
【税務会計学科】学生をわくわくする未来 へいざなう連携授業
税務会計学科のお勧め授業「地域調査」が9年目を迎えようとしています。
地元企業とのコラボ連携授業である「地域調査」の8年目の飛躍について、担当の張楓教授から報告が届きましたので、学長室ブログメンバーの堀田が投稿します。
「地域調査」は、備後地域の経済・社会の過去・現在・未来に関する疑問を、学生自身による学外訪問調査により解決することを目的とするアクティブ・ラーニングです。
学生を主体とする演習形式のなかで、事前学習や訪問調査、発表、討論を実施することにより、地域への関心を高め、専門科目への橋渡しとしても期待されています。
この授業の実施にあたって、(株)ププレひまわり、(株)エブリイホーミイホールディングスという地元小売企業の2社が、相互協力による地域課題解決を目的として福山大学と締結した「協働事業協定」に基づいて地域調査の実践に参画いただいています。
連携授業の狙いは、受講生が講義を通じて地域経済を支える地元企業に対する理解をより深め、高付加価値商品・サービスの提案力を身に付けるとともに、能動的学習能力の向上を図ることにあります。

2024年4月に実施した「世羅農場エブリィふぁーむ」の見学
これまで学長ブログでも報告しているように、2017年度からスタートした連携授業は、「模索期」(2017~19年度)、「受難期」(2020~22年度)を経て、2023年度から「飛躍期」に突入しつつあると、授業担当者として連携企業側と受講生の意欲や満足度に鑑みながら、強く実感しています。
その根拠は、「模索期」以降、とりわけ「受難期」において、新型コロナウイルス感染症が危惧される中においても、大学側と(株)ププレひまわり、(株)エブリイホーミイホールディングス両社がともにあきらめることなく、危機を学びの好機ととらえて、学生の意欲を高められるように、さまざまな企画を練り上げ、指導を工夫したことから、産学間の相互信頼関係が一層強化されたことにあります。

「世羅農場エブリィふぁーむ」の担当者の説明を聞く学生
まず、エブリイ社との前期連携授業では、「エブリイの現在の取り組み(①地元生産者様との取り組み、②「食」に関するイベント企画・運営、③自社農場の未来へ向けた取り組み、④エブリイで働くとは)を調べ、皆さんだったら今後どのように発展させたら良いか、アイディア(イベント企画など)を考えてください」というきわめて挑戦的かつ具体的課題が学生に与えられていました。
学生は5つのグループに分けて、具体的な提案に向けて見学、グループワーキングを行いました。
最終プレゼンでは、「子ども食堂」をはじめ、「スーパーの料理本」、「家族連れイベント開催」などの具体的提案が本社で披露されました。
たとえば、「地元生産者様との取り組み」を選んだグループは、「野菜本来の美味しさを伝える」ことと「出品できる環境の提供」を特徴としつつ、地域農業活性化にも貢献できる「地縁マルシェ」を提案しました。
「食に関するイベント企画・運営」グループは、現在のエブリイ社での取り組みをふまえつつ、野菜の育て方講座や料理コンテスト、お皿作り体験などを具体的に提案しました。
さらに、「エブリイで働く」グループでは、エブリイで働く社員へのインタビューやさまざまな文献に依拠しながら、社員が感じられた働き甲斐や社内独自のワークライフバンスを含むさまざまな制度などをまとめたうえで、「給料UPにつながるプレゼン大会」や「副業可能」、「店舗間の研修制度」、「社員寮の設置」、「社内SNSの作成」など多様な新規提案が行われました。
そのいずれもしっかりとした事前調査とグループディスカッションにより練られたきわめて優秀な提案と高く評価されています。

エブリイ本社でのプレゼンテーションの様子
つぎに、ププレひまわり社との後期連携授業では、前年度につづき、第2弾として斬新な課題である「ベンチャーチャレンジプログラム」に対して学生に挑んでもらいました。
具体的には、「事業の成り立ち(マーケティングや経営戦略、顧客の消費(購買行動)など)を自分が考案したビジネスモデルを提案しなさい」というものでした。
提案にあたって、具体的に「何を―事業内容(需要の検討)」、「誰に―ターゲット・対象者(顧客の課題解決)」、「いつ―営業時間」、「誰が―運営者(営業者)」、「どこで―展開エリア・場所」、「どうやって―販促・告知方法」など問題点を提案に組み込みながら、最終的に「どの位の売上を見込むか」また「利益はどうやってどの位だせそうか?」を打ち出すことは会社から具体的に求められています。
実際、2024年度の最優秀提案「企業主導型保育園事業」はププレひまわり社の2024年度新ビジネスコンテストにかけられることとなっていますので、ププレひまわり社から期待度は非常に高いと言っても過言ではありません。
ハードルの高い課題であったにもかかわらず、6チーム(瀬野川店、舟入店、海田東店、新涯店、蔵王店、高須店)は実にすばらしいベンチャービジネスを提案しました。
具体的には、「AIを導入したアプリ開発」、「季節ごとの健康ニーズに合わせたケアセット:健康を意識した社会を目指して」、「健康ホテル事業」、「VTuber」、などであったが、「AIを導入したアプリ開発」は優秀賞を獲得しました。
また、「VTuber」を提案したグループのなかで一貫してリーダーシップを発揮した留学生T君は、特別賞を受賞しました。

ププレひまわりとの連携授業の様子
優勝チームのリーダーの税務会計学科3年生T君は、以下のようなコメントを寄せてくれました。
やや長文となりますが、ご紹介します。
「今回の地域調査の授業はとても満足いく授業内容だったと思います。
今回は、たまたま、自分のアイディアが中核となり、自分のグループが表彰されましたが、結果と関係なく、地域調査は自分の成長に繋がった授業であったと確信しています。
成長に繋がった点は具体的に、①企業の関係者と一緒に新規事業計画を立てたこと、②各々で考えた新規事業案をグループで1つにまとめたこと、です。
前者については、学生の間に新規事業案の計画し、それをプレゼンする機会だけでなく、それを企業と連携して実行していくこともこれまでありませんでした。
たとえば、自分のアイディアについて、企業の関係者が実際、どのような視点をもって考え、まとめていくのかを知ることができ、それを通して、自分がアイディアを考える際に不足しているところを知ることができ、それを補うことにより完成度の高い新規事業案を作ることができました。
後者については、各自でアイディアを考えた後にグループをつくり、そのグループでアイディアを1つにまとめたうえ、プレゼンしていくという、通常、半年以上の時間を要していたものを短い期間で完成させていくことが求められたことから、グループ内での1回1回のディスカッションの重要性が増し、色々の考えを1つの方向にまとめていくことが想像以上に難しかったですが、ひとつずつアップデートしながら、最終的に良いものができました。
以上のように、地域調査は自分の成長に大きく繋がった授業でした。」

ププレひまわり社から賞品をうけとる学生
最後に、特別賞を受賞した留学生のT君の感想文をお届けします。
「地域調査での経験は私にとって非常に感慨深いものがありました。
この場を借りて、先生および「ププレひまわり」の担当の方々に心から感謝申し上げます。
最初に教室に入って教壇の前に立っていた5名の方々が、まるで先生のように見えた時に大変、大きな不安と期待を抱きました。
ある意味では、そうした思いから地域調査という実にユニークな学びの旅がスタートすることとなりました。
地域調査授業があった数ヶ月間においては、私が所属するグループでは、「ププレひまわり」の新事業案を受けて、いわばミニ起業のような実践的なプロジェクトに取り組みました。
議論を重ね、デザインを練り直し、最終的にオリジナリティな企画を完成させるに至りました。
最初のアイディアの段階からグループディスカッションをへて、最終プレゼンまでという、さまざまな試行錯誤も含む長いプロセスを通して、今まで学んできた知識をより深く理解することができただけでなく、主体的に考える力やチーム・リーダーシップ、さらにコミュニケーション力など能力も向上させることができたように感じています。
私にとって、地域調査でのさまざまな体験はすべてはじめてであり、また視野を広げる意味でも自分を鍛えることができる貴重なものでした。
最後に、改めて先生と「ププレひまわり」の担当の方々に、数ヶ月にわたるご指導に感謝申し上げます。
こうした新しい提案型の授業形式がさらに多くの学生に知られ、ますます充実したものになることを願っています。」
以上のように、連携授業地域調査は、さまざまな新規課題やビジネス提案を通して、学生が企業を知り学ぶ機会にとどまらず、わくわくする未来を知る旅へ学生をいざなう機会も提供しているといえましょう。
さらなる多くの学生の参加を待っています。