メディア・映像学科
梶川 瑛里(かじかわ えり)

| 職 名 | 講師 |
|---|---|
| 学 位 | 博士(学術) |
| 専門分野 | メディア研究、ポピュラーカルチャー研究 |
| 担当科目 | メディアデザイン論、CG表現論 |
| メッセージ | アイドルを研究しているというと、よく「一体何を?」と聞き返されます。しかし、研究対象として軽薄すぎるように見えるアイドルは、その「超」境界的な動きによって様々なものを結びつけています。わたしの仕事は、アイドルなどのポピュラーカルチャーが作り出す関係をひもときながら、社会の複雑さを描き出すことです。みなさんも自分の「好き」や「楽しい」という感情を手がかりに、自分とより広い世界のつながりを考えてみましょう。 |
社会の肖像としての有名人
有名人は、一見取るに足らないもののように感じられるかもしれません。事実、有名人はその人気のうつろいやすさから「読み捨てられる雑誌」に喩えられることも少なくないでしょう。しかし、そのうつろいやすさこそが、わたしたちに変化と向き合うきっかけを与えてくれます。なぜなら有名人は、常に変わりゆく複雑で曖昧な社会のポートレートであり、その中でわたしたちがどのように生きているかを映し出す鏡像でもあるからです。
有名人がつなぐ個人と社会
スターやセレブ、アイドル、インフルエンサーなど、今の世の中は有名人であふれています。当たり前の存在となった有名人ですが、彼らを作り出すメカニズムには、ややこしく不思議な個人と社会の関係が隠されています。それは有名人が「多くの人が抱く欲望を反映している」と同時に「他の人にはない特別な魅力を持っている」ことによって、社会的ステータスを獲得しているということです。いうならば、彼らは「色々な人が望む理想を代表する究極の個人」というわけです。
アイドルがつなぐ世界
有名人は、その不思議な魔力をもって、ある時は軽々と、ある時は力づくで、境界を越え世界に広がっていきます。その代表格がアイドルです。日本で生まれ東アジアで育まれた文化が、様々な国籍や人種の人々を魅了する。その様は、まさに有名人の魔力を表していると言えるでしょう。そしてそれは、アイドル個人の魅力だけに依存するわけではありません。その魅力を魅力と感じる社会的な下地が作られてきたからこそ、アイドルはグローバルな人気を手にすることができたのです。
社会の複雑さを描き出すこと
有名人をはじめとするポピュラーカルチャーには、お手頃だけれど表面的、楽しいけれど刹那的という印象がつきまといます。しかし一皮剥けば、様々な要素が網目状に交錯する複雑なネットワークのようなものが姿を現します。もちろんその中には、ポピュラーカルチャーを「好き」と思うわたしたちも含まれています。表面に過ぎるものを楽しむだけでなく、立ち止まって、裏側にある社会的関係性に思いを巡らせてみること。そのことが、変化の激しい現代の中で、自分の居場所を確かめつつ周りとの関係をつないでいく大切な力につながるとわたしは考えています。




