【建築学科】高校生デザインコンペ2019 審査講評
高校生デザインコンペ2019 課題 :「楽しき住家」再考
最優秀
該当なし
部門B 図面・CG等によるビジュアル表現による設計の提案
優秀
『 人を繋ぐ5食のダイニング 』 安井 一真(静岡県立科学技術高等学校)
佳作
『 4つの穴とのつながり 』 西川 晃清(高知県立高知工業高等学校)
『「for GroWings」~育て合い羽ばたいていくものたちへ 』 小山 桃佳(東京都立田無工業高等学校)
『 五感で呼び込むダイニング 』 海野 紘汰(静岡県立科学技術高等学校)
今年度の課題タイトルは、‘「楽しき住家」再考’、サブタイトルとして「食事空間を中心とした住まいの提案」です。応募要項にも記載されている「子供たちが家庭の中で夢をはぐくみ、人間関係が実現できる、住宅の提案」について練られた様々な作品が寄せられました。
今回は残念ながら最優秀案は選定できませんでしたが、「人を繋ぐ5食のダイニング」が優秀案となりました。1日に朝、昼、晩の3回食事をするということが習慣化しているため、その既成概念を見直し、1日の食事の回数を増やすことで、生活行為の中での食事の位置づけをあげ、家族の輪から地域の輪に繋げることがコンセプトとして提案されています。中央の屋外デッキと家庭菜園のスペースを中心に配置し、それを囲うように建物をコの字型にし、デッキに面して小さなファミリー用のDKと家族だけでなく客人も使えるようなリビングルームも兼ねられる広いDKが設けられています。中央のデッキに設けられた大きなテーブルでは、家族と共に地域の人たちも食事することができ、その床レベルを1階より少しあげ見晴らしにも配慮した快適な空間となっています。また、デッキの床レベルを上げることによって、デッキとそれに面したキッチンとの視線の高さをそろえ、アイコンタクトができるような計画となっています。キッチンでの作業時の向きがダイニングテーブル側になり、キッチン周りスペースのとり方を含め料理がし易いかという疑問点も指摘されましたが、平面計画の明快さとともに、屋外空間と室内との関係、地域社会との関係、さらには床レベル差を利用した空間的配慮等の提案が評価され、優秀案に選定されました。
佳作として、「4つの穴とのつながり」、「for GroWings~育て合い羽ばたいていくものたちへ~」、「五感で呼び込むダイニング」の3作品が選定されました。
「4つの穴とのつながり」は、建物1階程度のレベル差のある敷地を設定し、建物の大部分は地下に設け、屋上を緑化してランドスケープ化しています。さらに、ドライエリア形式の4つの庭を設け、それらの庭に面して各部屋を配置するという地上1階地下2階建ての非常に特徴的な作品です。ファミリー用の広いダイニングと、大きな中庭内に大人数で食事ができるスペースが設けられ、生活の各場面に応じた食事空間が提案されています。大きな中庭への階段の狭さやアクセスなどについての検討が望まれますが、空間的に魅力的な提案です。
「for GroWings~育て合い羽ばたいていくものたちへ~」は、地域の子供たちに農作物や家畜等を育て、食料を作る体験の場をつくるとともに、家庭や学校以外の子供たちの集いの場を設け、みんなで食事ができる施設を提案しています。要求条件を、「子供たちが夢をはぐくみ、人間関係が実現できる、施設建築の提案」と解釈し、農作物の生産、加工、販売など管理運営についての提案と、きめ細かなドウローイングとプレゼンテーションが評価された作品です。
「五感で呼び込むダイニング」は、1階にダイニングとキッチンを設け、その上部を吹き抜けとし、2階、3階の寝室をその吹き抜け空間に面して配置するという立体的構成を行っています。吹き抜け空間があることによって、1階ダイニングの雰囲気、気配や音などが2階、3階の寝室にも伝わるような効果を意図して計画されています。食事空間としてのダイニングそのものに着目した作品が多い中で、食事空間と寝室等の他の部屋との関係に着目した提案が評価された作品です。
部門A 文章とスケッチ・写真等を主体としたアイデアの提案
優秀
『 食事空間を中心とした住まいの提案 』 高林 優太(静岡県立浜松工業高等学校)
『 家族の団らんで楽しい食事を 』 市川 結渚(静岡県立浜松工業高等学校)
佳作
『 会話で楽しい食事空間 』 沖山 暖和(静岡県立科学技術高等学校)
「最優秀」は選定されませんでしたが、「優秀」に2作品、「佳作」で1作品が選定されました。
「優秀」に選定された作品は、「食事空間を中心とした住まいの提案」と「家族団らんで楽しい食事を」です。
「食事空間を中心とした住まいの提案」は、「ダイニング」を住まいの中心に配置し、どの個室空間からも見渡せる提案です。ダイニングの壁に「可動式パーティション」を採用し、ひとりひとりの視線からのつながりを演出しています。また、平面計画は、渦巻き状が採用され、外部からの光を取り入れます。応募者は、「個人のひきこもり問題」に注目し、食事空間を中心とした家族団らんの提案が大変評価できます。
「家族団らんで楽しい食事を」は、「食生活の多様化」について丁寧に資料調査を行っています。調査の結果、共食の割合は、朝食で約50%、夕食で約56%です。つまり、「共食」ではなく「個食」が約半数を占めることになります。では、「共食」のメリットは何でしょう。その食事の中での会話、食事のマナーを知るのも「共食」の良い点ですね。何よりも、食事において「感謝」の心をもった会話が重要と指摘します。応募者は、家族の食事空間に「土間」や「囲炉裏」の提案をしている。家族で囲炉裏を囲み、会話が生まれ、旬の食材で季節を感じます。昨今希薄になりつつある「家族関係の再構築」を「囲炉裏」を囲んだ団らんからつくる提案です。
「佳作」に選定された「会話で楽しい食事空間」は、「会話」の大切さについて注目した作品です。会話はどのように生まれるかの検討を行い気軽にホームパーティーを開く提案が行われています。かつての台所にみられた「土間」を上手に活用し、後片付けなどに配慮されています。人を招きいれるさまざまな工夫がされ、プライベートとの区別も明確となっています