【グリーンサイエンス研究センター】生成AIが拓く生命科学研究の最前線

【グリーンサイエンス研究センター】生成AIが拓く生命科学研究の最前線

第54回グリーンサイエンスセミナーを開催しました。講師は前橋工科大学教授の蒔田由布子先生です。ご専門はバイオインフォマティクスです。生命科学者は実験系のことをウェット、PCでのデータ解析系のことをドライと表現しますが、蒔田先生はドライの研究者です。生命科学の研究者の中には苦手意識のある方も多い分野だと思いますが、本講演では、生成AIの基本から、生命科学研究への応用まで、ご講演いただき、大変有益で興味深いお話を聞くことが出来ました。生命工学部健康栄養科学科の内海好規教授が世話人でした。蒔田先生とはRIKEN時代の同僚だったとのことです。講演の様子をグリーンサイエンス研究センターの佐藤が紹介します。

 

生成AIの現在地

ChatGPT、Genimi、Claudeなど生成AIを使わない日は無いのではないかと思うくらい、ここ数年の生成AIの発展はすさまじいものがあります。生命科学の分野においても、ゲノムやタンパク質の解析等、『配列』という文字列情報から、様々な情報を抽出するために、生成AIが活躍しています。本講演では、まず、世間一般および研究の世界における生成AIの使い方から、人工知能、機械学習、深層学習の違い、そして、「認識するAI」から「つくるAI」へ、そして「行動するAI」へと変化してきた生成AIの歴史について解説いただきました。蒔田先生は、生成AIにより、学生間の理解度の差が減るのではないかと予想されたそうですが、どうやらそうではなく、うまく使いこなすか否かで理解度の差はさらに拡大している状況にあるとのお話は大変印象的でした。私たちは生成AIに引っ張ってもらうのではなく、生成AIを思考の助けとして、私たち自身が先に進む必要があるのでしょう。生成AIに成長のチャンスや楽しみを奪われてはなりませんね。下の写真は講師の蒔田先生と世話人の内海教授です。

生成AIの基本のき

こういう学生目線のバイオインフォマティクスの講義を受けたことがありませんでしたので、とても有難い解説でした。神経細胞であるニューロンは様々な情報を受け取り、それがある閾値を越えると、次のニューロンに出力します。これを利用したのがニューラルネットワークです。単に出力するかしないかだけではなく、どれくらい出力するかなど考えられた様々なモデルが開発されており、それが複雑に絡み合ったものがニューラルネットワークとのことです。ものすごく膨大な計算が必要ですので、メモリの多い高性能のPCが必要です。とても私たちの頭の中にあるメモリでは対応できません。植物の葉が病気にかかっているかどうかを診断するのに、AIが活用されている例もご紹介いただきました。どういう状態の時に病気か病気でないかを判断し、その判断のために膨大なデータが使われています。データはあればあるほど、AIのパフォーマンスは上がるようです。

生成AIを使った抗菌ペプチドの探索

最後に、植物に被害をもたらす糸状菌を抑制するのに効果的な抗菌ペプチドを探索するご自身の研究についてご紹介いただきました。ペプチドとはアミノ酸がつながったものです。ご自身でデザインしたアミノ酸の複雑な文字列情報を、単純なデータに落とし込み、そのデータを使って、データベースと照らし合わせながら、抗菌活性を持つペプチドを探していくという方法をとられています。そして、絞り込んだ候補となる抗菌ペプチドを実際に合成して、実験により、抗菌活性を調べられています。ドライの視点が、実験によるウェットな検証につながっているわけです。講演では、これからの生命科学はAIと計算といったドライな部分と、実際に実験するといったウェットな部分の両方が重要であるというスライドで締めくくられました。テンポの良い、時に鋭くドライな指摘に、とても面白く拝聴し、もう少し聞きたいと思えるほど90分があっという間に過ぎました。蒔田先生には感謝申し上げます。

 

学長から一言:グリーンサイエンス研究センターが前橋工科大学の蒔田由布子教授を講師にお招きをして開催した第54回グリーンサイエンスセミナーでは、生成AIが拓く生命科学の新たな世界について熱く語られたようです。拝聴の機会を逸してしまいましたが、その興味深い講演内容のエッセンスをこのMagの報告で知ることができました。

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