学部・学科・大学院

経済学科

北村 友宏(きたむら ともひろ)

職 名 講師
学 位 博士(経済学)
専門分野 交通経済学、産業組織論、応用計量経済学
担当科目 経済統計学Ⅰ、経済統計学Ⅱ、計量経済学、ミクロ経済学入門、教養ゼミなど
メッセージ 公益事業のなかでも、鉄道と上下水道に焦点を当てて研究をしており、主に計量経済学の手法を使って分析しています。この手法を使えば、現実の財務の数値データをもとに、費用関数などの具体的な関数形を近似的に推定することができます。

日本の鉄道事業は運賃で限界費用をカバーできているか?

日本では、鉄道の運賃は政府が規制をかけていて、運賃の上限額を新たに設定したり変更したりするには、政府の認可が必要です。そして、認可を受ければ届出だけで、その上限額を超えない範囲で鉄道事業者が運賃を設定・変更できます。
また、生産量を追加的に1単位増やすと費用が何単位増えるかを表すものを限界費用といいます。鉄道の場合は、例えば追加的に乗客1人を1km輸送すると費用が何円増えるかを表すものが限界費用となります。
では、日本の鉄道は、政府による規制のかけられた運賃で限界費用をカバーできているでしょうか。特に経営環境の厳しい地方部の鉄道事業者のデータを用いた分析の結果、地方部のほとんどの鉄道事業者では、運賃で限界費用をカバーできていることが明らかになりました。

2017年9月8日、国立台湾大学で開催されたThe 7th Asian Seminar in Regional Scienceにて、この研究の初期的な分析に関する報告を行いました。

鉄道の枕木をコンクリート化すると線路メンテナンス費用をどの程度削減できるか?

鉄道の線路の下に敷いてある枕木を木製のものからコンクリート製のものに交換すると、単に強度が増して安全性が向上するだけでなく、線路のメンテナンス頻度を削減することができ、それが費用の削減につながるとされています。
では、具体的に、費用をどの程度削減することができるでしょうか。日本の地方部の鉄道事業者のデータを用いた分析の結果、路線距離に占めるコンクリート製枕木採用距離の割合を毎年1パーセントポイントずつ増やしていくと、18年間で線路メンテナンス費用が平均して0.714%削減されることが明らかになりました。

市町村合併により1つの下水道事業体が保有する下水処理場の数が増えると、規模の経済性がどのように変化するか?

この研究は、国内の他大学の先生および海外の先生と共同で進めています。
日本の下水道は、ほとんどが市町村によって経営されています。近年では市町村合併が進み、それに伴い合併前の市町村が経営していた下水道事業体同士が統合することも進んでいます。このとき、通常は、全体としての下水処理場の数自体は変化しません。そのため、市町村合併により下水道事業体同士が統合して1つになると、その1つの下水道事業体が保有する下水処理場の数が増えることになります。
また、生産量が増えると単位当たり平均費用が次第に減少する性質を規模の経済性といいます。下水道の場合は、例えば処理水量などが生産量に相当します。 日本の下水道事業者のデータを用いた分析の結果、市町村合併により1つの下水道事業体が保有する下水処理場の数が増えると、規模の経済性が小さくなることが明らかになりました。

2019年6月13日、ロンドン大学で開催されたThe 16th European Workshop on Efficiency and Productivity Analysisにて、この研究の初期的な分析に関する報告を行いました。