して、改めて暴力について深く考えることができました。発表を通しての学びはもちろん、ゼミの仲間とチームで協力しながら授業を進める経験も、とても貴重だったと感じています。」

杉原 健太さん

「今回の暴力防止授業は、高校生を対象に授業を行うという、私にとって未知の体験でした。初めはうまく進められるかどうか不安で緊張していましたが、高校生が真剣に授業を受け、グループワークにも真摯に取り組む姿を見て、安堵するとともに深く感動しました。また、高校生ならではの視点から生まれる意見や考えに触れることで、自分自身の知識や視野を広げることができました。本授業は、私にとって忘れられない貴重な経験となりました。」

中元 結愛さん

「この度は、高校生に向けた暴力防止授業という貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。ロールプレイの場面では、具体的な例について真剣に考え、自分の意見を積極的に発言してくれる高校生の姿が非常に印象的で、素晴らしかったです。日常の何気ない言動の中にも、誰かを傷つけてしまい、暴力につながるものがあることを、高校生のみならず私自身も改めて認識することができ、有意義な授業となりました。」

 

<高校生とロールプレイをしている様子>

 

また、授業を受けた側の高校生が以下のような感想を書いてくれましたので、紹介します。授業内容や方法、また、大学生が行う授業について嬉しいコメントが沢山ありました。

 

「スライドが端的にまとまっていて理解しやすかったです。被害者や加害者への接し方もあまりわかっていなかったので、知ることができて良かったです。」

「精神的暴力の例が出ている行動や言動は、この授業を受けなかったら、暴力の一種であるということはわからなかったと思う。良い機会になったと思った。」

「ただ話を聞くだけでなく、こちらも実際に考えてみることによって、楽しい授業となった。」

「心理面から暴力について学び、複雑な社会であるため、他者視点が大切なんだとわかった。」

「普段の授業では教えてもらうことのない内容を知ることができてとてもためになりました。今日学んだことを活かして物事を他者視点で考えたいと思います。」

「ロールプレイングを用いたアクティブ・バイスタンダーの実演が分かりやすく、おもしろかったです。暴力の境界は人それぞれなので、そこについて考えていきたいと思いました。」

 

高校での暴力防止授業を通じて、私自身、日頃の卒論指導の場面ではなかなか見ることのできない学生のコミュニケーション力やリーダーシップの発揮を目の当たりにし、感心させられることが数多くありました。このような経験を通して、学生自身の自己効力感が高まり、一つ成長を遂げたという実感を得ることができました。

この度の授業を実施する機会をいただき、福山市立福山高等学校の脇谷靖伸校長先生を始めとし、今回の授業を企画してくださった保健部主任の和佐田知子先生に心よりお礼申し上げます。

 

<高校の先生方と暴力防止授業メンバー>

 

学長から一言:心理学科の発達心理学研究室所属の3年生の皆さんが、中高一貫校である福山市立福山高等学校の6年生の生徒さんに対して行った「暴力防止授業」。身の回りで起こるさまざまな暴力行為に関して、加害者はもちろん、被害者にならないようにしたり、事案に直面したら積極的に防止したり、介入したりする上での注意点を、おそらく盛り沢山に伝えることができたことでしょう。お疲れ様でした。

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