【スマートシステム】卒業生 溝上浩司氏の活躍を紹介

【スマートシステム】卒業生 溝上浩司氏の活躍を紹介

新しく開発した小型超音波診断装置WiZ を手に、福山大学客員教授で工学部スマートシステム学科の組込みプログラミングの授業も担当してくださっている、MIZOUE PROJECT JAPAN (MIZOUE PROJECT JAPAN CORPORATION)代表取締役の溝上浩司氏が、3月26日(月)の午後、学長室を訪問をしてくださいました。その様子をスマートシステム学科の伍賀が報告します。

溝上氏は、現在41歳。福山大学工学部電子・電気工学科(現スマートシステム学科)を卒業し、同大学院工学研究科電子・電気工学専攻を修了した福山大学OBです。学生のころから光を用いた計測やセンシングの研究に従事し、大学院修了後、民間企業に就職した後、2003年9月、同じ研究室出身の米村紹芳氏、三島匡記氏に加えて同年代の仲間2名と一緒に28歳の若さで起業した、筋金入りのアントレプレナー(起業家)です。現在に至るまで、学生時代に従事した計測技術の研究を活かして、一貫して計測手法とそれを可能にする計測機器の研究開発に従事しており、次々に新機軸を世に出し、活躍されています。

今回は、昨年末に完成し、12月19日に報道発表されたばかりの、小型超音波診断装置WiZに松田学長が興味を持ったことがきっかけで、実物を手に来学してくださいました。学長室の訪問には、学生時代の研究室の指導教員の香川工学部長も同伴し、溝上氏の福山大学在学中の懐かしい思い出だけでなく、入学早々の武勇伝(?!)なども飛び出しながら、終始なごやかな懇談となりました。

松田学長,嘗ての指導教員の香川工学部長,溝上氏 学長室での懇談の様子です。学生時代の武勇伝に思わず(笑)です。

今回、溝上氏が自社で開発した小型超音波診断装置WiZは、高い分解能を持ちながら小型化ポータブル化に成功した超音波センシングの画像診断装置です。センシングデバイス部分もスマートフォンサイズ、診断画像は、表示器の画面に表示され、内部バッテリーで2時間程度の稼働時間を実現しています。この機械で、胸水腹水などの状態、膀胱の尿量計測、前立腺肥大の発見も可能とのことです。通常、このような小型の機器は、パワーが小さく診断画像も非常に見えにくいものとなってしまいがちですが、独自技術でノイズ低減、分解能向上とパワー調整などを実現できたとのことです。この装置の凄いところは、取得が極めて難しい医療機器認証を取得した事からも分かると思います。12月の製品発表から、国内外を問わず、とても大きな反響があるそうです。しかしながら、これらの技術力と発想力は、福山大学と福山大学大学院で学び、研究した内容が基礎となっているとのことで、この様なお話を伺うと、教員としてはとても嬉しくなります。

ただ、それ以上に、溝上氏は今回の懇談で非常に大切なことを言われていたのが印象的でした。それは、まず、ビジョンを明確に持つ事。何を創るかの前に、「なぜ創るか」を真摯に考え抜き、どのような形で世の中に貢献できるかを問い続けるということです。溝上氏は、10年前にデフタ・パートナーズの原 丈人会長に出会い、アフリカの栄養問題を解決する為のスピルリナ・プロジェクトや、貧困から抜け出し自立していく為のマイクロファイナンスなどの壮大な事業を直接教わり、会長の社会貢献事業、「技術を使って世界を変える」という志と問題解決能力に感銘を受けたそうです。そして、計測器事業を生業とする自分が取り組めるのは医療の問題だと考え、医療機器の開発というチャレンジを始めたとのことです。その時、経営者として心掛けたのが組織に到達可能なゴールを示す事だったそうです。そうでなければ、どんなに良い思いも、ただの夢や希望で終わってしまう。世の中に貢献でき、インパクトがあり、なおかつ、到達可能であるゴールとは何か?この思いを持ち続け、災害現場での医療活動、在宅介護や在宅看護の持つ課題を解決する事を目的に企画を詰めていったそうです。ハードウエア開発、ソフトウエア開発、パッケージ開発、そして、交渉等々、課題困難は山積だったはずです。それらを乗り越えていく上で、明確なビジョンと到達可能なゴールの設定が如何に大切かを感じました。

そして、もう一つが仲間の存在です。製品開発は一人ではできません。今回の製品の場合、医療機器認証の取得に至るまで、様々な分野、立場の多くの方のサポートがあった事に感謝しておられました。それに関しては、学生時代に香川教授から「間合い」の概念を背中で教えて貰ったのが良かったのかなあと述べられていたのが印象的でした。

小型超音波診断装置WiZ  完成した製品カタログをもとに説明

溝上氏の左手の中にあるのが、WiZのシステム一式(モニタ込み)、驚異的な小型サイズ

さて、溝上氏は、先に述べたビジョンの上で、次々と色々なインスピレーションが湧いているとのことです。実は、忙しい業務の合間を縫って、学術研究も進めて来られたとのことで、その成果を博士学位論文「マクロアクチュエータを用いたOn-Chip細胞マニュピレーション」としてまとめ、この3月に大阪大学から博士(工学)の学位を授与されました。この度、できたてほやほやの学位論文を松田学長に謹呈する一場面もありました。凄いバイタリティですね。既に次の製品の構想はあるそうです。どんな製品がこれから生まれてくるか楽しみです。

松田学長、学位論文を手に取り熟読

この度は、福山大学工学部のOBで、地元で起業し活躍する溝上氏の昨今の活躍ぶりをご紹介しました。工学部の電気系学科は福山大学開学と同時に誕生し、以来40年以上にわたって多くの人材を輩出し今日に至ります。理系離れやものづくりの危機が叫ばれている日本ですが、多くの立派な卒業生がおられることを誇りに、福山大学工学部の使命、人に、社会に役立つものづくりの力で地域や地場産業をもっともっと盛り立てていきたいです!

松田学長、溝上氏、香川工学部長で、学位論文と共に記念撮影しました

 

学長から一言:ガキ大将がそのまま大人になったような、バイタリティーと好奇心と機知と正義感そして少々のふてぶてしさとにあふれた好男子!!!このような卒業生に出会えて、学長は最高にハッピー!!!