福山大学 研究ブランディング事業、1年目の成果!

福山大学 研究ブランディング事業、1年目の成果!

「瀬戸内海 しまなみ沿岸生態系に眠る多面的機能の解明と産業支援・教育」 これは、福山大学が独自の研究ブランディング戦略として「瀬戸内の里山・里海学」を進める中で、2017年度に文部科学省の助成事業に採択された研究プロジェクトです

5月19日(土)に外部の委員による研究成果と今後の研究計画の評価を行う外部評価委員会が開催されました。その際に本学の委員が発表した研究内容をここで簡単に報告します。

皆さん、こんにちは。海洋生物科学科の Kenji♪ です。

 

私立大学研究ブランディング事業

文部科学省の「私立大学ブランディング事業」とは、特色ある研究を基軸に、大学として大きく独自色を打ち出す私立大学の機能を強化するための助成事業です。中でも本学が採択された「タイプA」は、特に地域の発展・深化に寄与する取組を行う大学が対象であり、申請した188校の中から選定されたのはわずかに33校だけです。

本学の取組のタイトルは、「瀬戸内海 しまなみ沿岸生態系に眠る多面的機能の解明と産業支援・教育」というもの。福山大学が独自のブランディング戦略として進める研究プロジェクト「瀬戸内の里山・里海学」の中から【海】に関わるテーマに絞り込み、昨年度から2021年度までの5年間をかけて、【しまなみ沿岸海域の生態系の解明、保全、産業利用、教育】について、陸と海のつながりを含めて考え、行動していく壮大なプロジェクトです。

 

事業概要

瀬戸内海中央部・芸予諸島の周辺浅海域を舞台に、先端技術を用いて藻場・干潟および周辺生態系を解明し、沿岸生態系に眠る多面的機能を洗い出すことで、新産業創出に資する知見を得ると共に、備後圏域の産業の活性化と島の過疎化改善を目指します。

また、沿岸生態系の恩恵を未来永劫享受するための、人と自然の共生システムの構築を目指します。

本成果に基づき、福山大学を「沿岸生態系の研究と教育の拠点」とし、大学ブランド力を向上させる研究・教育プロジェクトです。

 

始動から1年が経ち、これまでの研究成果と今後の研究計画について、4つの研究グループのリーダーが発表しました。

 

 

外部評価に先立ち、外部評価委員の皆様に、新たに導入された分析機器のお披露目をしました。

まずは、DNA分析のスーパーマシーン「次世代シーケンサー」を、海洋生物科学科の阪本准教授が紹介しました。

この次世代シーケンサーを使えば、海水ひとすくい(環境DNA)で、その海域に生息している魚類の検出が可能になります。また、動物の糞のなかに含まれるDNAを調べれば、食した植物の種類を知ることもできます。

このプロジェクトでは、瀬戸内海の各所に見られる藻場(アマモ場・ガラモ場)の魚類相を網羅的に調べる計画を立てています。

また、しまなみ海道を形成している島々に生息しているアカネズミの糞中のDNAを分析し、それぞれの島でどのような動植物を食べているのかを知ることで、その島の森の生態系を調べる計画が進行中です。

 

つぎは飛行時間型質量分析装置です。高度な化学分析を行うために一役を担うこの装置・・・生物工学科の太田教授が紹介しました

これら分析装置は、福山大学グリーンサイエンス研究センターに設置されており、大学自慢の研究機器です。

 

スーパーマシーンのお披露目のあと、これまでの研究成果と今後の課題について、発表しました

まず初めに仲嶋学長補佐から研究プロジェクトの全体説明があり、ついでグループごとに進捗報告をしました。

 

生態系の解明グループ(説明担当:海洋生物科学科 渡辺准教授)

主に、つぎのことについて発表しました。

①広島県松永湾でナルトビエイにビデオカメラとデータロガーを装着し、エイが遊泳した海底環境(砂泥・藻場・アマモ場・岩礁)と摂餌がみられた海底の環境(摂餌環境)を記録。また、出現した魚種と撮影した海底環境および水深を算出し、各魚種の出現した環境の割合と水深を全体の撮影環境と比較。
②広島県松永湾で捕獲したナルトビエイに加速度・地磁気ロガーを装着し、記録データから、摂餌がみられた海底での行動を3タイプ(探索、摂餌、摂餌後)に分類し、それぞれの時間と距離を算出。これを分析して二枚貝類を摂餌する行動を推察。
③瀬戸内海島嶼に生息するアカネズミの食性を分析することで、本地域のアカネズミの生態学的な役割を探るとともに、島による隔離が食性に与える影響について調査。この調査より、瀬戸内海島嶼におけるアカネズミの食性の概要、島嶼生態系におけるアカネズミの生態的役割、島による隔離がアカネズミの食性に与えた影響に関して新たな知見を得た。

 

海中ロボット・藻場環境計測グループ(説明担当:機械システム工学科 内田教授・スマートシステム学科 仲嶋教授)

主に、つぎのことについて発表しました。

①藻場を調査する自律式海中ロボットとして、水中ロボットと水上ロボットの雛形機の製作に着手。ハードウェアは概ね完成。また、水中ロボット、水上ロボット、飛行ロボットの三者からなる藻場探査ロボットシステムの全体構想を立案し、プロトタイプによる研究に必要な機材・資材の選定と導入を完了。
②藻場の環境計測として、流速及び水温の分布の継続的測定をターゲットとした計測システムの基本設計を実施。多数カ所の分布計測のため低コストのステレオカメラ利用水流センサーを提案し、これを中心とした複合センサシステムとメンテナンスフリー長期使用のための藻類付着防止窓を設計。

 

産業教育支援グループ(説明担当:海洋生物科学科 有瀧教授)

主に、つぎのことについて発表しました。

【養殖業】
①シロギスについて、由来(天然魚、人工魚、年齢、サイズ)の異なる親魚群の産卵状況を把握するとともに、水温と日長がこれらにどのような影響を与えているか検討。また、養殖したシロギス約1,000尾を福山市内の飲食店に試供した。
②シロギス養殖システムでは、モデルベース開発で用いる「水槽環境システムの水温・照度シミュレーションモデル」の構築を試み、養殖水槽の水温や室内照度を簡易実測して水槽環境システムをモデル化し、水槽水温と水槽水上面照度の簡易予測を可能とした。
【有用物質の探索】
①有用物質の探索のため、0.5%アオサ平板培地を用い土壌からのアオサ分解菌の分離、培養し、3種の菌株について評価。
殺藻細菌を赤潮防除に活用する方法の検討。高分子ゲルに細菌を固定化する包括固定化法に着目し、殺藻細菌を包括固定化する担体の材料として食品分野で利用されているゲル化剤であるアルギン酸の利用について検討。
【教 育】
①福山市のリム・ふくやまで開催された「じばさんフェア2017」の本研究プロジェクトブースにおいて、内海生物資源研究所と会場をインターネット回線で中継した遠隔講座を実施。
②内海生物資源研究所水族館の3トン研究水槽にて、因島周辺海域を再現した藻場水槽の設置、展示研究の本格化に向けた作業を開始。

 

沿岸生態系の持続可能性グループ(説明担当:海洋生物科学科 阪本准教授)

主に、つぎのことについて発表しました。

①日本産トビハゼの、ミトコンドリアDNA非遺伝子領域(D-loop)に基づく遺伝的集団構造について、今年度と前年度以前の結果をまとめて解析。
②瀬戸内海におけるアミメハギの、ミトコンドリアDNA非遺伝子領域(D-loop)に基づく遺伝的集団構造について解析。
③広島県備後地域におけるカワムツの、ミトコンドリアDNA非遺伝子領域(D-loop)に基づく遺伝的集団構造を解析。
④福山・因島の藻場の構成種と経年変化について鞆町玉津島において調査を行い、過去に鞆町および因島で行った調査結果と比較して、各地の海藻相の違いや約10年間の変化について考察。
⑤流れ藻優占種アカモクの、起源推定に有効な分子マーカーの探索。
⑥地球観測衛星リモセンデータとして、JAXA地球観測研究センターから得たAQUA衛星のMODIS(The Moderate Imaging Resolution Spectrodiometer) による晴天時の瀬戸内海の画像解析。および、NASAジェット推進系研究所から得た最適内挿法解析による海水温データ解析。

 

 

瀬戸内海は沿岸域が顕著に多く、藻場や干潟が発達する生態系は比類ない地域の特色であり、「里海・里山」として我々に豊かな環境を与えてくれています。

これらの研究・教育に邁進できるのは、瀬戸内海という魅力満載の環境が、福山大学の直ぐそばにひろがっているからです。

今後の福山大学の研究・教育に、期待してください!!

 

学長から一言:私はこの委員会の委員長で、したがってこの委員会に出席し、すべての研究報告と討議を聴きました!!!面白い!!!ワクワク感満載!!!外部評価委員の先生方、貴重なご意見をありがとうございました!!!今回は2時間の会議でしたが、ちょっと時間不足。。。会議がすべてこんな感じだと、学長もハッピーですが。。。