工学部

Faculty of Engineering

【情報工学科】授業研究の報告:AI時代の情報工学教育

【情報工学科】授業研究の報告:AI時代の情報工学教育

福山大学では、教員が互いの授業を参観し、観察記録や意見交換を通じて相互にフィードバックを行う「授業研究」を実施しています。情報工学科でも教員11名が参加し、AI技術を活用したプログラミング教育について模擬授業と検討会を実施しました。

情報工学科 学科長の金子教授から、模擬授業の内容について報告します。(投稿は学科のFUKUDAI Magメンバーの天満)

 


(1)滑川裕介准教授:AIを使った新しいプログラミング

滑川裕介准教授:AIを使った新しいプログラミング

滑川裕介准教授:AIを使った新しいプログラミング

これまでプログラミングには、コンピュータへの命令を書くための特別な言語の習得が必要でした。しかし最近では、AIの進化により、普段使っている日本語で指示を出すだけでプログラムが作成できるようになってきています。

AIを搭載したプログラム作成ツールは、文章を書くときに次の単語を予測して提案してくれるように、プログラムを書くときにも次に書くべき内容をAIが提案してくれます。また、プログラムの間違いを見つけて修正方法を教えてくれます。比較的簡単に質の高いプログラムを作成できることが紹介されました。

授業では「雰囲気コーディング」という新しい手法が実演されました。これは、日本語で「こういうことをしたい」と伝えるだけで、AIがプログラムを自動的に作る方法です。実演では、政府の統計サイトから各地域の月ごとの電気代データを集め、その変化の傾向をAIに分析させる様子が示されました。滑川准教授は、このような雰囲気コーディングが主流になり、AIに適切な指示を出す技術が必須の能力となる将来展望を示しました。

(2)天満誠也助教:ロボットを使った実践的な学習
天満助教の授業では、入学直後の学生を対象に、「Edison」という教育用ロボットを使った演習が紹介されました。

天満誠也助教:ロボットを使った実践的な学習

天満誠也助教:ロボットを使った実践的な学習

Edisonは小型の二輪ロボットで、レゴブロックと組み合わせて使えます。光センサーや赤外線センサーなどが備わっており、プログラミング学習に適しています。
学生はAIの支援を受けながら、ロボットが床に引かれた線に沿って走る課題に取り組みます。ロボット底面のセンサーが床に光を当て、その反射具合から床の色の明るさを読み取り、その情報を元に左右のタイヤの速度を調整することで、線に沿って走ることができます。この課題を通じて「PID制御」という、あらゆる自動制御で使われている技術を学びます。これは、エアコンの温度調整や自動車の速度調整などに使われる基本的な仕組みで、目標とする状態と現在の状態の違いを計算しながら、適切な操作量を決める手法です。

授業研究を通じて共有された認識として下記の内容が挙げられます。

(1)プログラミングの基礎教育の重要性
条件によって処理を変える「条件分岐」や、同じ処理を繰り返す「繰り返し」、データを一時的に保存する「変数」といった基本概念をしっかり習得した上で、AIを活用することが適切であると確認されました。

(2)教育におけるAI活用の方向性
プログラミング教育だけでなく、データ分析や理論の授業などでもAIの活用が重要であることが共有されました。学生がAIに質問してより深い説明を求めたり、AIを演習ツールとして活用したりなどが考えられます。

(3)AIへの指示の出し方についての教育
AIに、どのような言葉で、どのような順序で指示を出せば望む結果が得られるのか、その方法を学生に教える必要があることが確認されました。具体的な教育内容については、引き続き検討されることになりました。

(4)学生同士の相互評価の有効性
授業の内容によっては、学生同士がお互いの学びを共有し、評価し合うことが有効です。お互いの工夫や気づきを知ることで、学びが深まり、互いに高め合うことができます。

AI時代の情報工学教育では、基礎教育を維持しながら、AIというツールを効果的に組み込んだ教育設計が求められます。今回の授業研究は、そのための具体的な方向性を見出す貴重な機会となりました。

 

学長から一言:情報工学科の教員の皆さんが行ったのは、内容理解が十分な共通領域の同僚の前で模擬授業を実施し公開するタイプの授業研究。授業改善に向けた努力に敬意を払います。ただ、授業研究の意義を日頃から唱え続けている身としては、学生の前で行う平素の授業を同僚に公開し、その後に授業観察者の間で忌憚のない意見交換を行うことの重要性を強く感じます。授業中の学生への発問、学生からの質問への対応など、生の授業でしか見られない教え方の妙や反対に足らざるところが浮き彫りになるからです。

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