人間文化学部

Faculty of Human Culture and Sciences

【心理学科】学部生との共同執筆論文が公開されました

【心理学科】学部生との共同執筆論文が公開されました

心理学科向井です。私たちの研究成果について報告します。

このたび、私たちの研究「刑事司法に対する態度と素朴な自由意志信念の関係」が、日本パーソナリティ心理学会の学会誌『パーソナリティ研究』に掲載されました。この研究は、心理学科の学部3、4年生(当時)の方と共同で行ったもので、学生たちはデータの分析、考察の執筆に至るまで、研究の各段階に積極的に参加してくれました。

 

 

どんな内容の研究なの?

私たちの研究では、「人は自分の意志で行動を選んでいる」と信じる気持ち(=自由意志に対する信念)が、犯罪や刑罰に対する考え方とどう関わっているかを調べました。

たとえば、「自分の意志で悪いことをしたのだから、厳しく罰せられて当然だ」と考える人もいれば、「人は環境や育ちに影響されるから、罰だけでなく立ち直る支援も必要だ」と考える人もいます。

このように、犯罪をした人に対する見方は、私たちがどれだけ「自由に決めて行動している」と信じているかによって変わってくるのではないか、というのが今回の研究の出発点です。

インターネット調査で200名以上の方に協力していただき、「自由意志に対する考え方」と「犯罪者に対する考え方(厳しく罰するべきか/社会復帰・更生を支援すべきか)」との関係を調べました。その結果、「人は自分の意志で行動を決めている」という信念が強い人ほど、犯罪者に厳しい処罰を求めやすい傾向が見られました。また、「人は周囲の影響に縛られず自由である」と考える人は、処罰だけでなく社会復帰・更生の支援にも肯定的でした。

 

どんな意味がある研究なの?

この研究は、今後の刑事司法のあり方を社会全体で考えるためのヒントになります。たとえば、裁判員制度のように一般の人々が司法に関わる機会が増えるなかで、私たち一人ひとりの「人間観」や「行動への理解」が、どのように判断に影響するかを明らかにすることは、とても重要です。

厳罰か更生支援かという議論は、単なる制度の話ではなく、私たちが「人の行動や責任をどう見るか」という深い問いとつながっています。そうした背景を理解することで、より納得のいく刑事政策や教育、社会制度が考えられるようになると期待しています。

今後に向けて

心理学科では、今後も学生と一緒に、社会とつながるテーマを扱った研究に取り組んでいきたいと考えています

心理学は、人のこころや行動を科学的に理解する学問ですが、それを社会の中でどう活かしていくかが、これからの大きな課題だと感じています。

 

学長から一言:心理学科の向井智哉講師と学生諸君が取り組んだ人の心の深層に迫る研究成果が全国学会の専門誌に掲載されたという喜ばしい報告に、こちらまで嬉しくなりました。心の痛む犯罪が次々と起こる昨今、罪を犯した人に対する見方は、われわれがどれだけ「自由に決めて行動している」と信じているかによって変わってくるか否かを実証した研究は、現実社会で大いに役立つことでしょう。これからも意義深い研究成果が続々と生まれることを期待しています。

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